「恐れながら申し上げます。」

その言葉を、今か今かと待っていた皇帝とその妻に、皇族魔法団の長(おさ)は頭(こうべ)を深く深く垂れ口を開いた。

「クオン皇子にかけられた呪詛(じゅそ)は非常に凶悪であり強力です。わたくし共の力ではとても……………。このままでは、皇子は衰弱し……………最悪の場合はお命…あっ、いえ!いえ!!決してそのようなことにはなりませんよう、策を……………!」

「そうです……………!!皇子は、この大陸をあの魔女から守るために危険に身を投じられた……………!皇子の咄嗟のお覚悟が無ければ、今やこの大陸は未曾有の災害に見舞われ、生きとし生けるものは全て苦しみの中にあったはず……………!」

「左様にございます!クオン様は勇敢にも私共の、大陸の全ての命をお守りくださった……………!なのに、それなのに……………!!」

魔法団からは、口々にクオンを誉め称える言葉があがる。




そんな中、皇后は顔面蒼白で今にも卒倒しそうだ。

皇帝は、両足をしっかりと地につけて、なんとか声を振り絞ってたずねた。

「そなたがた、皇族魔法団が揃っても解けぬ呪詛……………解く手立ての……………あてはあるのか?」

「…………………………………はい……あの、あの……………女が……………『黒の魔女』のザメルサが、いまわのきわに言い残した……………唯一の方法なら……………「だ、大魔法臣様っ、そ、それはっ」」
長の後ろに控えていた、魔法団の一人が慌てて口を挟んだ。
「ええい、構わぬ!!もう身の内には収めておけぬっ!」

「……………ん!?本当なのか!ザメルサが呪詛を解く方法を!?」
皇帝は思わず叫んだ。

「は、はい……………」

「そんなものがあるならば、なぜ早く言わぬ!?」

「それ、は、お、皇子が……………クオン様が、その場にいた者に箝口令を……………」

「箝口、令………?」

「は、はい……………。その方法が、酷いものでして……………。ザメルサも、『やれるものならやってみろ、さすればお前は立派な悪魔だ……私と同じ部類のな………』と」

「いったい……………どん、な方法なんだ?」
皇帝は恐る恐るたずねた。

「白い魔女の末裔…………………………モガミ・キョーコ様を……………その、(モゴモゴ)でして………………………」

「……………キョーコ?あの、先々月まで皇子の、クオンの勉強仲間だったキョーコか?確かにあの子は白い魔女の血筋…………。体内に流れる血は強力な魔力を宿しているはずだ。しかしあの子の亡くなった親の方針で、力の使い方は全く訓練していないのではなかったか………?」

「はい、ですので……………彼女に解かせるのではなく……………か、彼女に体を捧げさせよと…………………………」

「「……………………!?」」
皇帝と皇后は息をのんだ。

「ザメルサは、皇子が躊躇するとわかっていて、恐らくはそのような方法を…………………………しかもキョーコ様は、黒の魔女を陵駕する魔力の持ち主の、白い魔女の末裔とはいえ、魔力の扱いは赤子同様……………なので、体を……………捧げる……………という、その行為は、一度や二度では、その、」

「クオンにかけられた呪詛は解けぬ……………か?」

「は、はい……………。魔女としては最高位にあるザメルサでしたので…………魔力はあまりに強大…。キョーコ様のお体で、大陸を破壊するほどの呪詛を一身に受けたクオン皇子の中に燻る火種を全て浄化するには、……………恐らく、年単位……………で、その……………幾度も幾度も繰り返し……………」

大魔法臣は、大変大変言いづらそうに自身の見立てを発言した。

「まっ、待って、待って!あの娘……キョーコ………は、婚約者と……………恋人のヤシロと結婚するために、城を出たのよ?来月には結婚式を………。……わたくし、あの子と一緒にマリアベールを編んだの……………。新居に遊びに行くわねって…………………………!」
ずっと黙っていた皇后が声を発した。
「その、結婚を控えているキョーコに…………体を………捧げろですって……!?」
皇后の声は震えている。

「キョーコだけではない。婚約者のヤシロも………………我が国の重要な秘書官だ……………。将来はクオンを支えてこの国を守ってもらおうと……………」
皇帝も力無く呟いた。


「は、はあ…………………………ですから皇子は、そのような暴挙には及びたくないと……………。キョーコ様を……………花嫁支度をして幸せの絶頂にいるであろうキョーコ様を呼び寄せて、そのような…………………………」

「だから、クオンは箝口令を……………」
皇帝は呆然と言葉をこぼした。そして、隣の部屋の寝台の上で、全身の痛みと高熱に呻き声をあげ苦しむ自身の息子であるクオンを悲しい目線でドア越しに見据えた。


皇帝の脳裏には、皇子が10歳、キョーコが6歳、その二人が勉強仲間として出会い、成長したこの13年間の出来ごとが走馬灯のように駆け抜けた。

そして皇帝は知っていた。クオンが、キョーコに秘かに幼馴染以上の感情を……………いや、そんな生易しいものではなく、狂おしいほどの恋慕を抱きながらもそれをひた隠しにしていることも。

そしてその感情を、呪詛をかける際にクオンの心に入り込んだザメルサに気取られてしまったこと。そのせいで、そんな悲惨な呪詛解除の方法をザメルサは選択したということも、皇帝には容易に想像ができた。

ぐっと目をつぶる。

(私は、皇帝だ。私は、国の長。……………私は……………何をすべきだ?)


次の瞬間目を開けた皇帝は心を無にし、「キョーコを城に呼び戻せ……………即だ!!」と命令を口にした。

「ぎょ、御意……………!!!」
部屋の下座に控えていた側近は、素早い動きで場を辞していく。








「わあぁぁぁぁぁぁぁ」
その場に皇后は泣き崩れた。

娘のように可愛がっていたキョーコの不幸が、皇后には耐えがたかった。

愛する男性に嫁ぐその日を心待ちにしているキョーコ。皇后は、キョーコの恐怖と絶望を想像し、全身を怒りと悪寒が駆け抜けるのを感じた。

ザメルサの強大な魔力と対峙するために、『水の民』であるクオンは、禁忌であったはずのその能力を使ってしまった。その力を使いさえしなければ、こんな恐ろしい呪詛をザメルサに浴びせられることもなかったというのに。『水の力』をクオンに受け継がせてしまった、自身の血筋を怨み、皇后はその場で「ごめんなさいクオン、ごめんなさいキョーコ!!」と、咽び泣いた。







ってな感じの話を書きたいなあ…と思ってるんですよ。

でも、書かないですけどね……………。

ぽてとの大好物!!『両片想い』と『すれ違い』をつきつめてぇ〰( ・∇・)

『アメブロ』っていうブログなので、ブログらしく、単純に呟いてみました。






っていうのは、あれで。ただ、気分が暗くなって、気晴らし……………でした。なぜかと言うと、『空言の婚姻35』、ほぼ出来上がっていたのに消してしまったんですよ……………………………………………………………………………………………………………………………………気持ち的には死にそう…………………………

ブログらしく、呟いてみました。