NHKの日曜美術館で北海道の画家、神田日勝を知った。絶筆となった馬の絵や、新聞紙を貼った部屋にすわる男の作品がとても印象的だったので、北海道ツーリングの際に美術館をたずねたいと思っていた。

 

 

2019年9月に神田日勝記念美術館をたずねた。美術館は帯広の北西に位置する鹿追町にある。道の駅に併設されていて、着いてみると何度も前を通過している場所だった。

 

 

絶筆となった馬の描きかけの絵がシンボル・マークになっている。

 

 

入場料金は520円だがJAFの割引で460円となった。

 

 

神田日勝は東京都練馬区の生まれだが、子供のときに戦災を避けるために家族で鹿追に入植した。芸大にすすんだ兄にかわって中卒で就農し、絵をかいた。初期の絵は死馬や板場の風景で、茶色や黒をつかったモノトーンの作品が目立つ。

 

 

色彩の豊富な抽象画や風景画も残っているが、暗い作風の作品が魅力的だと思う。

 

 

新聞紙を貼った部屋にすわる男。足下にはガラクタがある。物質文明や消費社会を批判したのだろうか。腕をかかえているのが作者に見えてしまう。

 

日勝は農業の機械化がすすんでも、かたくなにコンクリートや農機を使わずに、農耕馬で耕作を続けたそうだ。その態度は絵にもあらわれていて、パレットや筆などの道具をもたず、ベニヤ板にペインティング・ナイフでかいたそうだ。それが日勝のスタイルだったのか、それとも貧しさ故なのか。自分の型をくずさない人のようだから、両方なのだろうと思う。無器用なのだろうとも感じる。

 

絵の馬はすんだ目をしている。そしてしずかにたっている。新聞紙を貼った部屋の男もただすわっている。運命や自然に立ちむかったり、抗議したりする気配はない。かといって諦めているのでもない。ただしずかにしている。それが見ている者にいろいろなことを想像させて、余韻をのこす。忘れなくさせる。

 

 

日勝は家族を得て、農家を経営し、農閑期に絵をかいたそうだ。絵はかかずにはおられなかったのだろう。えがかずにはいられない人だったのではなかろうか。

 

 

たくましい写真ののこる日勝は32才の若さで病没している。

 

 

2019年のNHKの朝ドラの登場人物のモチーフになっていることは帰ってきてから知った。地味な作風だし、展示数もすくないのに美術館はにぎわっていたのはそのためだったのだ。でも、少人数でしずかに鑑賞したい作家だ。