ヒツジの街歩き「横浜税関」で犯罪抑止と税関の歴史を学ぶ(横浜市) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

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ひつぞうです。
おサル妻との山旅を中心に日々の出来事を綴ってみます。

横浜税関 資料展示館

℡)045-212-6300

 

往訪日:2023年6月4日

所在地:横浜市中区海岸通1‐1

営業時間:10:00~16:00

料金:無料

アクセス:みなとみらい線・日大大通り駅(1番出口)から徒歩約2分

 

《イスラム建築風のドームが印象的》

 

ひつぞうです。ヒツジの横浜街歩き。最後に訪れたのは横浜税関でした。象の鼻テラスからは(文字どおり)目と鼻の先です。犯罪撲滅に携わる税関の仕事、とても興味深かったです。以下、往訪記です。

 

★ ★ ★

 

“クイーンの塔”の愛称で親しまれている横浜税関横浜総領事館と同様に、関東大震災で倒壊した二代目庁舎に代わって1934(昭和9)年に再建された。つまり三代目。

 

「初代はいつできたの?」サル

 

開港資料館で説明されていたように、江戸幕府の運上所が始まりだよ。開国後に函館神奈川長崎の三都市に設置されたそうだね。その後、1872(明治5)年に澁澤栄一井上馨らの働きで呼称が「税関」に統一された。関税と密輸や犯罪防止の責務を負うことから「税」と「関」の文字を併せた造語だったんだね。初代の建物は1873(明治6)年に完成している。

 

 

朝日を浴びる税関旧庁舎。美しいね。塔屋はイスラム風だけど、クリーム色の建物本体は軒飾りで装飾され、最上階の窓はロマネスク様式の寺院のようでもある。折衷式のデザインを採用することで、国際都市としての威厳を示そうとしたんじゃないかな。設計は宮内省内匠寮出身の吉武東里国会議事堂なども吉武のデザインだね。

 

 

実はここ裏に当たる。でも建物としてはこの角度が美しい。その高さ51㍍。完成時は横浜の街で一番高層だったそうだ。

 

 

2003年に耐震工事を行うとともに新館を増築。ただし、できるだけ当時の姿をとどめるように配慮されている。

 

 

旧税関庁舎塔屋などの内部は、特別公開の際しか見学できない(今年は二月に終了)。なので今回は資料展示館を見学することにした。

 

 

それでは見ていこう。

 

 

なんと見学無料。税関の仕事を正しく理解してもらうためだろうね。

 

 

まずは神奈川運上所の門扉を拝見。

 

 

明治10年頃の横浜税関の周辺地図だ。初代の建物は現在よりもやや内陸部に建てられたことが判る。

 

 

初代から現在の建物への変遷。いずれも凝った洋風建築だったと判る。

 

 

歴代の税関長だ。第8代の有島武(左から二人目)は作家・有島武郎の父君。父親が立派過ぎてあんな風になったのかもしれないね。個人的には第4代の星亨が好奇心を擽られた。左官職人の家に生まれながら、向学心が強く、ヘボンの英語塾に通い、下級役人の職に就く。その後、政治家の眼に止まってメキメキと頭角を現し、猛烈な押しの強さで政治家としても手腕を発揮していく。最後は剣術の大家に暗殺されてしまうが、こういう豪傑が明治の頃にはたくさんいたんだね。

 

「ふむふむ」サル あんまりキョウミない

 

改修工事の際に保存された遺構もあるね。

 

 

庁舎の隅角を飾るカップ式装飾。三代目竣工時の、現存する二体のうちの一体だ。

 

 

改修工事で撤去された縁飾り。モチーフは棕櫚。

 

「なんかボロッちい」サル

 

粗く仕上げてわざと遺跡風に表現しているそうな。

 

 

では一番面白そうな犯罪撲滅コーナーへ。

 

「白い粉きゃ」サル キケンな臭いがすゆ

 

 

「石材の中に大量のブツがはいってるにゃ」サル

 

2014年に発覚した大量覚醒剤密輸入事件の再現だそうだ。よくこんな巨大なものに封入したね。

 

「大きければ検査できないって思ったんじゃね」サル

 

 

でも日本にはコンテナの貨物をそのまま調査できる大型X線検査装置があるんだよ。悪いことはできないね。

 

 

ワシントン条約で持ち込み禁止される生物製品も要注意。特に漢方薬。

 

 

こういう装置で水際対策されている。

 

「警察犬の活躍もにゃ」サル

 

そうそう。

 

 

これ全部ニセブランド。

 

「一体どちらが本物でしょ?」サル

 

さすがに自分が持っているブランドは判るよ。

 

 

見事に全部外した…あせ。出鱈目でも確率1/2なのに…。

 

「なかなかできないよ」サル 全部ハズス方が難しいだよ

 

仕切り直しだ。

 

 

これは判った。(正解は記されているけど、その理由は教えられないそう。そりゃそうだ。)

 

「サルも」サル すぐ判った!

 

ネックレスの構造を知っていれば簡単だ。

 

 

これも判りやすい。バッグは縫製で見分けが効くが、これはあるパーツが杜撰だね。

 

 

ちょっと難しい。財布本体だけを睨んでもなかなか判らない。展示全体に一つのヒントがあるね。

 

「持っていないブランドは当たるにゃ」サル マグレじゃね?

 

観察眼だよ観察眼。

 

 

最後に正門を見学した。左右二箇所銘板が打たれているね。左は横書きの英文になっている。これはGHQが税関を接収した際に取り換えられたものらしい。なので元の縦長の跡が残っている。マッカーサーも執務したと言われている。

 

 

筆文字は当時の大蔵大臣・高橋是清の手になるもの。以前も触れたが、高橋是清もまた下級士族の家に生まれて、苦学して出世した開化期の大人物。先の星亨と同じくヘボン塾で学び、日本の政治経済の発展に寄与したが、奇しくも星と同様、暗殺されている。

 

国政の低迷を個人の失策に結びつけるテロリズムの短絡思想は今も昔も変わらないようだ。

 

 

正門前には縁飾りのデザインと同じ棕櫚の樹が風に揺れていた。

 

(おわり)

 

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