歯科治療の中でも、セラミック治療は高価な選択肢の一つです。
治療を受ける際、なぜ銀歯よりもセラミックが圧倒的に高いのか疑問に思う方もいるかもしれません。

セラミック治療が高価とされる理由は、使用する材質や接着技術、そして加工の複雑さにあります。セラミックと銀歯の違いについて材質や技術的な観点から解説します。

1. 材質の違い:セラミック vs 銀歯
まず最初に、セラミックと銀歯の材質の違いに注目しましょう。セラミックは、陶器と同じような材質で、非常に硬く壊れにくい性質を持っています。これに加えて、見た目が天然の歯とほとんど変わらない色合いや質感を再現できるのが大きな特徴です。特に前歯の治療など、美観が求められる部分ではセラミックの利点が大きく、まるで自然の歯のように仕上がります。
一方で、銀歯は金銀パラジウム合金で作られており、強度が高く噛む力に対して非常に耐性があります。ただし、その見た目が銀色であり口を開けると目立つため、前歯の治療には使われていません。奥歯のような見えにくい部分であれば、銀歯でも特に問題はない場合が多いですが、見た目を重視する人にとってはセラミックの方が好まれる選択肢です。
セラミックは素材自体が高価であり製造過程も高度な技術を要するため、これが治療費の高さに直結しています。
銀歯の製造工程はセラミックと比較すると複雑ではないのと、日本の保険制度によって患者負担が0-3割となっているので治療費が抑えられます。もし日本の保険制度がなければ、銀歯も10000円~15000円程度の治療費になります。

2. 加工技術と製作の違い
次に、セラミックと銀歯の加工技術の違いについて説明します。セラミックのインレーやクラウンは、非常に精密に作られ、患者一人ひとりの歯の形にぴったりと合うように設計されます。デジタルスキャナーを使用して歯型を取り、そのデータを基にコンピュータ制御された機械で削り出す工程や、セラミックを焼成するプロセスを経て、完成品が出来上がります。この過程は高度な技術と専用の設備を必要とするためコストがかかります。
また、セラミックのインレーやクラウンを製作する技工士も高度なスキルを持った専門家であり、彼らが行う手作業による調整や仕上げも最終的な治療費に影響を与えます。一方、銀歯は金属を型に流し込んで製作するため、セラミックに比べると工程がシンプルで、製作にかかる時間や技術も少ないのが特徴です。このため、銀歯はセラミックに比べて低価格で提供されることが多いです。

3. 接着時に使用するセメント(接着剤)の違い
セラミック治療の際には、接着に使用されるセメントにも違いがあります。セラミックのインレーやクラウンを固定するためには、専用のレジンセメントが使用されます。この接着剤は非常に強力で、長期間にわたってセラミックと歯をしっかりと結びつけることが可能です。レジンセメントは、特に審美的な部位で重要な役割を果たし、歯とセラミックの間に生じる微細な隙間も埋めてしまうため非常に安定した接着力を持ちます。お口の中は、咬む力による圧力・食べ物による温度変化など接着に不利な条件が長期間にわたって続くため性能の良い接着剤を使用することは非常に重要です
一方で、銀歯の接着には比較的安価な接着剤が使われます。日本の保険制度では接着に使用するセメントの費用が決められており、この設定された値段を超える高価で質のよいセメントを使用すると歯科医院は赤字になってしまうため、質の良いセメントを使用できないことが大きな理由の一つです。この銀歯の治療に使用するセメントは、セラミック治療に使用するレジンセメントほどの強度や耐久性を持たないため時間が経つにつれて接着が弱まる可能性があります。接着が弱くなると歯と銀歯の間に小さな隙間ができ、そこから虫歯が再発します。銀歯の場合、統計的には平均で5-7年程度で虫歯が再発すると言われています。一方でセラミック治療の場合は適切なメンテナンスを受けることで20年程度は使用可能であるとされています。

こうした点からも、セラミック治療はより高い信頼性を提供できる一方で、費用も高くなります。

4. 耐久性とメンテナンスの違い
セラミックのもう一つの大きな利点は、その耐久性にあります。セラミックは非常に硬い素材であり、適切に作られ装着されれば長期間にわたって使用することが可能です。また、セラミックはプラーク(歯垢)が付きにくく、銀歯に比べて清潔さを保つのが容易です。これにより、虫歯の再発や歯周病のリスクを軽減できるため長期的には健康面でもメリットが大きいです。
一方、銀歯は金属であるため、セラミックほどの耐久性はありません。また、長期間使用すると金属の腐食や摩耗が起こる可能性があり、定期的にメンテナンスや交換が必要になることがあります。こうしたメンテナンスの手間も治療法を選ぶ際に考慮すべき要素の一つです。ただし、セラミックを入れたからメンテナンスを受けなくてもいいわけではありません。

まとめ
セラミック治療が高価である理由は、主にその材質の美しさと耐久性、製作に必要な高度な技術、そして高価で質の良い強力な接着材の使用によるものです。また、セラミックはメンテナンスの負担が少なく、長期的な使用にも優れているため、初期費用が高くても、長い目で見ればコストパフォーマンスの良い選択肢と言えます。一方で、銀歯は費用を抑えたい場合や、見た目をあまり気にしない奥歯の治療に適しており、それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあることを理解することが大切です。