先日四十九日を無事に終えました。
受け入れつつありますが、いまだに悲しみから抜け出せずにいます。
普段はいつもどおりに過ごしていますが、時間がたつにつれあの日のこと、母のことを思い出すことがつらくなってきました。
あの日。
朝出勤準備が整いそろそろ出勤しようと思っていた8時ごろに姉から電話がきました。
「看護師さんから脈が遅いから家族に連絡するように言われた。」
姉はそう言いました。
どんな様子か聞きましたが、電話ではよくわからず・・・
その日、私は朝から23時までの勤務予定だったのでなるべくなら出勤したいと思いましたが、とりあえずどんな状況か病院へ確認しに行き状況によっては仕事に出ようと思いました。
そんなことを考えながら病院へ行くと母にはモニターがつけられていました。
母はうつろな表情で呼吸荒く肩で息をしていました。
そばに近寄り話しかけて手を取りましたが、苦しいらしく手を払いのけて何かうなっていました。
私がわかっているのかわかっていないのか・・・
苦しくてそれどころじゃないという感じ・・・
姉からおしっこが前日からほとんど出ていないような気がすると言われ、ハルンバックを見るとほんとに少ししか出ていませんでした。
看護師さんから自動血圧計で血圧が測定できない状況であることを聞かされました。
この状況ではなんとなく今日か明日のような感じがしました。
前日まで姉と喧嘩するくらい元気だったのに・・・
信じられないけど、これが現実なんだと自分に言い聞かせる。
今日の担当の看護師さんは母の好きな看護師さんだったのでちょっとよかった。
彼女は「痛みがあればモルヒネの早送りもするけど、呼吸が止まるかもしれないのであまり使いませんね。」と私と姉に伝えてきました。
痰が少しからんでいるようにも聞こえてサクションするか聞かれましたが、それほどひどくもないことと、サクションは本人が望んでいないことを伝えて様子を見ることにしました。
この日は父が付き添う予定だったので来る予定ではありましたが、姉が電話をして早めに来るように伝えていました。
車と電車を使って2時間の場所なので、すぐ来て欲しいと言ってもなかなか来れない上に状況把握が難しい父なので何時に来るのか姉も私も心配していました。
そして、姉のいない間に若い医師が病室へ来て母を診察した後、私を廊下へ呼び出して血圧が低く危ない状況なので家族を呼ぶように言いました。
あの・・・呼ばれて私来たんですが・・・・・・・
父にももう連絡はいってますが・・・
そう伝えると父が来たら医師からの説明があるので教えてくださいと言われました。
なんとなく変な感じ・・・
父待ちの間に年配の医師軍団も診察にベッドサイドへ来ました。
中心人物っぽい医師が母の聞こえない左耳元で「苦しくないですか?」とささやいている・・・
左耳に話しかけようとしていた医師に姉は「そっちの耳は・・・あの・・・聞こえない・・・あの・・・そっちは・・・・・・聞こえ・・・・・・・・・・・・・」と伝えようとするが、あまり大きい声でも言えず・・・
なんだかコントを見ているようでこんな状況にも関わらず噴出しそうになってしまった・・・
聞こえない耳元でささやいた医師は診察を終えて満足げに部屋を出て行きました・・・
父は11時ころにようやく呑気な感じで病室に入ってきました。
案の定イマイチ状況が把握できていなかったらしく、いろいろ用事を足してから来たらしい・・・
疲労感倍増・・・
こんな状況の母にも呑気に話しかけています。
母の状況を見てもイマイチ伝わっていないかも・・・
つらいか。つらいか。と言って手を取っているけどなんか軽く見えるのは笑ってるせい?
落ち込んでる感じゼロ・・・
今日か明日かもしれないと言ってもも「そうか。そうか。」と少し神妙になったがわりと元気そうな父・・・
やっぱり他人なんだなーなんて思ってしまった。
まぁ、父もそろったのでとりあえず医師からの話を個室で聞くことに。
さっきの聞こえない耳元でささやいていた医師が担当医の代わりに説明してくれるらしい。
医師は神妙な表情でゆっくり間を置きながら母の今までの経緯を話し始めた。
そして今回の急激な病状悪化。
さきほど・・・・・お母様に苦しくないか聞いたところ・・・・・うなずいていたので今はまだ・・・・・意識があります。
え???
う、うーーーーん・・・
聞こえない耳にささやいてもたぶん聞こえてないと思うので、たぶんうなずいているように見えただけだと思われますが・・・
私も時々聞こえない左耳側で話をして「聞こえないんだけど!」って怒られたし・・・
ま、まぁいいか・・・・・
微妙な間を置きながら医師の話は続く。
この状況なので・・・・・・抗がん剤はもう使いません・・・・・
え??????
そんなこと全然思ってないけど・・・
この状況で使える抗がん剤があればもっと前に使いますよね?????
抗がん剤がそんな即効性あるとは思ってませんが・・・・
抗がん剤については何度も担当医から説明されてるし・・・
この状況で使えないのか聞いてくる家族いるのかな・・・・・・・・・・・
多少口がぽかん状況になってくる・・・
さらに医師の話は続く。
この状況では・・・・・・今日か明日だと思います・・・・・・今晩は一人・・・・・こちらに泊まって・・・・・・他の家族の方は・・・・・・家に帰っていいです。
やっぱりそうか・・・
朝方亡くなることが多いので今日はみんなで病室に泊まったほうがいいな・・・
さらに続く。
そのときにはうちでは挿管・・・・・心臓マッサージなどはしない予定です・・・・・
うんうん。
微妙な間が気になるがようやく普通の医師の感じが出てきた。
母もそれを望んでいます。
心でつぶやきうなずいた。
さらにさらに神妙な表情で医師は続けた。
何か・・・・・・・・・してほしいことは無いですか・・・・・・・・・?
え?
してほしいこと?
母は手の施しようが無くて今日か明日の命と言われて・・・・
もうどうしようもない状況だから何もできませんよ。と言っている医師に何ができるのか少し考えてしまった。
姉と私は顔を見合わせて少し首をかしげながら伝えた。
「いえ・・・とくにないです・・・」
なんか・・・・
普通に話してくれてもいいのに・・・
変に神妙な雰囲気で説明するから微妙な空気がずっと流れていたし、内容もなんか微妙だったね・・・・
姉とそんな話をしながら病室へ戻りました。
病室にはうつろな表情で呼吸の苦しそうな母が一人。
状況は急変することもなさそうだったので姉はいろいろと相談していた友人へ電話へ。
私は姉の頼んでいたうどんを食べ、父は母の横で座っていました。
今まではうつろな表情で荒い呼吸だった母が少し苦しみ始めました。
ナースコールで看護師さんを呼ぶとモルヒネを早送りしてくれました。
そのまま様子を一緒に見ていましたが、症状改善みられず看護師さんがもう一度モルヒネを早送り。
呼吸が止まるかもしれないので見ていますね。と言って看護師さんは一緒に見守っていてくれました。
数日前に持っていった母が聞きたいと言っていた曲が静かに流れる中、家族に見守られながら母は息を引き取りました。
本当にタイミングをあわせたんじゃないかと思うほど。
持って行った4曲の中で一番好きだった曲のときでした。
最期は苦しそうな時間もありましたが、母の納得のいく形だったのではないかと思います。
その後は父が母の親戚、葬儀屋に連絡し、私は実家に帰る為の荷物を取りに自宅へ一度帰ることにしました。
朝家を出るときには晴れていたのに、外へ出ると雨が降っていたのでタクシーで自宅へ向かいました。
自宅へ向かうにつれ小雨になり、晴れ間も見えてきました。
タクシーの窓からは大きな虹が見えました。
母が虹を使って天に召されたのかもしれません。
タクシーを降りて空を見上げるとすっかり青空になっていました。
さっきの雨は母の涙だったのでしょうか・・・
もうすぐ2ヶ月が過ぎようとしていますが悲しみは癒えずだんだん大きくなるばかりで、いまでも想い出して涙する日があります。
きっと時間がゆっくりと解決してくれるのでしょう。
無理せず焦らず受け入れていこうと思います。