※2023.12.25 表現を修正しました

相同染色体をパラレルワールドと表現していましたが、

別に同じ地区にある工場という表現で大丈夫と思って変えています。

内容は変わってません。

 

 

 

ちょっとこの前、遺伝子多型について触れました。

うまく説明できないなーと思ったため、自分理解を深めるため一度解説回やってみます。

 

遺伝子はアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)で構成されます。

例えばこんな感じ。こんな単純ではないけど。

遺伝子は何をしているかと言えば、このATGCを設計図にタンパクを合成しています。

タンパクを構成するのはアミノ酸です。

こららの記号は3つ組み合わさると、その組み合わせによって構成されるアミノ酸を決定します。

 

たとえばATGという並びならメチオニンを。

AGCならセリンを。という感じです。

 

その並びが1つ何かしらの原因で変化してしまうと、

構成されるアミノ酸も変わってきます。

 

これが点突然変異です。

 

点突然変異が起こった状態で作られたタンパクは、

構成するアミノ酸が変わってしまっていますので、

元々作られるはずだったタンパク(wild type)に比べて機能が落ちます。

この機能の変化はどこに点突然変異が起きるかによって異なり、

少し性能が落ちてしまったり、まったく機能しなくなったります。

 

もし生命維持に関わるようなタンパクだと、機能しない場合致命的になってしまいます。

 

この変異を、「全人口のうち1%以上が持っている場合」遺伝子多型と言います。

ちょっとわかりにくいですね。

 

例えば、お酒を全く飲めない人の話。

主にアルコールの分解において中心的な役割を果たすのが、

アルコールをアセトアルデヒドに分解する酵素「アルコール脱水素酵素(ADH1B)」と、

アセトアルデヒドを無毒な酢酸に分解する酵素「アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)」です。

 

酵素とは何者かというと、タンパクです。

タンパクは何から構成されているかというとアミノ酸です。

アミノ酸はどのように作られているかというとA, T, G, Cの組み合わせです。

 

このA, T, G, Cに変異が起こっていたらどうなるでしょう。

そう、できあがる酵素=タンパクが若干違ってきます。

 

具体的にはアルコール脱水素酵素(ADH1B)は48番目のアミノ酸がヒスチジン(His)の人とアルギニン(Arg)の人がいます。

Hisの人はヨーロッパに多く、アルコールを分解する速度が非常に速いという特徴があります。

これをHis48Arg多型と表現します

 

またアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)には487番目のアミノ酸がリシン(Lys)の人とグルタミン酸(Glu)の人がいます。

Lysの場合にはALDH2酵素は働かなくなります。

これをGlu487Lys多型と表現します。


ADH1B遺伝子がHisの人は酵素がよく働くために飲酒するとアセトアルデヒドが早くでき、

ALDH2遺伝子がLysの人は飲酒してできたアセトアルデヒドがなかなか分解されずに体内に貯留するので、

飲酒すると顔が赤くなったり動悸がしたりして不快な反応を引き起こします。

 

うーん、わかりやすい。

何せよ下記のサイトからの引用です。

ありがとうございました。

 

 

てことで、この遺伝子変異というのは世界を見ると1%以上は存在しているようです。

この場合、この遺伝子変異は「遺伝子多型」と呼ばれます。

 

ちなみに変異mutationは病的な意義、

多型polymorphismは良性な意義があって、

BRCAの変異には病的でないものもあり、

表現は異形variantで統一されているようです。(ああ…知らなかったことを恥じる…)

病的なものを病的variant、変異があっても病的なものかわからないものをvariant of unknown significanceとしています。

 

難しいこと書いてますが、お酒の例えでわかるとおり、

遺伝子多型とは、要は「体質」です。

その「体質」の中に、薬剤が効果を示しにくかったり、副作用が強く出てしまったりというものがあります。

 

有名なところで言うと、CYP2D6です。

CYPは薬の代謝に必要な酵素です。

2D6の部分は,

 

2をfaimily

Dをsubfamily

6をisoenzymeといいます。

 

例えると薬剤を分解する工場は日本各地に転々としていて、

2が東京都、Dが新宿区、6が西新宿という感じで、

いくつかの薬剤は東京都新宿区西新宿で担当しています。(ちょっと意味合い違うのですがこのままいきます)

 

CYP2D6はタモキシフェンの代謝に関わってきます。

タモキシフェン自体はそれのみでは効果を示さず、代謝されてできた物質が抗腫瘍効果を示します。

なのでこのCYP2D6がうまく機能しない場合、タモキシフェンの効果が減弱する可能性がでてきます。

 

CYP2D6の遺伝子多型を示す場合、CYP2D6*1なんていう感じで示します。

*1の部分はアレルといい、日本語で言うと対立遺伝子です。

 

さて、ややこしくなってまいりました。

対立遺伝子とは人間染色体は2セット持っていますので(相同染色体)、

設計図は2セットあるんですね。

CYPを作る遺伝子も2セットあります。

 

その「1」というところのセットが、

・2セットとも全く同じか

・片方だけ変異が起こって違うか

・両方変異が起こっちゃってるのか

その3パターンで、作られている酵素の活性が変わってきます。

 

この「」にはいる数字によって、どの程度活性が変わるかは違いますが、

ざっくりと2セットとも正常だと活性。片方だけだと部分的に活性低下。両方変異だと全く活性せず。

という感じです。

 

多分ですがこの数字は見つかった順番に付けられているんじゃないかと予想しています。

(調べてもわかりませんでした…薬理学に精通している方教えてください…)


例えの流れで言えば、分解工場は各地に2つ存在していて、

東京都新宿区西新宿1丁目の分解工場は、

両方の工場が正常なら問題なく、

片方の工場で生産ラインがストップしたら昨日は不安定となり、

両方の工場がストップしたら機能が停止する。

 

いや、なんか違いますね。

うまい例えができなくてすみません。

そのままの例えで乗り切るのであれば、

西新宿は2丁目、4丁目、6丁目、10丁目、14丁目、18丁目、21丁目、36丁目、41丁目、44丁目あたりの工場がおかしくなると、機能が落ちてしまうようです。

 

ちなみに、じゃあ活性が落ちてるのであればタモキシフェンの量を増やせば良いじゃないと、

タモキシフェン倍量でいってみた試験が日本で行われています。

 

https://ascopubs.org/doi/pdf/10.1200/JCO.19.01412?role=tab

 

再発患者さんに対してのタモキシフェンの効果を検討しています。

タモキシフェンの代謝活性が低かった群については、

確かにタモキシフェンの量を増やしてみると代謝物質の血中濃度は上がったのですが、

Primary endpointである6ヶ月時点での無増悪治療効果とは結びつきませんでした。

 

若干差が出ているようにも見えますが、統計学的な差はありません。

この結語としては結局理論通りにいかず、色々な要素が絡み合っている可能性が高いため、

CYP2D6の遺伝子型で量は変えなくて良い。というところに落ち着いています。

 

タモキシフェンはCYP2D6によって代謝されますが、

トレミフェンはCYP3A4(例:大阪府中央区大手前の分解工場)で代謝されますので、

タモキシフェンで十分な効果が得られなくても効果が得られる可能性があります。

 

あとは抗うつ薬の中のパキシルはCYP2D6を阻害する作用があります。

遺伝子型に関係なく阻害するので、代謝がうまくいかず血中濃度が低下しますので、

併用はやめるようにしましょう。

 

自分の勉強不足を痛感いたしました。

こいつ専門医のくせに何言ってるんだって言う感じの内容だと思います。

詳しい人もし間違っているところ合ったら教えてください…