今回ご紹介する論文はこちら


https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/31552461/

 

こちらの論文では、妊娠後期に盲腸(医学的には虫垂炎と言います)になった方を対象に、手術が妊娠に与える影響に関して調べています。

 

対象となったのは妊娠中に虫垂炎の手術を受けた2507名の妊婦さん。

 

885名(35.3%)は妊娠初期、1205名(48.07%)は妊娠中期、417名(16.3%)は妊娠後期に手術を受けていました。

 

その結果、全体の早産の確率は11.85%でしたが、特に妊娠後期の手術に関しては、早産の確率が1.65倍、33週以前に生まれる確率が3.43倍、1750g未満で生まれる確率が2.08倍という確率でした。

 

また、別の論文では虫垂炎の手術を開腹手術でするのか、腹腔鏡手術でするのかを比較しています。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/31023289/

 

この論文では、22の論文における4964人の妊婦さんについて調べています。

905人は腹腔鏡手術を受け、3789人は開腹手術を受けました。

 

その結果、腹腔鏡手術を受けた方が胎児死亡の確率が1.72倍になったのですが、詳しく解析すると、22の論文のうちの1つの影響が非常に大きく、その論文を除外して解析したところ、腹腔鏡手術も開腹手術も胎児死亡の確率に違いはありませんでした。

 

また早産の確率も手術の方法によって違いはありませんでした。

 

一方で、腹腔鏡手術の方が入院期間は短く、創部感染の確率も0.4倍と低い結果になりました。

 

また、別の論文では腹腔鏡手術と開腹手術と手術をしなかった群とを比較しています。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/25171885/

 

この論文では859人が妊娠中に虫垂炎の診断を受けて入院し、腹腔鏡手術・開腹手術・手術しない群に分かれていました。

 

その結果、手術しない群(抗生物質の点滴にて治療したと思われます)が最も早産の確率が高く、腹腔鏡手術も開腹手術も母体の合併症の確率は変わりませんでした。

 

以上のことから、妊娠後期にかけて虫垂炎のリスクは上がっていきますが、手術をしないよりも手術をした方が良い可能性があり、また術式に関しても腹腔鏡手術が可能であれば、そちらを選んでも問題ないだろうことがわかります。

 

実際の治療方針に関しては、担当の先生との相談になりますが、これらの論文が一つの参考になればと思います。