消費税の増税で正社員のリストラが激増する!? ~その3~ |   「生きる権利、生きる自由、いのち」が危ない!

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徳冨蘆花「謀叛論」を再発見してたら、
「ソクラテスの弁明」が、なぜ好きなのか、最近になって納得し始めた今日この頃です。

今回こそ、消費税(=付加価値税)の増税が、なぜ正社員のリストラの増加(非正規雇用の増加)と関係しているのか、触れていたのですが、肝心の新聞記事を引用しないまま、失礼ながら終えてしまいました。前々回のブログ記事で引用した部分の再掲となりますが、朝日新聞2000年11月3日付け朝刊「時時刻刻」(執筆者:くらし編集部 西前輝夫)を、さっそく以下に一部引用させていただきます。


”消費税が正社員のリストラを進め、派遣社員を増やすことに一役買っている、との見方が広がっている。企業が正社員を派遣社員に切り替えるのは、人件費削減が最大の理由だが、納める消費税も少なくてすむからだ。
(引用者中略)経団連が、二年後から消費税を一〇%以上に引き上げる構想を示すなど、増税論議は次第に本格化してきているが、税率を上げればリストラが一段と進む可能性も否定できない

(二〇〇〇年当時、売上高数十億円で、都内にある情報サービス会社の社長は、三十数人の派遣社員を雇っていて、そうした中での社長の証言。)
「新しい機械の導入で、高い給与の技術者を正社員としてしばりつけておく必要がなくなった。派遣社員だと消費税が減ることも意識した
派遣社員への切り替えで、人件費が減った。そのうえ、消費税の納付額も六、七百万円減らせた という。中略)
 
 その[派遣社員の使用が、消費税納付の節約になる]仕組みはこうだ。

 会社や個人事業者は、売り上げ分の消費税から仕入れにかかった消費税を差し引いた分を税務署に納めなければならない[この仕組みを「仕入れ税額控除」と言います]。その際、正社員の給与や退職金、社会保険料などは[仕入れの対象とならず、仕入れにかかった物として、消費税の課税対象として]だめだが、[正社員に対して他方の]派遣会社に払う派遣社員の報酬の消費税は控除される
 正社員の給与などは消費税の課税対象外なのに対して派遣社員の報酬には消費税がかかり
控除できる仕入れとみなされるため

 この結果、課税対象となる売り上げや従業員数が同じなら、正社員だけの場合より派遣社員がいるほうが控除額が増える
派遣社員の報酬全体の消費税税率(五%)分だけ
納付額が減ることになる
。”
 
※ ()、[]での補足は、高樹によるものです。

 たとえば、先のような情報サービス会社が、その会社が提供するサービスを買ってくれるお客さんに、情報(サービス)を売って、年間十億円の売り上げを上げたとします。お客さんには、その会社のサービスとは別に、消費税(5%)分の金額も請求されていて、お客さんは、そのサービスの他に、消費税分の金額も、その会社に支払っています。
 お客さんが支払った消費税分の金額は、その会社が預かっていて、その会社が、お客さんの代わりに税務署に納めることになっています。
 その事から、その会社が提供したサービスで、年間に10億円の売り上げを上げたら、その売り上げに掛かる消費税(=その会社が税務署に納めなければならない消費税)の金額は、10億円の5%(消費税率5%の場合)である5000万円を、納めなければなりません。
 そして、その会社が、従業員の方に支払う人件費の年間総額が、1億円だとしましょう。
 その会社の従業員が、みな正社員だとしたら、従業員に対して支払う給料に、消費税は発生してきません。
 しかし、その従業員を、ぜんぶ派遣社員にしたとすれば、
その派遣社員という従業員に対して支払う経費には、
派遣社員という従業員を、派遣会社から仕入れた」形となるために、商売をするのに仕入れる商材と同じ扱いで、そこには”消費税が発生する”のでした。
 その事から、正社員雇用に年間1億円の人件費をかけていたものに、
 今度は年間1億円の人件費を、派遣社員にかけたとすると、派遣会社から”仕入れ”、派遣社員に支払った報酬総額1億円の、その消費税率5%分の500万円の金額を、(「仕入れ税額控除」の手続きが通れば、)その会社は、(正社員を使っている状態と違って、)税務署に納めなくて済むことになります。
 
 「新しい機械の導入で(新しい機械の<導入=仕入れ>にも、消費税が発生します)」という言葉が出てきましたが、この社長の立場になって、想像してみましょう。
 国内や国外のライバル企業との競争で、 「新しい機械の導入」で、技術的に遅れることはできません。
 また、ライバル企業と、技術面で遅れを取らないように、新しい技術を更新しつつも、 客離れしないような値段の「コスト・パフォーマンス」を維持しなければなりません。
 新機械の導入で、銀行から「カネを借りる」必要が出てくるかもしれません。
 となれば、借りたおカネは勿論、その利子や手数料も払わなくてはならなくなります。
 
いまの消費税の制度のままならば、消費税が10%になれば、価格競争に拍車がかかり経費削減のための派遣社員の使用という魔の手手を出す経営者がまた増加せざるを得なくなるのではないでしょうか
斎藤貴男『消費税増税で日本崩壊』の第1章「消費増税でサラリーマンの生活は破壊される!」には、責任感ある経営者が、これまで正社員として雇ってきた従業員の給与水準や経営を維持し、そして、あくまでも、それまでの従業員を雇い続けるために、それまで雇ってきた従業員の社員を、あらためて”派遣会社から派遣してもらう派遣社員”にしている事が、書かれています。
なぜ使う従業員の顔ぶれは同じで、支給する給料も変わっておらず、人件費削減が目的でもないのに、従業員を、正社員から”派遣社員”に、その経営者は変えたのか、その理由は、いま見てきた仕組みに、その答えがあります

悲しいかな、その経営者は、消費税の納税を強要されて、その消費税を納めるためだけに、生命保険が下りるために自殺したようです。

消費税増税は「正社員のリストラ」を増加させる、という事は、派遣社員など非正規雇用者の正規社員への採用の道がさらに厳しく閉ざされてしまう事をも意味します。

消費税の増税で、いったい誰が喜ぶのでしょうか。

(つづく)
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「菅氏とは首から上の質が違う」 経団連会長、野田新代表を手放しで歓迎
(産経biz 2011年8月29日)
http://www.sankeibiz.jp/business/news/110829/bsg1108291943001-n1.htm

経団連の米倉弘昌会長は29日、民主党の新代表に野田佳彦財務相が選出されたことについて、「お若いのでもう少し待たなくてはと思っていた。ジャパンドリームの実現だ」と手放しで歓迎し、「民主党の先生方は最終的に非常にいい結論を出された」と評価した。

 米倉会長は野田代表について「かねてから税制・社会保障に通じた非常に安定した行動力のある政治リーダーだと思っていた」と明かした。菅直人前代表との違いを聞かれ、「要するに首から上の質が違う」と言及、野田氏はきちんと政策を立案し、野党とも協議していける人物との見方を強調した。

 ねじれ国会の下での政策運営について、米倉会長は「大連立でも緩やかな協調でも、どんな形でもいいから挙国一致体制で望んでもらいたい」と注文。野田代表に「1年以上、最終的には次の選挙まで務めきってほしい」と要望した。

 個別政策では「まずは早期の震災復興だ。できる限り本年度予算の組み替えをやり、不足する場合には期限を区切って復興国債を発行し、財源には経済的なインパクトがニュートラルな消費税を使ってやっていくべきだ」と語った。