「花形満」(以下「花形」と言います)は、野球漫画「巨人の星」の主人公である「星飛雄馬」(以下「星」と言います)のライバルです。

 巨人の星は、梶原一騎:作、川崎のぼる:画の漫画で、1966年から1971年にかけて「週刊少年マガジン」に連載され、テレビアニメは、1968年から1971年にかけて放映されました。当時、少年マガジンには「あしたのジョー」も連載されていて、あしたのジョーの原作者「高森朝雄」は梶原一騎さんの別のペンネームで、何かの事情で、同じ雑誌に同じ名前で作品を発表できなくて、別のペンネームにしたと聞いています。巨人の星もあしたのジョーも大ヒットしました。私は、特にあしたのジョーが大好きで、漫画もテレビアニメも夢中になって見ていました。あしたのジョーについては、別の稿で話したいと思います。

 今回は、花形のことです。花形は高校の頃からをライバルと見ていて、いちいち張り合ってきたのですが、星が読売巨人軍(以下「ジャイアンツ」と言います)に入団すると、自分は、ジャイアンツの宿敵である阪神タイガース(以下「タイガース」と言います)に入団します。星はジャイアンツでピッチャーとして活躍しますが、「球質が軽い」という致命的な欠陥を知られて、勝てなくなります。星は伴宙太と山に籠り「大リーグボール1号」を完成させます。大リーグボール1号は、星が座禅を組んでいた時に、「打たせないのではない、むしろ打たせよう」という訳の分からない悟りを開いて編み出した魔球です。打席に立って構えた打者のバットにわざとボールを当てて、凡打に打ち取るという魔球です(うーん、どうでしょうねー・・by長嶋茂雄)。

 花形は、どのようにこの魔球を打ち取ったかというと、次のとおりです。

 花形は金持ちのお坊ちゃんですので、必要な機材は何でも揃えられます。花形は、工場のクレーンに鎖で巨大な鉄球をぶら下げて、鉄球に反動をつけて自分のほうに投げさせて、それをバットで打つという練習をします。鉄球がバットに当たり、「ぐわーー!」とか叫びながら跳ね返される。こんな練習を繰り返すのです。「そんなことしたら死ぬわい!」とツッコむところです。

 連日、密かに地獄のような練習をしたのちに、ジャイアンツとタイガースの試合がやってきます。ジャイアンツのピッチャーは星です。花形は、阪神の村山監督に、ズタズタになった両手を見せて「絶対に大リーグボールを打ってみせます!」と訴えて、打席に立ちます。外野からの返球を受けていた星は、背中に刺し通すような花形の殺気を感じます。「それなら、投げてやろう。大リーグボールだ!」。ついに星は大リーグボール1号を投げます。花形は打席で構えていて、ボールがバットに当たった瞬間に、そのままの姿勢でバットを「うおーりゃー!」と振り抜きます。ボールは見事に跳ね返されホームランになります。花形は一塁から二塁、二塁から三塁へと回りますが、突然、叫びながら両腕を抱えて倒れます。無理な姿勢から打ったことにより、両腕の筋肉がズタズタになっていたのです(そりゃそうだろう・・)。地面を這いながら、花形は自力でホームインし、担架で運ばれて行きます。

 どう考えても、これは人間技ではありません。死ななかっただけでも儲けものだと思います。スポ根漫画の典型ですが、中学生の私は、「スゲーなー、花形・・」と思って見ていました。