五体は揃い、眼もそこそこ見え、耳も聞こえる。しかし、それでもなお触れられない物は多い。

 音楽の旋律を楽しめても演奏することなど出来ないし、芸能の事もよく知らない(興味もあまりない)。タクシー会社の事も知らない。


 音楽なら口笛を人並みに吹けるのがせいぜいだ。



 狭いもんだなと思う。この上、五感のどれかが失われたら否応なく小さな箱庭みたいな世界になるのかもしれない。それならそれで構わないが・・・



 自分の"可能性"は思考の上では無数にある。しかし、それは無私の自分、あるいは形而上的な自分を想定した上での事。
 現実では、そんな別の人生も知識の不足故に思い描けない。少なくとも完璧には。


 フィクションの世界は泡沫の夢だ。その非現実性から自分をそこに置き換えることは難しく、ましてやそんな環境に近づけることも困難と言える。



 考えるより生むが安しか・・・そりゃそうなんだろうけど。