しかし、この2つの感情は、母体の中にいた完全・十全で満ち足りた平和な世界には無かったものだと思います。
誕生の瞬間に訳の分からない強烈な恐怖に襲われ、元の完全な世界である胎内へ 戻ることを望んだとも思われますがそれは適わず、外の世界の擬似的な条件で小康を得たのでしょう。
この恐怖は、潜在意識の奥深くに記憶され、その後の人生はこの根本的な恐怖を打ち消す為の欲望を持って、思考し行動します。恐怖を打ち消そうとする欲望の本質は、胎内に居たあの完全に充足した「たゞあること」 に満足している潜在的無意識の記憶にあると思います。
しかし、この事は、成長とともに様々な世界との出会いの中で、それに対応することが関心の中心になり忘れられていきます。
生まれて生き続けようとするのはあらゆる生命の本質ですが、命が断たれる恐怖と、命を維持しようとする欲望は本来一つのものです。
生きることの不安・恐怖があるからそれをカバーしようとする欲望が生まれ、欲望するほどにその欲望が満たされないことの不安・恐怖を思い、その恐怖感はさらに次の欲望をつくり出します。
欲望は、生命体維持のために必要な基本的な自己防衛をはるかに超えて複雑化します。その高度な(?)恐怖と欲望は、「私(自我的自己)」という個体意識をいっそう強固なものにしてしまったのです。
③に続く