しにせ
老舗には長い年月で培われてきた「格」が備わっていて、お店に入るだけで気がピッと引き締まる感じが好きです。
版画で教えてもらった彫刻刀を扱う老舗は、棟方志功が生前贔屓にしていた「清水刃物店」。
地味で小さな店構えながら「匠の店」という雰囲気がそこかしこに漂い、お店で応対してくれる方も、まさに職人。
このお店で彫刻刀を買うと、なんだか一人前になったような気分になりますが、実際に余計な力を必要としない刀を使うと、下手でも上手く削れます。
今度、染色の講師の方に教えてもらった染色の道具や材料を扱う老舗は「田中直染料店」。
本店は京都で、東京渋谷のビル一画のお店は支店ですが、そんなに広くないスペースに「染料関連のものなら全て揃えてます」って感じの品揃えでした。
サイトを見る限り、享保18年(1733)創業で、もう2世紀半以上の大老舗です。
今度、京都に行ったら、本店を訪ねてみるつもり。
版画の先生が、「初心者ほど、下手な者ほど、本当は良い道具が必要なんですよね」という話をしてくれましたが、良い道具を使うと、その言葉が本当だなと実感できます。
道具や材料自体の性能が作業効率を高めるのに加えて、「良いもの使ってるぞ」と思うことで、つくる気持ちを盛り上げてくれるのかもしれません。
ちなみに、何で「老舗=しにせ」なんだろ?と思って調べてみたら、「しにせ」は「仕似す=しにす」(まねて似せようと努める。父祖の業を引き継いで守るの意味)の名詞形なんだそうです。
字自体は「古いお店」だけど、あてた読み方で意味を追加したってことでしょうか。
伝統的な技法は、まず「まねて似せる」ことから学ぶべし。ふむ
。