「世界にはきみ以外には誰も歩むことのできない唯一の道がある。その道はどこに行き着くのか、と問うてはならない、ひたすら進め。」(ニーチェ)

 

 

 

ルイ・バシュリエ

 

 

[α]

今日は株式市場が波乱、日経平均4451円安と大幅下落。

値下がり幅は過去最大ということですが、どうせ下げ率は大したことないんじゃないかと調べてみると値下がり率でも過去2番目、これは大暴落でしたね。

個人的には長年待ち望んでいたバブル崩壊の始まりかとも思います。

 

コロナ禍のもとで日本、アメリカを初め世界的に国債発行によるばら撒き経済が行われました。

日本などはアベノミクスの金融緩和から続いての国債発行などによる紙幣の増刷、これら世界的規模での過剰資本の供給が今回の株式市場暴落の真因でしょう。

 

マルクスの「資本論」にもあるように、紙幣増刷というのはある意味容易で、いくらでも紙幣供給量を増やすことは出来る。

しかし問題なのはいったん流通過程に投げ込まれた紙幣は、そこから先は厳然たる紙幣流通の法則に従わなければならないという点。

要するに、必要以上に発行された紙幣はインフレやら金融崩壊やらの反作用をもたらさざるを得ない。

 

今回の事態はコロナ禍以降の過剰な資本供給の反作用が本格化してきたということの証かと思われます。

 

[β]

しかしそれにしては今回はまだ世の中ゆとりある印象です。

1990年のバブル崩壊の時のような切迫感が今のところない。

そのせいかネット上でも余裕あるコメントが目に付きます。

特に多く目について面白いのが、やたら上から目線のコメントですね。

 

「今年からNISAを始めた人は不安でしょうがここは冷静に」とか「株式相場に下げはつきもの、落ち着いて、ここは安く仕込むチャンスです」とか。

そもそも株価の底など事前に誰もわかりません。

 

2000年のITバブル崩壊時、私はナスダックや香港市場の大手企業に投資してましたが持ち株は高値から30分の1になり、もはや手の打ちようもなくお手上げで人生ひっくり返り、今日に至るわけですが、そんな私から見ると、上から目線でのアドバイスじみたコメントみると片腹痛しというところです。

 

私個人的には今日の株式市場の暴落は今後長く続くバブル崩壊過程の序章に過ぎないと思っています。

 

[γ]

ところで今回の事態で思い出されるのは数学者ルイ・バシュリエ(1870~1946)のことですね。

アインシュタインと同時代を生きた不遇の数学者ですが、このバシュリエが1900年に著した「投機の理論」という著作。

 

私も原書は読んでないのですが、その中でバシュリエは数学を使って株価の予測の不可能性を論じたとか。

株価予測が不可能ということは、投資家にとって「投資の期待値はゼロ」という命題が提起されていると言います。

 

この“期待値ゼロ”という命題は重いです。

 

要するに株式投資で儲けることは原理的に不可能ということです。

運が良ければ儲かる、運が悪ければ損するという単純な結論が数学的に論証されているわけでしょう。

市場の混乱を一歩下がって遠くから冷静に見れば、収益の期待値ゼロの世界を巡っての虚しい騒ぎとも言えます。

 

ここで思い起こされるのは昭和の時代の相場師是川銀蔵です。

1983年には高額納税者のトップとなり日本一の金持ちみたいに言われたのに、私の記憶に間違いなければ、バブル崩壊でやられ死んだ時には確か膨大な借金を残している。

日本一相場で儲けた人間でも最後はマイナスになっている、まさに“期待値ゼロ”の具体的例でしょうか。