わたしは北海道せたな町生まれ札幌出身
2011年4月にさいたま市浦和にて靴下屋としてネット通販で
起業した時にお店の象徴となる靴下を探してました。
偶然に伝統柄アイヌ文様の日本製の靴下に出会い
すぐに電話し足を運び話を聞き、実物をみてその独自のフォルム魅了され
また、国内一貫で行っている靴下のモノづくりへの背景に深く感動し
自身の「さきっちょ」お店で発売するようになりました。
そこからアイヌ模様のカタチを身近に感じ興味が膨らみ
いつしか自分でもアイヌの木彫りをしてみたいと芽生え実現したいと
思うようになりました。
北海道の二風谷というところで木彫り体験したアイヌ文様のウロコ彫り体験。
全く彫れず。
さいたまに帰りアイヌの木彫りを教えて頂けるところを探し
知人の紹介で出会ったのが足利在住でアイヌ彫りの工芸作家の星野工さんでした。
2017年11月にオープンした実店舗
さきっちょのギャラリーで何度か木彫りを教えてもらってました。
木彫りをしながら星野さんから語られるアイヌの生活、文化。
そして自分が歩んできた道。
自分たちの祖先が和人からうけてきた差別などの話を聞きました。
アイヌ文様の持つ意味に心に残ったのがすべてのモノには魂が宿っている
火や水、犬、鳥から、パソコンや車、鍋まで、
人間にできないことをするもの、
人間のために何らかの役に立ってくれているものは、みな魂「カムイ」が宿っていると。
私たちはそれらカムイという存在と
独自の価値観をもって”共生”し暮らしてきた。
互いに与え、与えられる関係性。
もし動物のカムイからのお土産を粗末にすれば
動物たちは怒って人間のもとに来なくなってしまい
森の樹木を伐採しすぎれば、
大地を守るカムイである樹木のカムイがいなくなり、
土砂崩れなどが起きると考えられてきました。
このような厄災を避けるため、
アイヌの人達は自然と必要以上に動物を殺したり、
樹木や山菜をとったりすることを控えるように
”共生”し暮らしてきたと言われてます。
しかし、ふりかえって今の私たちの生活を見つめてみると、自分もふくめて
そのかなりかけ離れていると言わざるを得ない生活。
動物、自然、人間が生み出した便利な人工物……
身の回りの存在から恩恵を受けていながら、
そこには「お返し」が抜け落ちている。
必要な時、いつでもどこでも欲しいものが手に入る今、
一つ一つのモノが単なる”無機物”以上の存在と捉えられることはほとんどなく、
いとも簡単にごみ箱に捨てられている……。
「自然へ、そしてモノへの感謝」もなく”共生”もない
この星野さんのアイヌの世界観や文化についての話をききながら
アイヌ文様の意味するところに深く心が動き感銘をうけました。
そして、
自分自身のお店で販売しているアイヌ文様の靴下。
あまり人の手にとってもらえない(売れていない)その理由は。
その時に思ったのが、
靴下も魂があるように販売場所を選ぶのではいか。
というモノも意志があるのではないかと
ということ。
アイヌが生まれた北海道、私の故郷でで販売しなければならない。
漠然と思うようになりました。
モノづくりへの敬意やその靴下の生まれた背景をしっかり理解し伝えてくれる場所。
考えたどり着いたのが2021年オープンした
国立アイヌ民族博物館のあるウポポイ(民族共生象徴空間)でした。
国の施設はとてもハードルが高い。
すんなりと決まるとは思わない。
既に完成されてたネーミングやパッケージを全てつくり直し、
コンセプトに向き合いながら
配色もデザインも改良を重ね今のかたちとなりました。
あちこちへ話を聞き、修正しまた修正し、間違った方向にいかないように
販売が決まるまでに約1年。
アイヌ文様監修には私の木彫りの師匠となるアイヌ工芸作家でアイヌ文化アドバイザーの星野工さん。
また商品名もアイヌ語にとても堪能な方を星野氏に紹介していただき「イワンケ」名付けられました。
イワンケとは「元気である」「健やかである」という意味の動詞アイヌ語でです。
このアイヌ文様の靴下を履いて、毎日を元気いっぱい健やかに過ごして欲しい想いから名付けてます。
靴下の縫製に使われたのは現在製造されていないイタリア製ヴィンテージの特殊な編み機。
熟練した靴下職人の手で国内
で丁寧に一目一目をゆっくりと編み上げて一貫生産しています。
一足一足を職人の手仕事により仕上げることで 履く人へ
の想いを強く込めてます。
ウポポイのある白老へも足を運び続け今回、販売へと繋がりました。
自分でない
違う自分に導かれるような感覚で販売まで走り続けた感じがします。
実店舗でも漫画ゴールデンカムイなどアイヌ文化への関心の高さの影響もあり
イワンケ靴下興味を持つ方も増えてウポポイでも人気商品となってます。
星野さんのアイヌ木彫りへの願い
「母なる地球の中で私達は全て兄弟
多数者も少数者も争いごとなく助け合わなければならない」
との願い。
文様にこめられた想いが持つ人の力になって欲しいと思ってます
今のこの地球で起きていることに気を留めて気持ちと向き合わなければならない
足もとのアイヌ文様の靴下を見るたびに思います。
世界平和を願う
さきっちょ店主、越野陽子