【トパーズ】

テーマ:
著者:村上龍

出版社:角川文庫

概要:
風俗嬢…。
高層ホテルの窓ガラスに裸の胸を押しつけ、トパーズの指輪を見つめ、大理石のロビーを彼女たちは行く。
そして、都市の光景を、サディズムとマゾヒズムの接点を行き交いながら感じる。
この瞬間にも東京と混じり、そして疾走する女たちを村上龍はとらえた。
衝撃のベストセラー、ついに文庫化。
(裏表紙より)



個人的評価:★★★☆☆

感想:



恐らく私は変態の部類に入るのだろうと思いますが、著者の村上龍さんには及びません。

悪い意味ではないです。別に良い意味でもありませんが。

なんというか、完全に頭がイッちゃってる。

SMスカトロに少しでも嫌悪感がある方は、読まないほうがいいでしょう。

グロ描写はグロいなと思ったけれど、エロ描写はあまりエロティックではなかった。

たぶんSMと言っても精神的なものより肉体的な描写が多いからだろうなぁ。



以前「限りなく透明に近いブルー」を読みましたが、それよりこちらの方が面白かったです。

どちらも同じようにショッキングな内容ではありますが、こちらの方がリアルです。(多少)



狂気を繊細に表現する部分もあると思うけれど、この方は女性不信か何かなのかな?と、ちょっと思ってしまった。

物語に登場する主人公のほとんどが、ブスでデブで知能が低くて誰からも虐げられているような女性ばかり。

その女性を虐める描写が多いので、女性侮蔑と感じる人がいることにも納得はできます。

私自身はそこまでは思いませんでしたが…。



病んでなきゃ描けない世界というか、変態にしか理解できない世界というか。

そういう印象を強烈に受けました。

私は嫌いじゃない分野なのですが、どこかイマイチ入り込めなかった。

というか、潜在的に「どこかに救いが欲しい」って気持ちを持ちながら読んでいたかもしれません。

少しでいいから、どこかに優しさや暖かみが欲しかった。

あまりにも、あんまりなんだもの…。



若い頃…もしくはほとんど小説を読んだことがない時期に初めてこの作品を読んでいたなら、たぶん感想も変わっていたことでしょう。

でも最初に花村蔓月を読んじゃったからなぁ。



敢えておかしな文体を使っているところは、個人的には面白かったです。

最初はだらだらと長く読みにくい文体だなぁと思った部分も、わざとそう書いているらしいですね。

読み終えた後に知りましたが。

こういう遊び心って本当に文才がある人じゃなきゃ悲惨なことになるけれど、その点に関しては「さすが」と言わざるを得ない。

嫌いな人は嫌いでしょうけれど。



余談ですが、他の方のレビューを見ていたら「理解できるかどうかは読み手の力量次第。わかる人にしかわからない」と書いている人がいて、恥ずかしい人だなぁと思いました。

【冷静と情熱のあいだ】

テーマ:

著者:江國香織

出版社:角川文庫

あらすじ:
穏やかな恋人と一緒に暮らす、静かで満ち足りた日々。
これが本当の私の姿なのだろうか。
誰もが羨む生活の中で、空いてしまった心の穴が埋まらない。
十年前のあの雨の日に、失ってしまった何よりも大事な人、順正。
熱く激しく思いをぶつけ合った私と彼は、誰よりも理解しあえたはずだった。
けれど今はこの想いすらも届かない…。
永遠に忘れられない恋を女性の視点から綴る、赤の物語。

個人的評価:★☆☆☆☆

感想:



「好き」の反対は「嫌い」ではなく、「無関心」だとよく言います。

しかし私の場合は「好き」と「嫌い」の他に「無関心」があって、大きく三つにカテゴリ分けされているような気がします。

無関心なものには、文字通り無関心。

でも、嫌いだと思ったものには感心が湧く。



私は何故それを嫌いだと思うのか?

本当に嫌いなのだろうか?

良いところを見ていないだけではないのか?

それでもやっぱり嫌いなら、どこがどんな風に嫌いなのだろう?



それが知りたくて、嫌いなものに対しては知る努力をしています。

たとえば読書に関しては、嫌いだと感じた作家の作品は、最低でも二冊は読むようにしています。

苦痛でない範囲内での話ではありますが…。

一つの作品を読んだだけで良さが分かることのほうが稀なのかもしれないし、私にはそれを見極めるだけの能力を備えていないので。



というわけで、江國小説二冊目です。

一冊目は何の作品だったか…どんな内容だったのか全く記憶に残らないほどに、私にとって何の感情ももたらさないものだったようです。

今回このベストセラーを選んで読んでみて、やはり私は彼女の作品は受け付けない体質なのだ、もはや生理的な問題だということが分かりました。

そして、ベストセラーと称される作品には何故こんなにもつまらないものが多いのだろうと、改めて痛感しました。

まぁ私の感性がオカシイか、価値観が幼稚なせいなのか、そこまでは自己分析しきれませんが。



途中で投げ出したくなりながらも、己に試練を課すように一応最後までは読みました。

でも最後まで読んだところで、時間の無駄だったとしか思えなかった…。

一体この小説の、何が面白いのだろう。

どこに感動すれば良いのだろう。



大まかなあらすじは、こうです。

「本の虫」とあだ名を付けられるほどに読書好きな主人公の女性は、週に三日ほどアンティークのジュエリー屋でパートをしている。

都合の悪いことが起きると風呂に入って現実逃避をする。

というか、四六時中風呂に入っている。

お金持ちな恋人は、そんな怠惰な彼女のすべてを受け入れた上で愛してくれ、美味しい食事や綺麗な洋服を与えてくれる。

けれど主人公の女には学生時代に付き合っていたという「忘れられない男」がおり、ひょんなことから彼女宛てに手紙が送られてくる。

二人は「三十路になったら○○に行こうね」と過去に約束し、そのときはまだお互いがずっと一緒にいると思い込んでいたが、月日は流れ、それぞれが別の生活をしている。

でも、その約束の日には二人とも約束の地に訪れ、お互いがお互いを未だに愛しており、再会を果たすことが出来た。



すいません、陳腐な少女漫画みたいなストーリーだとしか思えませんでした。

「忘れられない人がいる」と言ってしまえば美しく聞こえるかもしれないけれど、実は「忘れさせてくれるような魅力的な人がいない」だけのことなんじゃないのでしょうか。

過去を美化して思い出だけにすがりつく人は、現在が満たされていないだけではないのでしょうか。

ま、私の個人的な価値観ですが。



そもそも登場人物が全く魅力的じゃないように思えました。

本の上においては、多少ハチャメチャであったり変人であったり、仮に共感できる部分がない人物だったとしても、プロの文章力により読み手を惹きつけることは充分可能だと思うのですが…。

少なくとも私にはそれが無かったです。全く。



私から見た主人公の女性は、なんだかセレブを気取る根性のひんまがったメンドクサイ根暗な女…としか思えなくて。

いるよね、こういう付き合いにくい人…と思って通り過ぎていく程度の存在というか。

そういう人の日常や恋愛にそれほど興味は持てないし、本当に読むのが苦痛に感じました。



アマゾンなどのレビューを見ると、絶賛する人たちと酷評を下す人たちにキッパリ分かれています。

私は酷評する人側の意見にほぼ同意で、恋愛小説大好きな女性はどうぞ、という感じです。

オススメはしませんが。

冷静と情熱のあいだ―Rosso (角川文庫)/江國 香織

著者:ダニエル・キイス


出版社:ダニエル・キイス文庫


あらすじ:

チャーリィは陽気な32歳。生まれながらの知的障害者だ。パン屋で働き、夜学に通う。そんな彼に「頭をよくしてあげよう」と科学者からの突然の申し出があった。未知の、危険な実験の被験者になるのだ。しかし、チャーリィは喜んで手術のため入院する。同じ実験を、白ネズミのアルジャーノンも受けていた。やがてIQが185にまで高まり、超天才となったチャーリィは自我が強まり、知識欲も旺盛になり、人々を驚かす。だが、驚くべき天才ネズミとなったアルジャーノンは、急速に知能が後退していく。はたして、チャーリィは?―SFの傑作であると共に、読者を深い感動に包み込む不朽の長編小説。

(アマゾンより引用)


個人的評価:★★★★★


感想:


私の場合は、同作品がドラマ化されたときにテレビで見たのがキッカケで、この作品を知りました。


テレビドラマはほとんど見ないのですが、作品の内容に興味を持ち、当時ファンだったユースケ・サンタマリアが

主演ということで、毎週楽しみに見ていました。

後で知ったのですが、このドラマはかなり優れた作品にも関わらず、視聴率はあまり奮わなかったようで…

びっくりです。

内容も脚本もキャスティングも、個人的には素晴らしいドラマだったと思うんだけどな。

(ただし、見ていた人たちの評価は高いようですが)


それから数年を経て、やっと原作を読みました。

というかコレってSFなんですね。

あらすじを読んで初めて気が付いた私は一体…。

SF小説というものを一度も読んだことがないので、じゃあ人生初のSF小説ということなのでしょうか。


それはともかく、「全世界が涙した」とか「感動の渦」とか、そういった形容詞をこの作品に結びつけるのは

ちょっと違うような気がすすのは私だけでしょうか?

確かに感動はしましたが、「泣ける作品」とカテゴリされることには激しく違和感を覚えます。

私はなかなかの涙もろさでありますが、泣きはしませんでした。

「泣く」というよりも、「胸がしめつけられる」という状態が続きっぱなしな感じです。

あまりにも切なくて、苦しくて、痛すぎて悲しくもなりました。



レビューを拝見すると多くの方が絶賛されていて、その感想に私も共感するところが多かったのですが

「差別小説だ」との酷評もありました。

どんな名作にも★5つが並ぶような作品には必ず★1つというような極端な酷評をつける人がいるものですけれど

その方の意見は、単に難癖をつけているだけというものではなく、確かに一理あるな…と思わせるレビューでした。


以下、引用です↓(って引用していいのか知らんが…)



>その差別があまりにも完璧なので、読者のみならずおそらくは作者もそのことに気づいていない。この作品に    涙する読者は、自分が属している差別空間に疑問すら抱いていない。
 差別というのはむろん精神薄弱者に対する差別である。
 キイスはこう言いたいのだろう。人間の幸不幸は頭のよしあしで決まるものではないのだと。読者も「そうだそうだ」とうなずいて涙しているのだろう。しかし「そうだそうだ」とうなずいているのは、うなずくことができるのは、少なくともこの作品を読める程度の知能指数を持っている読者だけである。主役である精神薄弱者たちははじめから客席からは排除されている。
 主人公チャーリィ・ゴードンの手記という形式で進行する本書のクライマックスは、チャーリィの頭脳が再び崩壊し支離滅裂な文章を書き始めるそのエンディングにあるだろう。読者はそれを読んで涙する。おそらくは哀れんで。どうしてそれが差別ではないのか。読者も著者も知性の高みから精神薄弱者の哀れを見下ろし、涙している自分に満足して彼らに背を向ける。それは背筋が冷たくなるほど残酷な光景だが、上にいる者はそのことに気づかず、下にいる者にはその光景が見えない。


正直私は、「なかなか鋭いなぁ…」と感心してしまいました。

私自身が、そのような感覚が一切なかったと言い切れるだろうか?

当然のように自分が健常者という前提で、この物語を読んでいたのではないか?

そう考えると、否定できない部分もあるのです。

勿論それは潜在的な意識の部分なのでしょうけれど…。


ま、とにかく、こんなふうに読後に色々な見方や考え方や感情を与えてくれる作品こそ私は名作だと思うので、

私にとっては間違いなく名作と言えますが。

このお話を読んで感動する(泣く)ポイントって人それぞれ違うと思うんだけど、

私は主人公チャーリイが抱く葛藤とか不安とか、そういう部分にとても共感できて胸が震えました。

「自分が何ものであるか」分からずに彷徨っているところが特に共感できました。




みなさんもおっしゃるように、最初の部分(知能指数が低い時期)の文体を読むのは大変苦痛で、

何度も挫折しかけましたが、最後まで読んで本当に良かったと思えます。

なんというか、これも必要悪(?)なわけで…。

その後はほとんど一気に読みました。

翻訳の方が相当優秀なのだろうなぁと思いながら、読みました。


ラストは秀逸です。

こういう鳥肌が立つような終わり方は、なかなかありません。


アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)/ダニエル キイス

【天才になる瞬間】

テーマ:
著者:齋藤孝

出版社:青春出版社

概要:ブレイクスルーは誰にでもやってくる。
突き抜けるための極意を、過去の天才たちから学ぶ。

個人的評価:★★★★☆

個人的感想:



読みやすくて、面白かったです。

満点でも良いくらいだったのですが、どうしてもこのタイトルはどうよ…と思ってしまうので。



この本に限らず、タイトルで損をしている書籍や映画(特に海外作品の邦題)って、たくさんあります。

内容は良いのに、タイトルがわざとらしかったり、なんとなくアヤシイ感じがしたり…。

もったいないです。

私自身も、「齋藤教授の本を読んでみたい」と思わなかったら、絶対に手に取らなかったことでしょう。



いわゆる自己啓発系の本は個人的にはあまり好きじゃないのですが、この本も自己啓発系に属するとするならば、表現の仕方や言葉遣いがかなりソフトタッチだと思います。

まぁ世界の偉人たちの「天才と呼ばれる由縁」を紹介しているような感じなので、自己啓発とは少し違うのでしょうけれど…。



歴史に名を残した偉人たちの生い立ちや、生き方(というか性格や習慣という感じかな?)が、わかりやすく分析されていて、とても興味深かったです。

自分が天才になりたいとは思わなくとも、天才と呼ばれた人たちの軌跡を辿るということは、そこから学ぶべきことや見習うべきことがたくさんあるります。

そういう意味で、無知な私は興味深く読むことができました。

齋藤教授くらい博識な方ならば、必要ない情報かもしれませんが。



私は、内容そのものよりも齋藤教授の書くモノに興味を持ってこの本を読んだので、今から書く感想はちょっと違う視点になるかもしれません。

この方の、あらゆる分野に好奇心旺盛で、知識も豊富で頭の回転も速いのに、偉ぶらず穏やかで、誰にでもフレンドリーな雰囲気が好きです。

好きというよりも、社会人としての私の理想に近いというか、自分自身が持っている正反対の性質(人見知り、キャパシティが狭い、追求性のなさ、初対面の人に近寄りにくい印象を与える)を打破したい気持ちがあるので、テレビ等でも研究しながら見ています。

特に見習うべき点としては、自分の意志を明確に伝えながらも、それを他者に押し付けたり威圧的に言い切ったりしないところが挙げられます。

なんでも肯定するばかりの、言い換えれば自分の考えがなく流されやすい人にはなりたくないけれど、いつも上から目線で批判しかないような人には、もっとなりたくない。

けれど、その案配というかバランスというか表現方法というか…それを上手に伝えることは難しいものです。



学ぶべきものがある人ならば、相手がどんな人であれ、それを吸収して自分のモノにできれば理想だと思います。

だから、歴史に名を残すような人物の背景を垣間見るのは面白いし、為になる。

「事実は小説より奇なり」という言葉通り、そういう人の自叙伝を読むだけで色々なことを感じられますし。



ポジティブで無駄を嫌う著者の性格も手伝って、読み終えた後にはやる気やテンション・モチベーションを上げるのに役立つのではないでしょうか。



最後に、あとがきにこんなことが書いてありました。



「私は、「勝ち組・負け組」という言葉が嫌いだ。
勝負事は好きだし、スポーツのように勝ち負けがはっきりするものも大好きだ。
しかし、この言葉にまとわりつく下品さには耐えられない。
いつから日本は、こんな下品な言葉を平気で使うようになってしまったのだろうか。」



個人的には、このあとがきが一番よかったかも…。
天才になる瞬間―自分の中の未知能力をスパークさせる方法 (青春文庫)/斎藤 孝

【博士の愛した数式】

テーマ:

著者:小川洋子

出版社:新潮社

あらすじ:
「ぼくの記憶は80分しかもたない」
博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた。
記憶力を失った博士にとっては、私は常に“新しい”家政婦。
博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。
数字が博士の言葉だった。
やがて私の10才の息子が加わり、ぎこちない日々はやがて驚きと喜びに満ちたものに変わった。
あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。
第1回本屋大賞受賞。
(アマゾンより引用)

個人的評価:★★★★☆

感想:


読んで良かったです。

とても優しいお話です。

小説はほとんど読まないのですが、内容が気になって購入しました。

私はどちらかというと文系タイプというか、まぁ早い話が数学や物理の難しい話はチンプンカンプンなわけですが、そんな私でも読みやすい本でした。



何より、主人公も博士もルートくんも素直に好感が持てる。

真っ直ぐさとか、ひたむきさとか、純粋さとか、そーゆー人柄をわざとらしくなく偽善的でなく描かれているのが素晴らしいと思いました。

さすがプロだよなぁ。

文章が上手な人は世の中にたくさんいると思いますが、素人とプロの差ってこーゆーところに出るんじゃないかなぁと。



数学やプロ野球好きな方の中には色々と反論もあるみたいですが、私はどちらも不得意分野なので、何の矛盾も感じず楽しく読むことができました。



まぁ強いて言えば、ものすごい個人的趣向ですけれども、ラストがもっと悲しいか、もしくはこれ以上ないくらいハッピーエンドだったら完璧だったなぁ。

生涯忘れない作品になったかもしれない。



でも、人の優しさや素朴さって大事だなと思える良作でしたよ。

自分もそーゆーふうに生きられればいいなと。

素直にそう思わせてくれる本には感謝したくなるし、それこそが私の読書の醍醐味です。


博士の愛した数式 (新潮文庫)/小川 洋子