ある日のこと、和平さんがニコニコしながら経済誌の記事を切り抜いていた。
「和平さん、ニコニコされてどうされたんですか?」
「明日来る社長がようけ株価を下げてねぇ。この記事には会社の業績をV字回復させた
社長の話が載ってるよねぇ。明日来る社長にこれ見せたら元気になるかと思ってなぁ」
「え? 和平さん、その会社の大株主ですよね? 株価をかなり下げたということは、
相当な損をされたってことですよね? なんでニコニコできるんですか?」
「まぁ天が儲け過ぎだと言っとるだけがね。わしの仕事は社長を励ますのが仕事がね。だ
からなぁ、明日はようけ励ましてみようと思ってなぁ」
「そ、そーっすか」
「わしが励ましても元気のない顔しとったら株を手放すけど、
元気な顔しとったら株をもっとるがね。
まぁ見ててな。わははははー」
翌朝、元気がない顔をした社長さんがこられた。
なんでも責任を感じて新社長に交代するとのことで、新社長も連れてこられた。
すると和平さんは、新旧社長に向かってこんな話を始めた。
「ええかい、あんたの仕事は尊いねぇ。先物のおかげで農家は安心して生産できるよねぇ。
先物がなかったら安心できんねぇ。わしらのような工場生産者も、先物がなかったら安心
して計画生産できんがね。
金のようけ余ってる旦那衆は種を蒔いたときに出資して、
実がなったときに回収できるからようけ利ザヤが稼げるねぇ」
この会社は、先物を扱う会社らしい。正直、僕は先物に悪いイメージをもっていた。
先物の営業マンに言われたとおりに投資して損を出した友人が何人かいたからだ。
しかし、先物本来の目的は何だろう? 和平さんの言っていることが、
本来の目的なのである。
それは人を幸せにする仕事なのだ。
和平さんは続けて言った。
「ええかい、あんたほど日本の役に立ってる社長はほかにおるかね?
あんたが輝けば日本は輝くがねぇぇぇぇ!」
『笑ゥせぇるすまん』の喪黒福造が、ドーーンというようなしぐさと迫力で、
和平さんは社長さんを指さしながら熱く語ったのだ。
社長たちはカミナリに打たれたような感じで、しびれあがっていた。
そして、新社長はすごくやる気になって帰っていったのだった。
僕も一緒にカミナリに打たれたような感覚になりつつも、
このときの和平さんの思考回路をめちゃめちゃ知りたくなった。
だって、日本一の個人投資家が大株主として、上場企業の社長にアドバイスを
するんだぜ。
言ってみれば、王様が王様にする究極のコーチングみたいなもんだ。
そんな場面にはふつう立ち会えない。
僕もよく社長さんたちの相談に乗ることが多いが、これは絶対に役立つはずだ。
何をもって励ましているのか? むちゃくちゃ興味がわいたのだ。
「和平さんは、社長さんたちを励ますとき、何を大切にして励ましているのですか?」
「仕事というのは本来尊いものがね。世のため人のためになってるよね。
赤字になるというのは、何のためにという動機を忘れてしまうからだよねぇ。
その会社が何のために存在しているのか?
その動機を忘れてしまうから、赤字になるねぇ。
だからわしは、何のために存在しているのか、
その動機を思い出させるのが仕事だがね。
何のためにを思い出したら、たちまち黒字だがね。わはははは」
シビレタ。
その通りだ。会社は、何のために存在しているか、その動機を忘れないこと。
それが一番大切なことなんだ。
「当たり前」の投資方法
僕がシビレていたら、
「さ〜、晃ちゃん、お昼にでも行きますか!」
和平さんはいつもの笑顔で喫茶店に入り、トーストを一緒にほおばった。
普通の喫茶店に入り、普通のトーストを食べて、普通の人に紛れていて、ほかの人が
見たら気のいいお爺ちゃんにしか見えないんだろうけど、目の前にいる和平さんは、
たしかにシビレルようなことを言った普通じゃない人なんだ。
僕は、このあと一日中、和平さんの投資哲学について、
頭をぐるぐるしながら考えることになったのだが、
目の前にいる師匠を、やっぱり日本一だなぁとほれぼれしながら見ていた。
和平さんは呑気においしそうに、トーストをほおばっていた。
その夜、僕は和平さんのマンションで、青汁を飲みながら、
今日シビレタ出来事を夢中になって話したのだ。
「和平さん、和平さんの投資方法はつくづく当たり前だと感じました。
本来株式というのは、金のある旦那衆が、志のある社長に投資して、お金と助言を渡すわけですよね。
そして、社長はお礼の気持ちを込めて配当金を渡すんですよね。
これが本来の株式の成り立ちで、何て言うかめちゃめちゃ愛があって……。
だから、和平さんの投資方法は当たり前だとやっと気がついたんです。
今まで投資というのは、安いときに買って高いときに売り抜けて、その後暴落したら、
うわっ超ラッキー! といわばババ抜きのように思ってたんですけど、今日の和平さん
を見ていて気がついたんです」
僕は心底感心して、和平さんに言った。
僕の感嘆ぶりとは対照的に、相変わらずの笑顔で和平さんは言った。
「そうがね〜。当たる前と書いて当たり前だがね。
当たる前を外したら、当たらんねぇ。わははははは」
一緒に大笑いをした。
大笑いしながら、このとき飲んだ苦い青汁は、ワインよりおいしく感じた。
著書【日本一の大投資家から教わった人生でもっとも大切なこと】より抜粋
著書・日本一の大投資家から教わった人生でもっとも大切なこと
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