interlude ## 苗穂神社 | 不思議なできごと

不思議なできごと

できるだけオリジナルな、或いはそれに近い怪異譚を公開してゆきたいです。

 今回はあんまり怖い話ではないので、がっかりしないでくださいね。
不思議なできごと 平成元年冬の話ですから、ちょうど25年前のお話です。
 その日は18時からこの神社近くにお住まいの地元の有力者の人たちを集めた会合があり、本殿横の社務所の一室を会議室として借り受けていたんですね。自分たちは3人で前もって90分前には現地入りして会場設定をするんですが、この時は冬でしかも朝から雪がしんしんと降る一日だったので、前の通から社務所まで除雪もしておかなくちゃならない。その除雪役を自分が買って出たんですが、冬の17時過ぎ頃ですから、もう当たりは真っ暗。人通りも少ない境内を一人で除雪していた訳です。除雪といっても、完璧なものではありません。小さな神社といっても境内は一人でするのは十二分に広いですからね。一本道をつくるんですね。それでも結構な降りですから、割と大変なんですね。軽くふうふう言いながら、やっと入り口近くまでに近付いてきた時、傍らの木が「バサバサッ」と揺れたんですね。結構大きな揺れで、枝に積もっていた雪がばさばさと落ちてきた。
不思議なできごと こちらはもちろんどきっとするわけですが、その時は枝が積雪に耐えられなかったのだろうと思って、また除雪を続けるわけですが、今度はちょっとそっちの木の方を気にしながら除雪する訳です。ずっとそっちを伺いながら、さくさく除雪をしている。と、またバサバサバサッと来た。今度は身構えてましたからね、しっかりそっちを見ることが出来たわけです。すると、さっきの木が1本だけばさばさ左右に揺れている訳です。他の木は動いても居ない。風はほとんど無い日でしたから、風ではない。上に何か動物が居るのかと思って見ても、何も居るようには見えない。でも、その木だけはゆさゆさ揺れているわけです。しかも今度は長い。見ているうちに、気味が悪くなってきた。だってそうでしょう。何の原因も考えられないのに、一本の木だけが揺れている。自分は声は上げなかったと思いますが、雪かきも投げ出して仲間の居る社務所へ駆け戻った訳です。
 そして、仲間を連れて木のところへ戻ってきた。今は3人居ますからね、多少気が強くなってきた。そこで揺れた木の根元近くまで寄って確認しました。もちろん雪が多い時期でしたから、本当の木の根元まではいけません。長靴履いていませんでしたから。それでも、1メートルくらいまでは近づける。そこからいろいろ観察して見ましたが、付近に何かの足跡なんかは一切ない。雪が上から落ちたあとがあるだけ。人や動物のいたずらとは考えられない。だから、何か大きい鳥が上に居たんだ、ということになった。というか、そういうことにしたんですね。この時はこれだけで終わったんです。

不思議なできごと そして、それから数週間後Mさんに会った。あの、除霊浄霊ができる本格派の方です。このときMさん、こんなこと訊いてきました。
「最近、神社とか行かなかった?」
 最初はぴんと来ませんでした。今は結構神社仏閣巡りは好きですが、当時はぜんぜんだったからです。でも、すぐ苗穂神社へ仕事で行ったことを思い出し、この件のことも話たんですね。すると、
「その木のことと関係あるかは知らないけれど、いつもにこにこした恰幅のいい紳士があなたの後ろについて来ている。その人はその神社と関係のある人のようだ。いい霊だから、このままずっといてもらいなさい。」
 と言うんですね。自分にはまったく見えないからほぉ~とか言うしかないんですが、まあ、そういう人がいるんだな。となんだか嬉しくなりました。
 それから暫くは自分の後ろについていてくれていたみたいなんですが、3ヶ月くらい経った頃、もう居ないことをMさんに教えられました。その人がついていたから何か良いことがあったとかは全くなかったんですが、まあ、何もないということがよいことなのかも知れませんね。とにかく、木のあの揺れはなんだったのか、結局わからずじまいですが、こんなことがありました。
 今日久しぶりに苗穂神社へ寄ったので、思い出した話です。