海外での生活で一番大変なことは何か?
よく聞かれるし、自分でも考えることが多いが、一番は何か?と聞かれると、すぐには答えは出てこない。
お子様連れの駐在者ならば、子供の学校と言うかもしれないし、不便な場所への駐在者ならば移動が大変と言うかもしれないし、病気がちの駐在者ならば、病院だと言うかもしれない。
しかし、いくら生活環境が全く異なる中東とは言え、それなりの都市部に単身駐在している俺にとっては、実は大変なことは、そんなにはない。
もちろん、英語の問題、文化習慣の違いに困惑するなどの大変さはあるが、これらは、ニューヨークやロンドンに住んでいても同じだし、どこの国でだってそれなりにある現実だから、今さら大変と感じるようなものでもないし、それは必ず克服しなければいけない問題だ。
中東の場合だと、日本食が簡単に食べれない、最新の映画を見ることが出来ない、酒が簡単に飲めないなどの不便さはあるが、俺の場合は二度目の中東への駐在だし、今さら大変と感じるようなものでもない。
まして、俺の場合は、料理はそれなりに克服しているし、日本にいたって毎週のように映画を見るわけではないし、酒だって俺はアル中ではないので、自作の酒だけでも生きて行くことは出来る。
現代では、インターネットや携帯電話、メール、つまり通信技術の進歩によって、簡単に日本の身内や友人とコンタクトすることは出来るし、昔の駐在者と比べたら、寂しさという不安や孤独感も少ない。
もちろん、日本で不幸があった時に、すぐにはすっ飛んで行くことが出来ず、最悪、肉親の最期を看取ることが出来ないという現実はあるが、これは日常の問題ではないので、その時になってみないと実感出来ない。
中東の場合だと、一日五回のお祈り時間の度に、スーパーやレストランが閉まってしまうのは、俺たち外国人にとっては、正直苦痛だし、その他の国では、日本人ということで差別を受けるなど、人種問題に悩む駐在者もいるかもしれない。
ただ、それすら慣れてしまって覚悟が出来ればそう大きな問題ではないので、日本の皆さんが思うほど、深刻な問題ではない、少なくとも俺にはね。
文化や習慣の違いは、受け入れるしかないんだ。
しかし、「悔しい」ことは沢山ある。
やはり、日本にいないと出来ないこと、それが出来ないことが悔しい。
例えば、なでしこJAPANの快挙、この興奮の共有は、やはり日本にいるといないとでは、相当に違うはずだ。
日本では今は8月、もしも俺が日本にいたら、信州のどこかの山を登ってるかもしれないが、これが出来ないのは、正直悔しい。
仲のいい友人と飲みに行くことが出来ないのも、好きな店で食事が出来ないのも悔しい。
そう考えると、俺にとっての海外生活とは、大変とか苦痛というよりは、なんだか置いてきぼりにされるような悔しさ、そういうものだと思う。