いつも私のブログをご覧いただき、ありがとうございます。
地方議会の使命は、地域の課題を議論し、より良いまちづくりの方向を市民とともに考えることにあります。
そのためには、「議会が何を話し合い、どのように決定しているのか」をわかりやすくお伝えし、市民と双方向に意見を交わしていくことが欠かせません。
こうした“開かれた議会”をめざすうえで欠かせないのが、議会広報の充実です。
議会だよりは、単に活動を伝える紙面ではなく、市民と議会をつなぐ「対話の窓口」であり、自治の基盤を支える大切な媒体です。
そうした視点から、10月27日・28日の2日間、北杜市議会広報編集委員会の一員として、埼玉県の日高市議会と小川町議会を訪ね、議会広報の工夫や課題について学んできました。
今回の視察を通して、「伝える」から「つながる」へ――議会広報が果たすべき役割の変化を強く感じました。
日高市議会 ― 「見てもらう」議会だよりへ
1日目は日高市議会を訪ねました。対応してくださったのは、リニューアルの中心を担われた副議長(2期目)と議会事務局の職員の方々です。

日高市議会では、令和5年12月に議会だよりを大幅にリニューアルしました。
ページ数を18頁から12頁に減らし、縦書きを横書きに変更。文字サイズを大きくして、動画配信へアクセスできる二次元バーコードも導入するなど、紙面を一新しました。

その理由は二つ。
一つは「パッと見て関心を持ってもらうためのツールとしての役割を明確にした」こと。
もう一つは「予算をかけずにリニューアルを行った」ことでした。
「市長部局に迷惑をかけずに実現できてよかった」と副議長は話していました。
一方で、紙面の制約により質問項目ごとの掲載内容が簡略化され、発言のニュアンスを十分に伝えられない点には悩まれているそうです。
私からは4点質問しました。
- 市民からの反応は?
アンケートは取っていないが、「見たよ」と言われる回数が増えた。ただし内容まで読まれることは少なく、「○○さん載っていたね」といった反応が多いとのこと。年配の方からは「文章量がもう少し欲しい」という声も寄せられているそうです。
- 委員会活動などを削減した理由は?
本会議中心の掲載にし、必要な場合のみ委員会活動を載せているとのことでした。
- 全議案の審議結果を載せる理由は?
「議案ごとの正確さを重視しているため」との回答でした。
- 『豆知識』など市民向け解説を減らした理由は?
「紙面に余裕があるときは掲載しているが、機会は減っている」とのことでした。
なお、編集後記を廃止した理由が「政治的思想が入るため」という点や、「市民参加コーナーを設けず、市広報に任せている」という説明には、議会の独自性という観点から違和感を覚えました。
行政への参加と議会への参加は異なるものであり、市民に開かれた議会をめざす改革の流れに照らして考えると、再検討の余地があるように感じました。
小川町議会 ― 「チーム議会」としての発信
2日目は小川町議会を訪問しました。対応してくださったのは、高橋委員長をはじめ6名の議員、議会事務局長、職員の皆さんです。
小川町議会は平成8年に議会広報を創刊して以来、首長部局が発行する広報との差異に留意しながら、たびたび紙面改革を重ねてきました。平成28年には第79号で紙面の大幅リニューアルを行い、町村議会広報全国コンクールで奨励賞を受賞。それを機に令和4年まで7年連続入選を果たすなど、継続的に高い評価を受けています。今年8月にも9年ぶりに紙面を刷新しました。
注目すべきは、議会だよりが「議員個人の活動報告」ではなく「議会全体としての活動報告」になっていることです。
北杜市議会だよりが議員ごとの質問・活動を並べる構成なのに対し、小川町では「チーム議会」として統一されたテーマで発信していました。

表紙には「新生議会始動‼」「町民の声『聴きます×つなぎます』」といった見出しが並び、議会としての意思が伝わります。
中身も、「新生議会始動‼」では、「新生議員一人一人が歩んできた道や考え方に違いはありますが、総力をあげ、信頼される議会を創っていきます。」とあり、議会として活動する決意が伝えられていました。
また、「16人の一歩 活性化に向けて進み続ける議会」では、議員全員でテーマを決めて議員意見交換会を開催し、地区懇談会や議員定数の見直しに発展した経緯が紹介されていました。
さらに、「町民の声『聴きます×つなぎます』」では、議会だよりを読んだ感想を議員がインタビューしていました。
この「チーム議会」としての取組については、研修の中で言われた(議員が支持者に伝えるだけではなく)「議会全体として住民全体に伝えたい。」「何を住民全体に議会としてお示しするか。」といった高橋委員長の発言からも窺うことができました。
このことを私が述べると、高橋委員長は「議会だよりが議会としての活動の報告になるように意識してきたのでとても嬉しい。」と喜ばれていました。
ちなみに、なぜ私がこの点に注目するかというと、議会改革の柱の一つとして、現在、「チーム議会」として政策力を向上させ、住民福祉の充実へ向けて、首長と切磋琢磨することが必要とされているからです。
従来の議員は、議会活動よりも議員活動を重視する傾向がありました。しかし、議会改革の流れは、議長を中心に議会事務局も参加した「チーム議会」としての活動を求めています。市民は、個々の議員活動の評価とともに、これからは議会の組織的な調査研究や政策提言活動を評価することが欠かせなくなっているのです。
活発な質疑も終わりに近づいたころ、最後にどうしても尋ねたくなって質問しました。「平成8年の創刊以来、小川町議会だよりがさまざまな変遷をへて、その過程で多くの賞も受賞されながら、今日までやってこられたことを伺いました。ところで、地方議会は住民自治の根幹であり、議会の広報広聴も住民自治の発展に資するというのが、その最終的な目的だと思います。その意味において、この小川町議会だよりをリニューアルしてきたことによって、小川町の住民自治は向上したと思われますか?」

それに対して高橋委員長は以下のように答えられました。
「『地方議会人』最新号に次のよう言葉がありました。2010年は『公開と住民参加』、2020年は『公開と住民参画』、2025年は『公開と主権者参画』へ。議会改革の柱の一つが広報広聴であり、それを通じて政策力を高めたい。」
「16人の一歩‼」(『おがわぎかい』No.112)の中で、「議員は学び続け、議会は討議し結論を出す」と書かれていた高橋議長(当時)の議会人としての気概と矜持が伝わってきました。

リニューアル号の編集委員たちの言葉も印象的でした。
「16人で取り組んだ議会改革の様子が紙面を通して少しでも伝われば嬉しい。」
「汗と寝不足の結晶……議会だよりが自分の『まんなか』だったのかもしれない。」
「編集委員を通して町の良さを再発見し、多くの人と出会えた。」
小川町議会の熱量と一体感に触れ、私自身、議会人としての責務を改めて見つめ直す機会となりました。

学びを今後の北杜市議会へ
視察の最後に、小川町議会事務局長から「北杜市でも地区懇談会を開くのは良いと思う」との言葉をいただきました。
市民と議会が直接意見を交わす場を設けることは、まさに「開かれた議会」への第一歩です。
今回の視察研修で学んだのは、「議会広報は単なる情報発信ではなく、市民と議会をつなぐ架け橋である」ということです。
一方通行の“報告”から、互いに意見を交わし合う“対話”へ。これこそが、地方自治を支える議会改革の核心だと感じました。
これからの北杜市議会だよりを、より市民に開かれた、共に考える紙面にしていけるよう、委員の一人として力を尽くしていきます。
そして、市民の皆さんが「議会って、案外身近だな」と感じてもらえるような議会運営をめざして、引き続き取り組んでまいります。
最後に、今回の視察を計画・調整してくださったすべての皆さまに心より感謝申し上げます。
視察前に思わぬ怪我をしてしてしまい参加が危ぶまれましたが、皆さまの温かいご協力のお陰で無事に終えることができました。
本当に有難うございました。
市民の皆さんからのご意見・ご感想もお待ちしています。




