よくある話なのだが、
教科書を全て電子書籍にしてタブレットで読ませろ、という主張。
僕はこれに対して必ず51%以上の反対を表明することにしている。
つまり一理は認めるし否定もしないし肯定もするが、
是非を問うなら決して賛同はしない、という立場にいるわけだ。
理由は簡単で、タブレットが壊れたらもう読めないからな。
停電やサイバーテロ、ないし自然災害、もちろんそれに類する戦争にも弱い。
雨で濡れたくらいなら教科書は読めるし、落として壊れることもない。
紙媒体は配布が容易で取り扱いが多少乱雑でも簡単には壊れないという、
精密電子機器にはない特性がある。
そしてページに付箋でも貼っておけば大事なページに一瞬で飛べる。
電子機器だとそれができない。
これは紙媒体が電子媒体に勝る最大の特性ともいえる。
いずれにせよ、
教科書が重いから持ち運びさせるなというのも正論であれば、
そもそもなぜ教科書が重くなっているのかを、お前らは考えたことがあるのか? と・・・
それは旧ブログのほうで喋ったからこの場では割愛するとして。
(=大事なことだからいずれ何度も喋るだろうけど)
そもそも「紙の本がなくなる」という物理的事実だけを見るなら、
「教科書の電子書籍化」は「焚書」と同じだからな。
検閲どころか無能な独裁政治と何も変わらんのだ。
それは言いすぎだって思うだろ?
だからわかりやすく説明しよう。
あなたは自分ひとりで、自力で、手作業で、
そのご自慢のスマートフォンなりタブレットなりを作れますか?
まあ、できるわけがない。
ではどうやって作るのかを知っていますか?
充電ケーブル、カバー、液晶保護シートなど、
関連するものの全ての作り方を即答できますか?
用いられている合金は、
どのような物質をどのように配合するのかをご存知ですか?
それらの金属資源はどこの鉱山からどうやって採掘し、
どのようにして精錬するのかをご存知ですか?
それらを自力で買い集めて自宅まで運ぶ手段がありますか?
自宅で精錬することができますか?
それらを必要な大きさまで加工することができますか?
それらを加工するために必要な電力を自力で発電できますか?
加工に必要な機械類・道具類を自作できますか?
・・・・・・・・・まあ、そういうことだな。
現時点でさえ既に人類は、
自力で文明社会を維持できるとは到底いえないところまできている。
上記のようなことを一人でやりきれるアホなんか「絶対に」いない。
お互いに助け合って支えあって、
ある程度の過去の資産が既に用意されているから、
それを適切に用いて科学文明を維持しているだけだ。
災害で全てが失われたらどうするのか?
戦争で全てが奪われたらどうするのか?
そのときに使えるものは自分の体力と技術だけ。
マンパワーを軽視しすぎなんだよ、
IT教の信者サマは。
どこまでいっても機械を作る人間とAIを作る人間がいて、
発電する人間がいて電圧の安定に貢献する現場の労働者がいて、
初めてパソコンなりタブレットなりスマホなりが機能する。
先述のような諸条件を満たすための工具なり機械なりを、
作ってくれる人がいるから、
エンドユーザーである庶民がナンチャッテで作ろうと思える。
無数のマンパワーがなければ、ご自慢のITスキルなんてそもそも成立しない。
治安が悪いだけでスマホが盗まれるようになるからな。
スマホ自体もそうだし、スマホアプリもそうなんだけどさ。
何でもIT化して便利になるとしてもいいが、
それに依存してしまえば、
一度でも失ったらもう元には戻れなくなる、ってことだぞ?
スマホが故障した、壊れた、停電した、大規模自然災害が起きた、
たったそれだけの理由で、
電子マネーだのキャッシュレスだのは死ぬ。
ご自慢のスマホアプリ()も使えず、現金しか使えなくなる。
そのときになってからスマホ依存の恐怖に怯えても、
誰も救ってはくれない。
東日本大震災を見て何を学んだんだ、お前らは。
いやまあ僕はあんなもん見る前からずっと、
アナログとローテクを絶対に守らなきゃダメだという確信があるからこそ、
IT化だのAI万能論だのには反対し続ける所存なんだけどさ。
たとえばハイキングに出かけて転びました、
血がたくさん出ます、どうしよう?
こんなときは事前の備えと人力しか使えない。
僕は事故被害の後遺症で医者を諦めた元医学生だからこそ思うけど、
本当に困ったときって、自分の手足すら自由に使えないんだよ。
声をかけて励ますことしかできないけど、それで救える人だっているんだよ。
利便性を追求しすぎると、それを失ったときの無力さに絶望させられるだけで、
どうやって立ち向かえばいいのかがわからなくなる。
だから医者は今だって必ず、自分の手で何をすべきなのかを最優先に教わる。
解剖実習で死体に触れたことすらない医学生が、
電子書籍だけでタップリ勉強しさえすれば、
童貞のまま産婦人科医になれるとでも?
何でもIT化することで便利になるものがワンサカあるのは絶対に否定をしないが、
それが「アナログやローテクからの脱却」を意味するものであってはいけない。
紙の教科書をなくすとそれを貸し借りするのは容易ではなくなるし、
指紋認証や虹彩認証だと、事故で失った場合はどうしようもなくなる。
声紋認証だと声変わりや風邪には対応できない。
何でもIT化、何でも電子化、何でもスマホアプリ化ってのは本質が同じなんだ。
集約に伴う合理化には、
それを喪失することの恐怖が常につきまとう。
つい先日パソコンを工場出荷時に戻したばかりの僕でなくとも、おわかりいただけるだろう。
東京一極集中ガーという寝言は、
どこに首都機能を移転させようと分散させようと、
そこがやられたら終わりであることには変わりがない。
だから日本の25倍も広いアメリカでさえ、首都機能はワシントンDCに集約されている。
基本的に分散は愚策なんだ。
だから集約させ集中させる。
でもそれが壊れたらオシマイになるリスクは上がり続けるだけだ。
IT教信者やAI万能論者からは、
アナログやローテクに対する過剰な忌避や否定が含まれているようにしか見えない。
こういう懸念をちゃんと忘れずに提言しにくる人を見た記憶がないからな。
IT化しないのはバカだ、だから日本はITオンチなんだとほざいている。
いやいや、上記のようなことを考えたうえで、
お前はそのリスクに対処できる保証があるから、
紙の教科書をバカにして否定して今すぐ電子化しろとほざいてるんだろ?
小学生が転んだだけでタブレットなぞ一発で割れるけどな。
頑丈なケースに入れればいい?
お前はその頑丈なケースと素材の「作り方をググらずに即答できるのか?」
どこまでいっても全ての根底には人力がある。
でも、もはや個人単位で何かをやれる時代ではなくなりつつある。
しかも過去の遺産と電子機器に頼らずには生きられない。
だからこそIT技術制裁や半導体制裁で中国やロシアは困り果てている。
故障が少ない日本の中古車が、ロシアだとバカみたいな値段で売れてるそうだよw
そういう現実を見てもまだ、
何でもIT化、電子化こそが正義だと妄信できるのか?
人力でやれることを増やすための教育、ではなかったのかなと。
僕はそう言いたいわけだ。
それこそセキュリティだのリテラシーだのを教えろというなら、
まず電子媒体に必ず付随するリスクをこそ教えなきゃマズいだろう・・・
僕は紙媒体のリスクや欠点を否定していないのに、
お前らはすぐ紙媒体の欠点だけを列挙しにくるけど。
ちなみにIT化、電子化を筆頭とする過剰な合理化に対する反対意見として、
技術・家庭科の教育を未だに律儀に行っている日本と、
大半がそれらを割愛してしまった欧米とでは、
けっこう致命的な差が出ているのをご存知かな?
まあそれはいずれまた紹介するけれども、
日本のアニメ・漫画・ゲームがなぜ世界的に愛されているのかという、
広く深い話にも直接関与してくる、お金にも暮らしにも直結する大事な話ではあるのだよ。
ローテク、アナログ、人力の軽視は絶対にダメだ。
利便性を否定はしないが、軽視するのはもっとダメだ。
そういうお話でありましたとさ。