「慢性炎症」は大腸癌をはじめ、多くの癌の重要な原因です(最新のNature)

 

また「動脈硬化の本態は血管の炎症であり、抗炎症療法が有効である」というのが「最新の動脈硬化の理論」です(IL-1阻害剤コルヒチン)。「白血球が細菌を殺す武器(NETosis)が脳卒中の原因」という最新のNatureの報告があります。「強すぎる免疫の武器」が災いしている訳です

 

更に最近は「脳の慢性炎症(グリア細胞の亢進)という理論も登場し認知症やうつ病との関係も議論されています

 

結局、現代人の病気(動脈硬化、癌、認知症)の根底には慢性炎症(Metaflammation)=「強すぎる免疫」があるといっても過言ではありません。

 

 

免疫が強いほど「生殖競争」に勝ち、子孫を残せます。こうして人類は「免疫強化」の方向に進化したのですが、生殖年齢を過ぎると「強すぎる免疫」が災いをする訳です

 

 

 

サプリの中には「免疫を強化し炎症を抑える」とうたっている商品があります。しかし・・

 

それは極めて困難な難問(理想論)です。

 

科学者たちは「炎症だけを抑えて免疫を抑えない薬剤」あるいは「良い炎症(急性炎症)を抑えないで悪い炎症(慢性炎症)だけを抑える薬剤」を探し求めて熾烈な競争をしています。これは現在、最も重要で困難な課題であり勝者はノーベル賞を受賞するでしょう。

 

動脈硬化を抗炎症療薬(IL-1阻害剤)で治療するCANTOS試験も、そのような趣旨の研究でしたが、残念ながら「免疫不全で致命的な感染症を起こす」ことが分かりました。

 

前の記事で紹介した「ILー11阻害剤」は、現在「副作用が無い抗炎症剤、最も理想的な若返り薬」と言われています。しかし、これも実験室内でのマウスでの話であり「自然界でのマウス」あるいは人へ投与すれば何らかの「免疫不全」の副作用が見られるはずです(でなければ我々がILー11を保持している理由がないです)

 

炎症は「自然免疫」とも呼ばれ「適応免疫」に必要不可欠のものであり、炎症と免疫を分離するのは困難と言うよりも「不可能に近い」話なのです。