『牡丹社事件 マブイの行方ー日本と台湾、それぞれの和解』(作・平野久美子/集広社)について | 一青妙オフィシャルブログ「妙的日記」Powered by Ameba

『牡丹社事件 マブイの行方ー日本と台湾、それぞれの和解』(作・平野久美子/集広社)について

 

湾の最南端に位置するのが屏東県だ。

昨今の台湾人気で、台湾を訪れる人は増えたが、屏東まで足を伸ばす人はまだまだ少ないのではないだろうか。

屏東県は三方を海に囲まれ、台湾南部最高峰であり、先住民のパイワン族とルカイ族の聖なる山・北大武山を有する自然豊かな地域である。

特産品はマンゴー、玉ねぎ、蓮霧(ワックスアップル)など。

映画『海角七号/君想う、国境の南(原題:海角七號)』で有名になった恒春半島にあるリゾート地・墾丁では、真白な砂浜と青い海を見ながらバケーションを楽しむ台湾人も多い。

 

五月に出版された平野久美子さんの新著『マブイの行方』は、そんな屏東の牡丹郷で起きた「牡丹社事件」を扱ったノンフィクションだ。

平野久美子さんとは、台湾のイベントを通して知り合った。私と同じ学校を卒業されているので、先輩ということだ。勝手に親近感を抱きながら、いつもご著書を拝読してきた。

 

「牡丹社事件」とは、1871年に牡丹郷に漂着した宮古島の島民の生存者のうち54名が、先住民パイワン族により斬首された事件を発端とし、1894年、明治政府が行った台湾出兵までの一連の出来事だ。

2005年、平野さんが台湾で語学を学んでいたときのことだ。事件を謝罪したいと、台湾から事件の関係者子孫たちが沖縄、宮古島を訪れ、面会を果たしたニュースが報道された。これをきっかけに、平野さんの調査は始まった。

屏東、宮古島、石垣島、長崎、那覇、台北などに何度も足を運び、事件に関わった人々の子孫から様々な話を聞き出し、時には交通の不便な奥地まで足を踏み入れ、集めた資料を元に書き下ろした作品だ。

平野さんの粘りと執念が詰まった一冊のように思える。

 

台湾と日本の歴史について興味を持つものなら、牡丹社事件のことはどこかで聞いたことがあるかもしれない。だけれども、当事者の声を丁寧に集めた書籍ほとんど見当たらない。

この本のページをめくり進めると、今の日台関係は、過去に起きた様々な事件の上に成り立っていることを改めて痛感させられる。と同時に、私自身、台湾と日本にルーツを持ちながら、台湾の歴史について考えるようになったのはつい最近のことなので、もっと知らなければならないことがたくさんあることに気づかされた。

 

 

 

私にとって最も印象に残る屏東県の風景といえば、台湾を自転車で一周した際に、急な峠道に突如現れた「牡丹小学校」だ。牡丹小学校が立つ斜面には、長い長い階段が設けられているが、その階段が虹色にペインティングされており、とても美しい。

手付かずの自然の景色に溶け込むように建てられた小学校では、先住民の子どもたちが元気よく遊んでいた。

このすぐ近くで、100年以上も前に牡丹社事件は起きていたということになる。

本書のタイトル「マブイ」は琉球語で「魂」を意味する。また時間を改め、訪れた際には、マブイたちの思いを感じたい。

 

それにしても、平野さんのパワーにはいつも圧倒される。

あの細い体のどこに元気が詰まっているのか不思議でならないが、私も平野さんのように年を重ね、いい本を書き続けたい。