56本目(12月15日観賞)

助け合って生きること、上を向いて歩くこと
ラスト・クリスマス

監督・製作:ポール・フェイグ/脚本・原案・製作:エマ・トンプソン/脚本:ブライオニー・キミングズ/音楽:セオドア・シャピロ
出演:エミリア・クラーク/ヘンリー・ゴールディング/ミシェル・ヨー/エマ・トンプソン

ロンドンのクリスマスショップに勤めるケイト(エミリア・クラーク)は何事もうまくいかず、家を出て、友達の家を転々している。クリスマスが近いある日、店の前で空を見上げてるトム(ヘンリー・ゴールディング)を見かけてから、度々出会うようになる。少しずつトムに惹かれていくケイトだったがトムは一定の距離を保ちたがった。


クリスマスシーズンの定番曲、ワムの「ラスト・クリスマス」をベースにクリスマスを彩るハートウォーミングなラブコメディ…をイメージすると違う。差別、貧困、ジェンダー等々しっかり練り込み作り込まれた作品。

ケイトが自暴自棄なのも、トムが突然現れケイトを導くのも、ちゃんと訳がある。ばらまいた伏線を回収しながら、小出しに情報を出していく脚本は手練れの技。終盤、オチが何となく読めては来るが、それでも涙した。


ワムというよりジョージ・マイケル。ワム時代、ソロ時代の彼の名曲が冬のロンドンを彩る。80年代のUKを知る世代はトリハダ。有名すぎるタイトル曲はストーリーにリンクするというよりタイトルや歌詞に意味がある。

監督は「シンプル・フェイバー」が記憶に新しいポール・フェイグ。どんなジャンルにも濃すぎず薄すぎずのコメディを混ぜる抜群のセンス。本作はネタバレNGのファンタジー・コメディ。宣伝少なめだがオススメの一本。


エミリアが演じる自暴自棄なヒロイン。キュートさは発揮したが、かえって目を引き「エミリアのラブコメ映画」的雰囲気を醸しだし脚本の良さを薄めてしまった気はする。初見ゴールディングは好青年のマレーシア人。

そのゴールディングと中国系美女の開拓者ミシェル・ヨーは「クレイジー・リッチ!」に続く共演。同作では母と息子。御大エマ・トンプソンが製作・原案・脚本、さらにヒロインのママとして出演までする熱の入れよう。


TVドラマノリではあるが、クリスマスにありがちな恋愛主体ではない。心地よい裏切り。

いろいろあってささくれだっていた。そういう状態だったもんだから、何気ないセリフやクサいセリフのひとつひとつがささくれの隙間に染み入って…気づいたら涙してた。

必要なタイミングに必要な映画と出会う。そういうのよくあるんです。また、素敵な映画に支えられた。心に残る優しさ溢れる作品。



hiroでした。



脚本8 映像7 音響7 配役7 音楽8
37/50