2027年に東京・名古屋間の開業を目指すリニア中央新幹線の駅やルート案が発表されました。8月の試験走行で時速505キロを記録したリニアは、東京と名古屋を約40分で結ぶとされ、現在の「のぞみ」の約1時間40分より1時間程度、短縮できることになります。また品川、名古屋のターミナル駅のほか、神奈川、山梨、長野、岐阜に中間駅が設置されます。

 このJR東海の一大事業はどのような経済効果をもたらすのでしょうか。また、リニアは地域活性化につながるのでしょうか。リニアの経済効果を試算した三菱UFJリサーチ&コンサルティングの加藤義人氏に聞きました。

「事業効果」と「施設効果」
――――リニアの全体的な経済効果はどれくらいと見ていますか?
 まず経済効果には「事業効果」と「施設効果」の2つがあります。

 「事業効果」は文字通り、2027年までのリニア建設工事にかかる効果で、沿線地域を中心に、主に建設業界で出てきます。建設投資額は約5.1兆円。それに伴う生産誘発効果はだいたい5兆円くらいと見ており、事業効果としては合わせて10兆円くらいになります。具体的にはリニア車両や線路、駅への投資のほか、生産誘発効果として建設業界以外にも、例えばコンクリートや鉄鋼の資材発注など他業種にも回ります。

 次に「施設効果」ですが、これは開業以降にリニアを利用することによって生まれる効果です。移動時間の短縮化などによってさまざまな活動が効率化され、例えばビジネスや観光など幅広い分野に波及します。利用することによる効果なので毎年、継続的に出てくるものもです。公共事業における費用対効果は、この施設効果のことを指していて、重要な数字です。

 施設効果は、われわれの試算では、固く見積もっても、50年間分の便益は約10.7兆円になると見ています。この額は大きな数字ですが、実際にはもっと大きくなるでしょう。

もっとも効果が出るのは東京
――――「施設効果」はどんな場所にも現れるのですか?
 「施設効果」が現れるには2つの条件があります。1つが、リニアによって時間短縮を享受できる地域。2つ目が産業集積が高い地域です。この2つを満たしていて、一番大きな効果が現れるのが東京です。次に愛知で、大阪も愛知と同じくらい便益が出ます。

 リニアは2027年には名古屋までしか開通しない予定ですが、大阪にも効果は出ると見ています。なぜなら名古屋での乗り換えで時間短縮を享受できるからです。ただ「品川―大阪」まで建設できた場合の施設効果は17兆円にのぼる見込みで(名古屋までなら10.7兆円)、一気に通した方が効果はより大きいものになります。

――――業種的にはどこがメリットを受けますか?
 生産額で見ると、東京の場合は金融とサービスが中心。愛知の場合は製造業、大阪の場合はサービスと製造業が同じぐらいでしょう。