わたしのブログをご覧いただき、有難うございます。


一昨日は山梨県議会にいってきました。わたしが塾長を務める市民政治塾やまなしの塾生とともに議会を傍聴するためです。

「県議会は『遠く』に感じられる。」そんな声を先の4月の統一地方選挙を戦った時に多く聞きました。メディアで頻繁に報道される国会や、身近なサービスを通して接する市議会と比べて、県議会は見えない、というのです。

それではこちらから見にいこう、と傍聴を希望する声が上がり、いってきました。

傍聴したのは令和元年9月定例会の農政産業観光委員会です。

委員会では、その部門に属する当該普通地方公共団体の事務に関する調査を行い、議案、請願等を審査します(地方自治法109条2項)。地方自治法は委員会を必ず置かなければいけないとはしていません。その点では国会と異なっています。理由は、地方自治の規模では本会議中心主義をとることを可能にするためです。もっとも、実際には委員会を中心に実質的審議が行われ、本会議が形骸化する傾向が見られます。

さて委員会室に入って印象に残ったのは、まず委員会室の席次です。入った正面奥に、委員たちの座る椅子とテーブルがあり、その手前が執行部の部局長スタッフ、その手前が課長級スタッフ、そしてそこから入り口までの2列がその他の職員でした。それから、当該委員会に所属していない議員と報道の席が委員のテーブルの横にありました。

それでは傍聴席はどこにあるのかというと、職員の並んでいる席の横の壁に付いて10席あるだけでした。椅子とテーブルも、委員たちのそれらが最も立派で、その次が執行部幹部職員のものでした。但し、テーブルが用意されているのはそこまでで、それ以外の職員には椅子があるだけでした。

他方驚いたことに、傍聴席の椅子は丸椅子であり、しかも僅かばかりの空間にひっついて並んでいて、傍聴者は想定していないような配置構成でした。それはその場の秩序観を雄弁に物語っていて、市民は視野の片隅にしか置かれていないということを表しているようにも見えました。 

ちなみに、委員会室の上階にあった議長室と副議長室はとても立派な部屋でした。


委員会は10時から開会しましたが、違和感があったのは、「先生方、おはようございます。」という事務局職員の開会の挨拶でした。どうして議員達を「先生方」と呼ぶのでしょう?議員も職員も同じ市民であるはずです。

それから委員と職員が男性ばかりであることも気になりました。

あと不思議だったのは、職員が応答する際に、掌を握りしめて挙手することです。数少ない女性職員も含め、握りこぶしで挙手する光景は少し異様でした。

さて委員会の審査ですが、農政、産業労働、観光、エネルギー、企業に関する内容でした。議案は、温暖化に伴う果樹栽培環境の変化に対する対策、豚コレラ対策、新規就農支援策、工業団地立地のための市町村への補助金の交付、難燃性マグネシウム合金製造に対する補助、雇用促進策、ワイン製造についてなどでした。ここで詳しい内容は書きませんが、総じて補助金を始めとして、予算をどこに付けるかということが審査の中心でした。しかし予算の付け方や対策は対症療法的、悪く言えば場当たり的であるように見えました。

その一つに日本酒振興について、クーポンを発行したり、イベントを開催するといった振興策が執行部から話されていましたが、それが県内の日本酒の振興につながるかは疑問に思いました。クーポン発行やイベント開催は単発的であり、それ限りで終わりだからです。

しかし振興というからには、一定の持続性を持った発展が見込まれなければいけません。それには、もっと多領域にまたがる県の施策全体と有機的に結び付けた振興策が求められるはずです。そのためには、山梨県のビジョンや哲学が必要です。それが立てば、山梨県における日本酒の位置を各領域との相互連関の中で定めることができます。そうしたら、各領域の振興策と共振させ合いながら、有機的かつ持続的な成長が図られます。

そういう大きな像のもとに個別の問題を話し合うのが政治であるはずなのですが、そういう議論はありませんでした。辛うじて、農業被害に対する県の補償の基本姿勢を問うた清水喜美男委員の質問があったのみでした。

関連して、「(アグリマスターなど)県の新規就農支援策に問題はないか?」という清水委員からの質問に対して、「問題ないと思われる。」と執行部は回答していました。しかしこれはわたしの得た知見とは相当に異なっています。北杜市内を歩いて伺った農家の方々からは、県の新規就農支援策は機能しておらず、その証拠として新規就農者がなかなか定着せず、去ってしまう人が多いという話を多く聞きました。現場の声と委員会での答弁では認識がおよそ正反対でした。

そういった内容ですから、県の施策や県政の方向について突っ込んだ話し合いが行われてしかるべきでした。当日配られた資料でも、委員会について「送られてきた議案や請願などについて、いろいろな角度から議論し、委員会として、賛成か反対かの態度を決めます。」と書かれています。しかし実際は「討論はないということでよろしいですか?」「異議なし。」の連続で、一回も討論は行われませんでした。

私たちの当初の予定では午後も傍聴する予定でしたが、そういう審査内容に対する失望と劣悪な傍聴環境から、「傍聴するのがきつい。」という声が複数上がり、午後の委員会の途中で傍聴するのを切り上げました。

ちなみに県議会では委員会中の入退室は市民を含めて誰でも自由であり、その点はこれを認めていない北杜市議会と異なっていました。

さて初めて県議会を傍聴した参加者の感想でしたが、「閉鎖的」というのが共通した感想でした。傍聴環境からまずそれを感じたようでしたが、加えて本会議場の見学が認められなかったこともその感を深くさせていました。閉会中でなければ本会議場の見学はできない、という説明でしたが、開会中の本会議の傍聴はできるのに、なぜ見学はできないのかについて、議会事務局から納得のいく説明はありませんでした。議会は市民みんなの場所であり、誰もがいつでも自由に見られるべきです。充分にひらかれているとは言い難く、委員会室の傍聴環境の改善と併せてこれからの課題であると思いました。


また配布資料についても、受け取った付託表だけでは議事内容は到底分かりませんでした。市民の理解を助けることのできる資料を用意する必要があります。

終わりに、県庁別館にある山梨近代人物館を見学しようとしたのですが、あいにく展示替えをしていて見学できませんでした。それで参加者と茶話会をしました。皆さん、いろいろな問題を感じられたようでしたが、実際に傍聴することで知ることのできたことは多く、「やはり、傍聴してよかった。」という感想が多数でした。市民の熱量はすごいです。「今日の熱がさらに市民に広がっていくといいね。」と話して、解散しました。

その後わたしは県庁の隣にある山梨ジュエリーミュージアムにいき、山梨のジュエリー産業の歴史やそれを生み出した山梨の地質を知るとともに、美しい天然宝石や貴金属を楽しみました。

魅力溢れる山梨県の可能性をひらいていきたい、と改めて思った一日でした。