火野正平(74歳)の「こころ旅」は継続されるそうだが、タモリ(78歳)の「ブラタモリ」は来年度からは特番レベルになってしまうそうだ。

 寂しいね。

 年なのはわかるけど、「ブラタモリ」のような教養番組はないからね。

 いろいろな意味で、日本の成り立ちを学ぶことができたからね。

 代わりに、「新プロジェクトX」なるものが登場するらしいが、いまのNHKに自分たち世代以上の経験者がいるわけでもないし、戦後復興や高度成長を本当にとらえることができるのか、とても心配だ。

 以前のプロジェクトXは偉人的個人やチームをターゲットにした、自分たち世代対象の番組に見えたが、新プロジェクトでは当然対象は別世代なのだから、それをやっては戦後復興や高度成長の本質を間違えて捉えられる可能性があり、やるべきではないだろう。

 戦後復興を、高度成長を盛り上げけん引したのは、労働者だったという事実が一番大切であり、その労働者たちが何に取り組み何をやって来たかということを、真面に真面目に明らかにしなければならないのだ。

 戦後復興はどちらかというと力仕事で朝鮮戦争の影響が極めて大きかったが、高度成長をけん引した日本人が持つ、特有の学ぶ力と極める力と何でも軽薄短小にしてしまう力、それに十分な光が当てられるのだろうか。

 欧米からは猿真似といわれたそうだが、欧米発の経営管理技術にしたって、学び極め生産管理技術を世界一に高めてしまったし、ウォークマンに代表される軽薄短小技術も同様に世界を席巻したのだ。

 その現場では、まだまだ多かった中卒、高卒、まだまだ少なかった大卒が混じり合って、IE(作業研究)、OR(運用研究)、QC(品質管理、TQC・TQM・SQC・シックスシグマなどへと発展)、VE(価値工学)、DOE(実験計画法)などの欧米発管理技術を学び極め自分たちのものとし、改善(改善提案)、ZD運動、3S・5S運動、KYT(危険予知訓練)、KJ法(発想法)にも取り組み、多くの活動発表の場が設けられ、日本人独特のチームワークのもと、世界一の高みへと昇ったのだ。

 その結果が高度経済成長。

 自分たち団塊世代は高度成長の後期を担ったと思っているが、「新プロジェクトX 」に取り組むNHKの関係者が、そこ迄掘り進めるのだろうか。

 日本の近代工業化に大きな貢献をした、ヘンリー・ダイアーにも光が当てられるのだろうか。

 それができない、そこまで踏み込めない二番煎じの「新プロジェクトX」であるなら、これからの日本のためにはならないのだから、決してやるべきではないだろう。

 

*自分たちが中卒のおばちゃんたちも一緒になって取り組み発表などもしたQC的問題解決は、日本の目を見張る経済成長を研究した諸外国の義務教育レベルで取り入れられているが、日本の教育関係者はそれをすることはなく、企業の技術レベルと学校教育レベルの乖離を年々拡大させた日本は、国際競争力を失い、失われた10年、20年、30年を生み出してしまった。そして今最も深刻なのは、日本人から学ぶ力と極める力と何でも軽薄短小にしてしまう力が消え去ろうとしていることだ。(NHKの今の人々が、このようなものにたどり着けるのだろうか)

*高度成長期の話は何も大企業の話ではなく、中小企業でも管理技術を駆使したQCD(Quality(品質)、Cost(費用)、Delivery(納期・工期))で優れた企業は沢山あった。

*本音をいえば、小難しい「新プロジェクトX」をやるよりも、「ブラタモリ」を月1でも月2でいいから続けてほしい。タモリが臨終の床につくまで。(いい過ぎですか?)