#12 4/1 TOHO_HIBIYA


離れる者、残る者の故郷への想い

(C)2021 Focus Features, LLC.

ベルファスト


1969年、北アイルランドのベルファスト。イングランドとの自治権の争いに宗教の問題も絡まり、街は内戦状態。そうした大人の事情など知らない少年バディ(ジュード・ヒル)はバリケードが立てられた街で子どもらしい日々を送っていた。ある日、ロンドンまで働きに出ている父(ジェイミー・ドーナン)が帰ってきて母(カトリーナ・バルフ)と何かを相談してから、母は苛立つようになる。


(C)2021 Focus Features, LLC.


ケネス・ブラナーが幼少期を過ごしたベルファストの街を描いた本作。子どもが主人公という時点で大好き映画の予感。公開延期の影響で同監督作品「ナイル殺人事件」と被ってしまったが、両作品とも観賞することができたのは幸い。


結論、これ好き。アイルランド情勢は複雑。だけど子ども目線なので、むしろ知らないくらいがちょうど良い。どんな状況でも「らしい」子どもたちと右往左往する大人たちの対比が良い。時折入るカラーは本作がバディの心象であるサイン。


(C)2021 Focus Features, LLC.


家族の物語。バディはパパやママ、おじいちゃん、おばあちゃんのことが大好きなのだと伝わる。意見が食い違い衝突する両親。互いのこと、家族のことを思っているけらこその衝突。このパパとママとおじいちゃんとおばあちゃん、素敵すぎる。


置かれた環境は間違いなく深刻。内戦のない国で暮らす僕たちには肌で理解できない状況である。重苦しい空気の中心にホームドラマを置くことで惨状の影がより濃く映される。「ジョジョ・ラビット」や「この世界の片隅に」が思い出される。


(C)2021 Focus Features, LLC.


本作の「みなさんの目」となるジュードくん。北アイルランド出身で、これが長編映画デビュー。演技力などどうでもよい。無邪気な笑顔とはこのことだよね。愛情あふれるママ役バルフはアイルランドのダブリン出身。「スーパー8」等大作にも出演。


パパ役ドーナンは「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」主演。どうりでカッコいいわけだ。出身は北アイルランド。おじいちゃん役キアラン・ハインズはまさにベルファスト出身。おばあちゃん役イングランド出身ジュディ・デンチの庶民は新鮮。


(C)2021 Focus Features, LLC.


ブラナーの実体験がベースなので、当然バディの家族には自身の家族が投影されているのだろう。随所に「映画」に関するエピソードが差し込まれる。どんな状況でも家族を笑顔にしたのが映画。ブラナーの映画愛が垣間見られる良作。


「答えがひとつなら紛争は起きない」「言葉が通じないんじゃない、聞こうとしていないんだ」…折に触れおじいちゃんが日常で口にするセリフがいちいちアイルランド情勢と一致する。そして2022年現在起きている戦争にも。金言だ。



 DATA

監督・脚本・製作:ケネス・ブラナー/音楽:ヴァン・モリソン

出演:ジュード・ヒル/カトリーナ・バルフ/ジェイミー・ドーナン/キアラン・ハインズ/ルイス・マカスキー/コリン・モーガン/ジュディ・デンチ



hiroでした。



ナイル殺人事件←こちらもブラナー監督作品


ジョジョ・ラビット←コレ思い出した


この世界の片隅に←コレも