手許にある『新明解国語辞典〔第五版〕』(三省堂、2000年)は、特定の語(例えば「恋」)の釈義で有名になった。

 では、「にくい」の語はどう解説されているのだろうか? とやや気になった。

 「にくい【憎い】」「(形容詞)〔一〕①相手(の存在)がたまわなくいやで、出来るなら抹殺したいくらいだ。②相手のした事がりっぱで、思わず〔参った〕と言いたい感じだ。『――ことを言う』〔②は①の転用〕」とある。

 

 ➀の「出来るなら抹殺したいくらい」まで「憎い」という釈義は、そこまで言うか⁉というユニークなものだが、激しく憎いときは「憎い」だけでいいだろう。通常の「憎い」という語感は「憎たらしい」とか「憎々しい」という言い方のほうがしっくりくる。

 

 考えてみると、こんにちの日常語で、「憎い」は、どうも②の「りっぱで参った」のほうでよく使われ、ほんらいの「憎い」は、「憎たらしい」として使われているような気がする。

 

  なお、昭和歌謡の中の「憎い」は、美川憲一のヒット曲『釧路の夜』の

 

   「~♪女心も知らないで あなたが憎い~ あなたがァ~憎い♪~」

 

 

 

  にもあるように、憎しみと恋情がねじれているような心境のようにもとれるのだが・・・

  いやぁ 憎いね~。

 

   最後に一句。

            憎いのよオトコごころと走り梅雨   ひうち