私は自分の名前が嫌いだ
人から見れば「ロマンティックな名前じゃない」
と言われるかも知れない
でも嫌うにはちゃんとした理由がある

名前が嫌いというよりこんな名前を付けた
父親が憎いというのが正しいかもしれない
でも、父は私がたった2歳の時に亡くなってしまった
文句を言う相手がもうこの世にいないなんてずるい
記憶のカケラも無い父との関わりがこの名前だけなんて

父の「たくらみ」であるこの名前の秘密を知ったのは
私がまだ幼稚園の時だった
私はベソをかきながら母に訴えた時の事を覚えてる
母は少し微笑みながらこう言った
「まあまあ、お父さんらしいねえ」
抗議の甲斐がないので 私はむくれたはずだ
でもその後、ふっと寂しそうな母の横顔を見てしまったので
私はもう それきり何も言えなかった

幼稚園から小学校、この時期の子供たちは
ささいな事が「からかい」の対象となる
私は何度も恥ずかしい思いをしたものだった
さすがに今、高校生ともなると単純なからかいは
なくなってきたけど・・

苗字だって悪くない
女子高生なのに熊だの尻だのそういったあまり
歓迎すべきでない字が苗字に使われている級友もいる
彼女たちに言わせれば 贅沢いうな!って
一喝されるのは間違いない

でも問題は組み合わせなんだよなぁ

退屈な授業をやり過ごすヨソゴト想いは
私の名前を呼ぶ先生の声で中断された

『おい、星野、次のページを読んでくれ』