自作ナイフ(ラペルダガー)の狙いとか雑感とか | 北欧ナイフでお気軽アウトドア

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というわけで、今日は自作ナイフのラペルダガーについて、あれこれ語ってみようかなって思ってます。

制作過程を知りたい人は、制作日誌のほうをご覧くださればと。

 

 

で、私はここ数年「北欧のナイフ」にかなり傾倒していて、あれこれ集めてみたり、使ってみたり、あるいはダメにしてみたり色々やったんですけれども、自作ナイフを作る、という段になって、そこまでハマっていた北欧のナイフからいったん離れることにしたんです。

 

 

いや、北欧ナイフに飽きたとか、当分北欧ナイフには触らないとかそういうことではなくて。

実際的な問題なんかを加味して、「自作の第一弾は北欧スタイルのナイフではなく、ラペルダガーを作りたい」という気持ちになった、ということです。

 

 

では、なぜ、ラペルダガーにしたのか?

答えはいくつもあるんですが、思いつくままに書いてみましょう。

 

 

1つ目は「スケルトンナイフなら、制作においていくつかの工程を省き、完成までのハードルが低いと感じたから」です。

ラペルダガーもおそらくスケルトンナイフという括りに入れることが可能なナイフでしょう。

 

 

スケルトンナイフってご存知の通り、「ハンドル」をつけなくていい……というか、鋼材そのものがハンドルになるワンピースタイプのナイフです。当然、ハンドル材を買う必要がない。さらにハンドルをタングに合わせて削る必要も、シェイプを整える必要もないわけです。

 

 

すると、制作において「ハンドル」の工程をさっくりと省くことが出来るわけで、これは「最初のハードルを下げたい」と思っている私には、好都合でした。ツイッターのTLで、スケルトンナイフが流行っているし、積極的に面白いスケルトンタイプのナイフを作っているメーカーさんも増えてきた、というのにも刺激されているところでもあります。

 

 

それに、スケルトンナイフであれば、シース(鞘)はカイデックスでもOKでしょう。

革を買い、革を縫いシースを仕上げるという工程もカイデックスのシースにすると決め込んでしまえば、ずいぶん気が楽になります。

 

 

カイデックスですから、プラスティックの板(というかカイデックスのシート)をゲットしてきて、温めた上でナイフを挟み込んでやればいいわけで、これでレザーシース作りの難所を避けることが出来るはずです。

 

 

すると、あとは「スケルトンでカッコのつくナイフ」を考えねばいけません。

恐らく、ハンドル材を付けるナイフとスケルトンナイフでは少し考え方が違う部分もあるでしょう。ハンドルを付ける前提でデザインしたナイフが、必ずしもそのままスケルトンに出来るわけではない、ということです。

 

 

かといって、いきなりプロフェッショナルなメーカーさんが作っているようなナイフを作ろうとすると、それはそれでハードルが上がってしまいます。シンプルなデザインを潜在的に持っているもの。さらにある程度自分でデザイン的なアレンジが出来ること。

 

 

こうした要件を考えた時に頭に浮かんだのは、昔見た記憶のある「ラペルダガー」だったのです。

まず、ラペルダガーをベースにするのであれば、全体のサイズが小さいので、制作も楽だろうという思いがありました。まぁ、これは誤りだったと後に気が付くことになるわけですが。

 

 

で、ネットでラペルダガーを調べてみると、海外のウェブサイトに専門的にラペルダガー(やサムダガー)を扱ったものがあることに気づきました。その中で見たラペルダガーは、自分が昔、どこかで目にしたラペルダガーと同一のもので、色々な記憶が蘇ってきました。

だけれども、そのデザインをそのままパクッてしまうのはあまり面白くない。

 

 

というわけで、スケッチブックにひたすらラペルダガーのデザインを描いていくことにしたのです。

私が当初考えていた第一作目の自作ナイフは「シープフット」というブレードの形状だったので、それを取り込んでみたり、ハンドルの長さとブレードの長さのバランスを確認してみたり、身幅はどのくらいが適当か、何パターンか書いてみてシックリくるものを選んだり……。

 

 

で、完成形のそのデザインが出てきたのでした。

デザインっていっちゃうと大仰ですけれども、結局、凝った部分を削ぎ落していく作業がほとんどでした。シンプルに徹していく中で、西暦2018年にふさわしい(?)エレガントさを持ったものになっている……といいなぁ。

 

 

デザイン上のポイントとしては、「金属の塊」のような少しゴロッとした雰囲気、ソリッドなカッコよさも出したいという狙いもありました。

それが結果として4mm厚の鋼材を選択する決め手となったわけです。

 

 

最後の最後まで悩んだのは、「本当にダガーにするか」でした。

ちょっと考えてみてください。いわゆる普通のナイフであれば、ブレードの片面にしか刃がついていないわけですから、裏表「2面」削ると、刃が削り出せることになります。

 

 

一方、ブレードの両面に刃がついたダガーであれば、表裏を上下2個、つまり4面削らないといけないのです。

これは合理性を追求しようとしてきた私のこれまでの作業工程と相反する部分があり、結構悩みました。

 

 

実際、ブレードの研削に入ってからも「片側はフォールスエッジにしちゃおうかなぁ」とか、「少し削りを変えて、普通のナイフっぽくしちゃおうかな」みたいな誘惑にかられましたね。

 

 

けど、短いものであるからこそ、適法の範囲でダガーも作れます。そのつもりで全長やブレード長を割り出しているのですから、その工程も無駄になってしまいますよね。さらに、4面の削りという結構難しい(し面倒な)作業を、イの一番に経験しておけば、その後のナイフメイキングが楽になるんじゃないかな、という「修行」的な側面も、初志貫徹のための力になってくれました。

 

 

また、「ダガー」という形状が、実際ナイフを使う場において、どういうメリットがあるのか、どういう作業がやりやすくどういう作業がやりにくいのか、を他の受け売りではなく、自分で体験したいという気持ちもありました。

モノの本には「戦闘用の刃物の形状で、アウトドアユースには不要」なんて言いきっているものもあります。

けど、そういう本の中には「ナイフは、想像力でいくらでも応用が利く道具の王様なんだ」みたいな記述があったりもして、そこに矛盾を感じたりもしていました。

 

 

ですので、想像力を発揮して上手い使い道を見つけたり、使い方を工夫すれば、戦闘用としてだけではない、ユーティリティナイフとしてのダガーという新しい視点が拓けてくるんじゃないかな、と今も思っているのです。

この「ユーティリティナイフとしてのダガー」という視点や考え方は、もう四半世紀前から私が持っていたものです。

 

 

というのも、その昔、日本にファンタジー(剣と魔法の世界みたいなやつですね)というものが入ってきて(もちろん、海外からね)、少しづつそれが根付いてきた辺りで、冒険者が持っている道具には、必ず「ダガー」が添えられていたのです。

当時のイラスト付きの解説書(ファンタジーそのものであったり、RPG関係の解説書)には、必ずしも「両刃の短剣」でなく、「ナイフ」としての絵も描いてあって、まだその辺りの線引きが不明瞭だった時期なわけですが、必ず書かれていたことは「ダガーは冒険者にとっての必須の道具。野外だけでなく屋内でも使用するし、狩りや護身用などとしても使え、必ず誰もが持っているもの」というような文言でした。

そう、当時のファンタジーでは魔法使いでさえ、ダガーを身に帯びていたのです。

 

 

ダガーは、私の製作したそれでは少々やりにくいですが、スコップ代わりにしたりなんてことも出来ますよね。

逆にラペルダガー的なサイズであれば、実際やる/やらないは別にしても、矢じりとして使うようなことだって出来ます(制作途中、何度「なんか貝塚とかに落ちてそうだね」と言われたことか!)。

 

 

そうしたダガーの持つユーティリティ性を実際に自分で確かめるために、ダガータイプを選択したのです。

あと、実際的な使用とは別の部分で、ダガーという形状の美しさを体験したいという気持ちもあったことは否めません。

 

 

シルバーアクセサリーのチャームでも「ダガー」っていうのがありますよね。

こんなシンプルなデザインではありませんが、ダガーが美しさを秘めているという一つの根拠にはなりえるかなと思います。

ミリタリー的な部分に目を向けても、ワッペンにダガーがデザインされたものとかもありますし、ね。

 

 

まだ完成してから日が経っていないので、何ともいえない部分はありますが、ラペルダガーというサイズ感の面白さ、ダガータイプのエッジの面白さ・美しさは楽しめています。

 

 

海外でも、自作のラペルダガーを作る人がいて、私が動画でサラッとみた限りでは片刃(っていうと誤解を招くか。片面はフラットということです)のラペルダガーを作る人がちょっと多かったような。

 

 

両面削ったダガーは、とにもかくにも一本作ってみたのですから、今度は片面フラットのラペルダガーとかね、色々なバリアントを作ってみたいな、という気になっています。

基本デザインがとてもシンプルですから、逆に応用が利く余地がたくさんあるんですよ。

 

 

「こういう要素も盛り込みたい」とか、「ハンドルにももう少し手を入れられるかも」とか、「逆にラペルナイフとして、ダガーじゃなくしたらどうだろう」とか、アイデアは尽きません。

 

 

余談ですが(余談かな? どうかな……?)、北欧のナイフの代表格プーッコなんですが、その語源は「突き刺す」だってご存知でしたでしょうか? プーッコもダガーが変化を遂げ、現行の形に落ち着いたという説もあるそうで、一度ダガーに触れてみることで、そうした他のナイフへの視野も広がったらいいな、なんて思ってます。

 

 

さて、とりとめもなく、長々と書いてしまいましたが、いかがでしたでしょうか?

十分……とは言えないんですが、思いつくまま、思い出せるままに、今回のナイフメイキングの狙いを書いてみました。

 

 

一方、第二弾の製作は、もうちょっと大きなサイズのナイフを考えています。

色々なものが作れるようになると、楽しさの幅が広がりますから。

けど、ラペルダガー(ラペルナイフ)も、どんどこ作っていけたらな、とも。別のナイフを作って、またラペルダガーにフィードバックする、そんなサイクルを頭に描いています。

 

 

きっと、そのうち北欧様式のナイフを作る時だってありましょう。

「こんなのを作ったよ!」と、もうちょっとマシになったナイフを見せられる日を、私自身が一番楽しみにしています。

 

 

というわけで、今日はこんなところで。

それでは、また。