WOWOW鑑賞

 
大きな流れのなかで自分が今やるべきこと
グッドモーニング、ベトナム
 
監督:バリー・レヴィンソン/脚本:ミッチ・マーコウィッツ
出演:ロビン・ウィリアムズ/フォレスト・ウィテカー/ドゥング・タン・トラン/チンタラー・スカパット/ブルーノ・カービー/ロバート・ウール/J.T.ウォルシュ
 
泥沼化するベトナム戦争。クレタ島基地の人気DJだったクロンナウア(ロビン・ウィリアムズ)は兵士の士気高揚のためサイゴンに赴任する。クロンナウアの破天荒な放送は兵士たちに笑顔をもたらすが、厳格で品のある放送を是とする上官たちは彼を疎んじる。そんなある日、米兵が集まるバーの爆破事件が起きる。
 
 
会社の会議でいつも吠えてる上司。あれをチェックして、これを忘れず、それも注意して…立場もあるのはわかる。が、常に緊張状態を維持しろと求めてもムリ。間でなんとかしようと頭をひねるのが中間管理職、というよくある光景。
 
ゴムは引っ張り続けると弾力を失い、徐々に劣化し、やがて切れる。人も緊張状態が続くと切れる。むしろ人のほうが切れやすい。人における「切れる」とは精神の崩壊だ。
 
戦況の好転しないベトナムに大量の兵士を送り込んだアメリカ。戦場という究極の緊張地帯。自国の正義を刷り込まれた彼らには「笑い」が必要だった。

 
再見。

クロンナウアがやっているのは、国公認で人殺しを行う兵士が気楽に殺せる環境づくりである。否定するべきものを肯定する矛盾がある。どこかに引っかかるとしたら、そこだろう。
 
ひとりの兵士が戦争を終わらせることなどできない。彼が選択したのは、戦争における建前と現実の折り合い。少しでもマシな道を探ること。規模こそ違えども、中間管理職のそれと同質。
 
そんなことは無意味?やるだけ無駄?無駄ならやらないほうがいい?
 

 

マシンガントークが売りのコメディ・キング=ロビン・ウィリアムズ誕生の瞬間。本作がなければ「アラジン」のジーニーも違うキャラだったかもしれない。ただ、ジョークの大半はよくわからない(笑)。

 

大統領の執事の涙」が初見と思ってたフォレスト・ウィティカーがいた。トリン役チンタラー・スカパットが超絶可愛い。タイの国民的女優。この頃のちょっと目を引くベトナム人役はほとんどがタイ人だったもよう。

 
 
戦争の狂気や悲劇を語る作品は多い。が、戦場の兵士をさらに外側から見つめるアプローチは珍しい。
 
クロンナウアは戦場に立つ兵士の心の平穏を願っていた。そんな彼も信じていた者の裏切りで「戦争」という現実を突きつけられ、傷つく。それでも彼ができることは話すことだけ。終盤のストリートDJは名場面。
 
誰もが大きな流れのなかにいる。仮に受け入れられないにしても、何もしないで流されたくはない。やれることはやる。それが自分が自分である証だから。
 
 
 
hiroでした。