NETFLIX鑑賞

周到に仕掛けられたヴィルヌーヴのワナ
プリズナーズ

山間の町で二人の少女が失踪。警察は家の前に知らないRV車が停まっていたという証言から該当車両を捜索し発見。逃げようとしたアレックス・ジョーンズ(ポール・ダノ)を逮捕するが発達障害をもつ彼は担当刑事のロキ(ジェイク・ギレンホール)に対して犯行を黙秘。一人の少女の父ケラー(ヒュー・ジャックマン)は納得できず警察署に駆け込む。


初見。幼児誘拐は超苦手な分野。これはどういう展開かな…とドキドキ。女の子だし、性犯罪者も出てくるし、嫌な予感しかしないのだが、それも含めて全部が伏線。ヴィルヌーヴのトラップだらけの構造。

主人公は最初から犯人を決めつけるている。我々は「ということは違う?」とブレーキを踏む。起きる出来事は主人公の主観なのか…それとも。我々を弄ぶように不審な人物が次々と急浮上したりする。


終わってみればスリラー作品としてありがちなのかも。本作はそこにたどり着くまでのヴィルヌーヴと我々との駆け引きがツボ。人物といいアイテムといい、オリジナルストーリーとしてはかなり練り込んだのではないか。

音楽はヴィルヌーヴの特徴と言っていい。大半のシーンに蠢く不穏な重低音。「ボーダーライン」で熟成され「メッセージ」で完成された音楽世界は監督とアイスランドの音楽家ヨハン・ヨハンソンとのコラボレーション。


主人公ジャックマンが暴走パパ。正体のわからない真犯人に翻弄され正気を失っていくのだが、気持ちはわかりすぎる。W主演のギレンホールはキャスティング時点で「しかけ」のひとつ。何かありそうな顔だものね。

もうひとつの家族がヴィオラ・デイヴィステレンス・ハワードという豪華さ。観るまで知らなかった。ポール・ダノがなんつうか超「凄い」。アレックスをどう演じるかが本作のキモ。キャリアハイの演技では。


「ボーダーライン」以来ヴィルヌーヴに魅了されている一人。映画的音響効果の使い方が「らしいな」と思えるのは、原形である本作を後から観た者の特権。彼の独特の世界観にどっぷりはめられた2時間。

誘拐の真相も心配していた方向とは違ったのでちょっと安心。それでも恐怖を味わった子のトラウマは逃れられない。「映画は映画」と開き直れない方はどのみちダメなタイプかと。


監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ/脚本:アーロン・グジコウスキ/音楽:ヨハン・ヨハンソン
出演:ヒュー・ジャックマン/ジェイク・ギレンホール/ヴィオラ・デイヴィス/マリア・ベロ/テレンス・ハワード/メリッサ・レオ/ポール・ダノ


hiroでした。