2019年9月。北海道の中札内村にある相原求一朗美術館をたずねた。重厚な建物は帯広にあった銭湯を移築したものなのだそうだ。
お菓子の六花亭の運営する中札内美術村に美術館はある。
展示は六花亭が依頼した北海道の山の絵からはじまる。相原求一朗は埼玉県川越市の商家に生まれた。絵の道にすすむことを望んだが、家業をつぐために断念した人だ。その後も絵筆は離さなかったが、世にでたのはおそかった。
山の絵もよいが北海道の風景画がとてもよい。見ていると胸がしんとなる。相原は戦争で満州にゆき、その風景に似ている北海道に魅せられたそうだ。
画風はくらい。重々しく深刻だ。だから人気はないだろう。画題は冬の丘、真冬の一本道、海辺、山、平原など。どれも画面いっぱいに寂寥感がみちている。
そしてひたむきな作者の人間性をかんじる。
相原はものすごく真面目な人なのだろう。ストイックに自分を律して生きた人ではなかろうか。そして胸に秘めていたさみしさを絵に投影していたのではないだろうか。
人気作の岬の一軒屋。襟裳岬に取材したものだとNHKの日曜美術館でみた。
展示室。2階にはアトリエが再現されていた。映像もながれていて、相原の人柄と製作姿勢がつたわってきた。
六花亭は相原求一朗と小泉淳作、真野正美の個人美術館を運営している。真野はわからないが、相原と小泉は世にでるのがおくれた作家だ。とちらもひたむきに描く作家なので、六花亭はそういう人が好きなのだろう。だから六花亭もそのように事業をしているのだろうと思う。
相原求一朗は川越の名誉市民だ。したがって川越市立美術館のコレクションが充実している。興味のある方は『相原求一朗展 川越市立美術館』もどうぞ。