13本目(3月11日鑑賞)


家族の歴史、親子の絆。
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ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅


監督:アレクサンダー・ペイン

脚本:ボブ・ネルソン

音楽:マーク・オートン

出演:ブルース・ダーン/ウィル・フォーテ/ジューン・スキップ/ステイシー・キーチ/ボブ・オデンカーク/マリー・ルイーズ・ウィルソン/アンジェラ・マキュアーソン/ランス・ハワード


「100万$に当選されました」という出版社からの手紙を手に、賞金を受け取るため、モンタナからネブラスカのリンカーンまで歩いて行こうとするウディ(ブルース・ダーン)。見え透いた嘘を信じるウディを妻のケイト(ジューン・スキップ)は非難するが、それでも懲りずにリンカーン行きを繰り返す。見かねた次男デヴィッド(ウィル・フォーテ)は、父を車に乗せてリンカーンへ向かうことに。
道中、ウディが怪我を負ったため、ウディの故郷ホーソンに立ち寄り、兄レイ(ランス・ハワード)の家で週末を過ごすことにする。久しぶりに訪れた故郷は、街並みこそ昔のままだったが、ウディを知る人にはなかなか出くわさない。ようやく工場の共同経営者だったエド(ステイシー・キーチ)に会えたが、うっかり賞金のことを話してしまい、町中にその噂は広まってしまう。

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メジャー俳優の候補を押しのけ

主役を獲得したダーン。


ご覧のとおり、全編モノクロ映像。実はhiro、以前名作と言われるモノクロ作品鑑賞中に寝たというトラウマ持ち。以後なかなかモノクロに手が出せない。「アーティスト 」はがんばったけど。今作のペイン監督、「ファミリー・ツリー 」が大好物。どうしても観たくて、モノクロだけど鑑賞決定。
先のアカデミー賞各賞ノミネーションに名を連ねた今作。超セレブな俳優もいない。派手なアクションも、ハンカチ必至の大感動もない。それでもノミネーションからはずせないわけ、観てよくわかった。

これね、凄いいいニコニコ


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徐々に打ち解けていくロード・ムービーの王道。


最初はイヤイヤなのは、ロード・ムービーのセオリー。「しょうがない、付き合ってやるか」なノリ。 ところが、賞金の件が発覚したとたんに変わる周囲の空気。久しぶりに集まった親戚一同さえも。お金が人を変える。目の当たりにした息子も、さすがに嫌な気分になってくる。駆けつけた母と兄も然り。取っ組み合いになったり、「ファッキュー!」が飛び出したり。

そして、どうしたことか、ギスギス家族がウディを中心にまとまりだす。デヴィッドがホーソンで見聞きした、過去の父、過去の母の姿。たぶん、それを知ったことが重要。家族の歴史を知る。それは自分のルーツを知ること。家族のつながりを知ること。紛れもなく、この男女の間に生まれ、育てられた、子なんだと。

この感じは「ファミリー・ツリー」。妻の不倫相手を探し、娘たちと右往左往する父。自ら相続し売却しようと考えていたハワイの広大な土地に触れ、やはり家族の歴史を感じ取る。どちらの作品にも、家族の関係を取り戻そう、なんて気負いはない。気負わなくても、家族は家族なのだから。


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喧嘩ばかりでも、ともに歩んだ歴史がある。


2本観ただけだけど、ペイン監督の時間が好き。「ファミリー・ツリー」ではハワイ時間。急いで走って、サンダル、ペッタンペッタン。今作は老人の歩く速さ。ゆっくりゆっくり、時間は経過する。

デヴィッドと従妹の会話。「モンタナから何時間かかった?」「2日間」「バックで走ってたのか?」…片やアメ車でブンブン、片や日本車で安全運転。この速度が、物語の速度なんだと、思う。

架空の町ホーソンもいい。時間が止まっているようで動いている。北米中部の町、あまり見る機会がない。ホーソンみたいな町、たくさんありそう。ちなみにペイン監督、ネブラスカ出身。


少しずつ家族を知り、ごく自然に絆を感じるようになるには、この時間と町とが必須アイテムなのだろう。


レイの家族とウディとデヴィッド。みんなでテレビ。会話してるようで、していない。テレビを見ているようで、見ていない。テレビ側から映したアングル。「ファミリー・ツリー」のエンディングを思い出して、ほっこり。


役者の略歴に一切触れず、ここまで書けてしまった。馴染みない役者さんというのもあるけど、作品力、ってやつですか?


ふとレビューを書いていて疑問がわいた。ウディは本当に信じていたのかな、賞金。寡黙なウディは、何も語らない。息子と旅をしたいがための芝居だとしたら…そういう想像も楽しい。


オススメ度、高いです。



hiroでした。

寝なかったよ。


脚本9 映像8 音響6 配役9 他(ロケーション)9

41/50