無力だから、せつない。 | フーテンひぐらし

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永遠の放課後。文化祭前夜のテンションで生きたい。なかなか大人になれない。


昨夜、7年ぶりに「学校へ行こう!」がスペシャル番組として放映された。
これが始まった時わたしはすでにいい大人だったのだけど、
学校が大好きだった人間には、ほんとに楽しい番組だった。

昨日もB-RAP(騎士男がお気に入りでした)で死ぬほど笑ったし、
久しぶりに当時の映像を観て「内容もいいけど、何がいいって
V6がものすごいゲラゲラ笑ってる姿がよかったんだよなあ…。
特にいのっちのバカ笑いぶりは本当に好きだったな」とか思い出した。


でも観てたひとなら分かるよね。
いちばん胸に残ったのは、「未成年の主張」で
最後に出てきた小1の男の子だったよ。

これまでずっと中高生の映像を観てきたから、
屋上に立つ、ノースリーブハーフパンツの男の子は
あまりにも、あまりにも小さかった。


その男の子がたどたどしく言う。


竜太
「この前ママに、おとなりのあおいちゃんが
 こんど引っ越すって聞きました。
 そしたら涙がいっぱい出てきました。

 いまも、泣きそうです。


 あおいちゃーん
 あさってほんとに引っ越すの?」


校庭にいるあおいちゃん、こくんと頷く。
竜太くん、ハアァ…と小さなため息。

そして、震える声で続ける。


「今日は、さよならする前に、言います。

 (フゥ…と深呼吸)

 おうちが引っ越しても、
 あおいちゃんのことが、だいすき。


 あおいちゃんは、ぼくのこと、すき?」


あおいちゃん、皆が見ている前なので
少し照れくさそうにうん、と頷く。
そして、思わずこぼれてきた涙をぬぐう。


竜太くんがそれを見て、
一生懸命、普通の声で言う。


「泣かないで。

 ぼくも、なみだがでちゃう。

 あおいちゃーん…。
 ぼくのこと、忘れないでねーーーー!」


ボロボロと涙するあおいちゃん。


あまりにも小さな2人の切ないやりとりに、
スタジオも、テレビの前の我々も、泣くしかなかったよ。


そう、幼少期から義務教育時代までの別れのせつなさは、
大人になってからの別れの比ではない。

だって、自分の力ではどうにも動かせないからだ。

毎日毎日会っていた友達や好きな子との別れは、
非情なまでに動かしがたい。
クラス替え、学校が変わる、引っ越す。
子供の頃、それは間違いなく自分の意思ではない。


去年の4月、私は広野ゆうなメルマガにこんなことを書いた。

あの時はマックス6年、ミニマム3年で毎日会ってた仲間との別れが来た。
そして次に会える機会は甚だおぼつかない。
本当に「会えなくなる」ほうが多かったから、
友情も恋愛もこの季節は胸がぎゅんと締め付けられるようだったな。

そこいくと大人の「別れ」は、死別や恋人との別離ではない限り、
もう少しゆとりがある。

会社の同僚でなくなっても「飲み友達」としていくらでも気軽に会える。
そう考えると大人でよかったなと思うし、反面、あんなに大勢の人と
それまでの自分の毎日に対する惜別の情を持つことはないんだなと思うと
残念な気もする。


そう、大人は、そもそもが自分の意思で
別れることが多いし、別れても、会えたりする。


だけど、子供の別れは
自分ではどうもできない別れ。
大人みたいに「また飲もうよ」じゃない別れ。
唐突で避けられなくて、無力だ。


だから子供の日々は、
学生時代の毎日は、
すごくせつない。甘酸っぱい。


そして大人が持つことを許されるのは、
「もう自分は二度とそこに戻れない」
というせつなさなだけなんだね。