結城市の歴史 近代結城のなりたち

引用 参考書籍 結城市史 第六巻 近代現代通史編 発行:結城市  編集:結城市史編さん委員会

P985

検査制度の整備(1)

国の重要無形文化財として指定されることによって結城紬は市場の注目

を集め、広範な需要を呼んで産地は活況を呈するようになったが、他面

では古来の伝統技術を軽視して粗製乱造に走る生産者も多くみられるよ

うになった。1958年(昭和33)12月繊維工業指導所長は本場結城紬

関係の各組合長に対し<最近消費地において事故品続出につき、これが

対策につき緊急に協議致したい>と通知して技術改善と製品検査の会議

を招集した。しかし、このような問題はその後もほとんど改善されず、

市況が活発化するたびに粗製乱造品が目立つようになった。たとえば

1960年(昭和35)12月、新聞は<ガチャ万、到来==粗悪品もでる

無形文化財結城つむぎ>として好況到来と粗製乱造の関係を次のように

報道した(a)。

(あ)重要無形文化財に指定され、県特産物の最右翼である結城つむぎは、

有史以来といわれる好景気ぶりを見せている。<織れば売れる>の言葉

のように、織る直後から製品は機屋、買継商、消費地問屋へ引き取られ、

在庫品などはほとんどない。このよく売れるということが、こんどは

つむぎ取扱い業者の増加をあおり、業者間の奪いあいからますます製品

不足をきたしている。値段は天井知らずで、昨年にくらべ五割も高値で

取引されている。消費地問屋筋では他の製品とくらべて<高すぎる>

という不平をいいながらも買いあさる、、、、、

(い)50年間つむぎを織ってきたという老婆は<たしかにことしの景気

は良かったねぇ。わたしの若いころにも一度だけこんな景気の年があった

が、めったにあるもんじゃない。家も改築したし、正月には孫達にどっさ

りお年玉をやりゃんすべ>とにこにこ顔だ。しかしこの好況がわざわい?

して粗製品が乱造され極度に品質が低下しつつある。そのうえ価格がばか

高いことから関西方面の問屋筋ではつむぎの取扱いを中止しようとの動き

もある。現在の好況を手放しで喜んではいられない。

 

 

(a)1960年12月18日付<読売新聞>

 

<検査制度の整備(1) おわり(2) につづく>