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次の記事が、メジャーなサイトでアップされました。

「糖質制限」論争に幕?一流医学誌に衝撃論文~ 「炭水化物は危険、脂質は安全」の波紋

  

元となった論文は、業界でも超有名な「Lancet」から発信されたので、糖質制限推奨者の方々は大喜びされ、それ以外の方々もビックリされた事でしょう。

  

元となった論文は下のサイトです。英文で13ページあります。

Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study

  

さてこのLancetの論文ですが・・・

  

  

実は、当たり前すぎる内容であって、あまり大した論文ではありません!!

  

・・・などど、偉そうに書いてしまいました。

もちろん私自身、一流業界紙Lancetに採用されるような研究も実力も持ち合わせておりません。

ですが、原著論文をじっくりと読んでみると、やはり当然の内容なのです。これから、具体的に説明していきます。

  

  

#対象年齢・期間

2003年1月1日の時点で35~70歳の13万5335例を登録し、2013年3月31日まで中央値で7.4年間の追跡調査しています。

  

#対象国:18か国

・高所得国:カナダ、スウェーデン、UAE

・中所得国:アルゼンチン、ブラジル、チリ、中国、コロンビア、イラン、マレーシア、パレスチナ、ポーランド、南アフリカ、トルコ

・低所得国:バングラデシュ、インド、パキスタン、ジンバブエ

  

  

ここで、一旦論文を離れます。国別のお米消費量についてです。

次のサイトから写真をアップしました。

お米を食べる国ベスト10!日本の米消費は50年で4割減少

  

ここには、今回の調査対象となった国が出てきます。

・バングラデシュ:第1位

・中国:第17位

・インド:第22位

  

  

ちなみに、日本は意外にも第50位でした。バングラデシュの人たちは、日本人の4倍もお米を食べる事となります。

ただし、国によって最新の発表年度が違うでしょうから、調査年度によって順位に多少の変動があると思われます。

  

尚、ご飯茶碗1杯に軽く盛ると、150g程度です。

よって日本の「119g」というのは、少な過ぎる結果だと思います。パン食の人が増えた結果、平均するとこのような結果になったのかもしれません。

このサイトには集計方法までは書かれていないので、あくまで各国の比較の参考としましょう。

  

  

では再び、Lancetの論文と冒頭の記事に戻ります。

  

冒頭の記事の医師は糖質制限推奨派で超有名ですが、記事ではこの論文から次の結果を示しております。

  

  

では上の①について、原文を確認します。

原文の6ページに次の表があります。一部拡大しました。

  

尚、この先も原文から抜粋するので、英語が多数出てきますが、その都度解説します。

  

  

「quintile=5分位」すなわちグループの中間値という意味ですが、「carbohydrate=炭水化物」の摂取量別に、quintile(以下Q)で5つにグループに分類しています。

  

Q1:46.4%  (42.6~49.0)

Q2:54.6%(52.9~56.2)

Q3:60.8%(59.3~62.3)

Q4:67.7%(65.7~69.7)

Q5:77.2%(74.4~80.7)

  

そしてそれぞれの「Total mortality=死亡率」は(中間値のみ)・・・

Q1:4.1

Q2:4.2

Q3:4.5

Q4:4.9

Q5:7.2

  

ちなみに、国が推奨する炭水化物摂取量は60%程度です。これは今回の論文の「Q3」に入ります。

また、糖尿病学会が定める炭水化物摂取量の下限は50%です。つまり糖尿病患者さんは「Q2」に入ります。

  

そしてもう1度「Q1」をご覧ください。

Q1:46.4%(42.6~49.0)・・・これってマイルドな糖質制限です。

つまり冒頭の医師は、糖質制限を強く推奨する事で有名ですが・・・

  

今回の論文は、極端な糖質制限に関しては対象外の内容です!!!

  

▲PFCバランス・・・今回の「Q3」に属する

  

  

続いて、冒頭の医師の記事から抜粋します。

  

  

これに関しては、原文でも次のような記述があります。

7ページの左側上から7行目から拡大しました。

  

  

「Q5 vs Q1」・・・つまりこの論文の主旨は、Q5とQ1を比較する事が目的です。

糖質制限が良いというのではなく、過剰な糖質摂取がいけないと言っているのです。

  

確かに原文の著者らも、炭水化物摂取量が60%超える事には注意を促しています。

これは9ページ上から7行目に、次のような記述があります。

  

  

ですが、論文では、冒頭の糖質制限推奨者医師のように、炭水化物摂取量が60%以上、つまりQ3も含めてで死亡率が上がるとは、全く書かれておりません。

  

具体的に説明します。論文では、Q5とQ1の比較だけでなく、他のグループとも比較しております。

6ページと9ページの表から一部拡大しました。

  

  

  

明らかに有意差つまり死亡率に違いが明白だったのは、「Q5:Q1」と「Q4:Q1」でした。

Q2とQ3のグループでは有意差はない、つまり死亡率に大きな違いはありませんでした。

  

著者らも指摘しているように、60%を超える炭水化物摂取群の人は、控えめにした方がいいでしょうね。

  

↓再び冒頭の記事から。

  

冒頭の医師が挙げている②④も同じ事が言えます。つまり、「①糖質過多」と「②④脂質減少」は同じ意味です。

こちらも論文で比較されて、炭水化物摂取量と同様の結果が判明していますが、説明を省きます。

  

まとめますが・・・

  

Q3:標準的な炭水化物摂取量

Q2:日本糖尿病学会が推奨する糖尿病患者の炭水化物摂取量

・・・これらを、この論文では否定しておりません。

  

冒頭の医師は、本当に原著論文を読まれたのでしょうか?

読まれたとしても記事の内容が、あまりにも都合よく拡大解釈し過ぎです。確かに統計学は結構難しく、理解できなかった所があったかもしれません(実は私も統計学は苦手ですが(#^.^#))

  

それにしても糖質制限を推奨する人の多くは、今まで論文などをほとんど無視して、マイナス要因に出来るだけ触れない発信ばかりだったのに、自分たちにとって都合の良いたった1つの論文が出た途端、はしゃぎまわるんですから・・・。

  

  

さて今回のLancetの論文は、発展途上国も含まれています。

そもそも、炭水化物80%で、脂質が20%にも満たない食事・・・毎日そのような食事をする事ができますか?。

  

ちなみに、日本人の脂質摂取量は、上の「PFCバランス」で示したように25~30%程度です。また北米・北欧では30~40%程度です。

炭水化物摂取量第1位のバングラデシュのような食事を、先進国の人々からすると想像もできません。

  

それと今回のLancetの論文に出てこない事が2つあります。論文では、出来るだけ条件を統一して結果を導いていますが、どうしても統一できない要因があります。

それは「医療水準」です。発展途上国の医療水準は、当然落ちます。先進国と発展途上国の人たちを一緒にした医療関連論文は難しいのではないでしょうか?

  

↓再度冒頭の記事から。

  

それと、あと1つ残りましたが、③について。

これはこの論文以前から、脂質と心血管イベント、死亡とは関連ないことが既に報告されていますので、その研究結果の追試に過ぎません。

  

短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸のように炭素の数によって脂質の動脈硬化への影響が異なる事が知られており、飽和脂肪酸、オメガ3、オメガ6、不飽和脂肪酸などという分類は、大雑把すぎると思います。

  

  

冒頭の医師は、記事で次のような事も述べています。

  

  ↓

確かにコレステロールの8割は、肝臓で作られるので、コレステロールの摂取基準は日本でも撤廃されました。

  

だからと言って、いくらでもコレステロールが多いものを食べても良いわけではありません!!

  

どんな飲食物にも言える事ですが、食べ過ぎ・飲み過ぎになると、今度はその飲食物のマイナス要因まで摂り入れる事となります。

飽和脂肪酸摂取と循環器疾患発症の関連について

  

特に加熱調理をすると、どうしても「AGEs(終末糖化産物)」を摂り入れる事になります。「AGEs」が蓄積すると、人間の60兆個の細胞が老化し、様々な病気の原因になるからです。

飲食物でマイナス要因がないものなど、1つもありません。

  

  

Lancetの論文に出てこなかった事、その2.

個人的な考えではありますが、今回のLancetの論文は、三大栄養素だけで考えている事がナンセンスだと思います(またまた偉そうに、申し訳ありません)。

  

食事と死亡率を考察する場合、三大栄養素だけでなく、ビタミン、ミネラルを含めた五大栄養素と更に食物繊維の摂取も考慮に入れるべきです。

  

現代人は明らかに、ビタミン、ミネラル、食物繊維が不足しています。

これらの3つを十分に摂り入れる事が出来るならば、PFCバランスが多少乱れても、死亡率に大きな変動はないと思います・・・繰り返しますが、あくまで私個人の考察です。

残念ながら、Lancetの論文も、冒頭の医師の記事もそれらに関して全く考慮されていません。

  

  

例えば、心血管イベントならば、摂った脂質量ではなく、日本ではリンの過剰が最も影響が大きいと思います。

そして、リンとカルシウムの比率が、リンが多すぎるためにカルシウムが相対的に少なくなってしまうという現象を起こしています。

また、リン:カルシウム:マグネシウムの比率も大切ですから、マグネシウム不足も深刻な問題になっています。糖尿病の場合の多くはマグネシウム不足が関係していると思われます。

  

私としては、Lancetよりも次の論文の方がお勧めです。

Dietary magnesium intake and risk of incident coronary heart disease in men: A prospective cohort study

  

この論文は、「糖尿病ネットワーク」のサイトでも、日本語で解説があります。

マグネシウムの多い食品が心筋梗塞のリスクを低下 8.5万人を調査

  

▲マグネシウムの多い食品

  

  

結果だけ書きます。

  

・男性では、食事からのマグネシウム摂取量がもっと少ないグループに比べ、もっとも多いグループで、虚血性心疾患の発症リスクが34%低いという結果になりました。
・女性では、摂取量が一番少ない群に比べ、摂取量が中間の群で有意差がみられ、虚血性心疾患の発症リスクが39%低いという結果になりました。

  

やはりマグネシウム、そしてカルシウム、食物繊維を多い食品を摂る事をお勧めします。

  

▲食物繊維が多い食品

  

  

人はどうしても、自分にとって都合が良いものを求めたがる傾向にあります。

そして残念ながら、自分にとって都合良く解釈したり、過剰評価する事も珍しくありません。

  

今回のLancetの論文のように、たった1つの研究だけで結果が出たような浅はかなはしゃぎ方はやめるべきです。

どんな分野でもそうですが、自分たちにとって都合が良い事と悪い事、両方の立場から考慮し、正しい道を選択すべきと私は思います。

  

また医学論文に出たものが、全てまっとうな内容とは限りません。

ここまで来ると一般人には難しいので、それをわかりやすくかつ公平に解説するのも、医師の役目だと思っています。

  

(画像はネットより拝借)

  

  

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