『憂鬱な午後』 | 【「サブスリー塾」サブスリーランナーのトレーニングって?】

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ブログストーリー -NO.8-
『憂鬱な午後』 


ホントに夫婦生活とはこんなものでいいのだろうか。
私と妻は25年前に結婚をした。
しかし…

…私はその日から腹を抱えて笑うことを忘れてしまっている。


毎日、つまらない朝をむかえて

寂しい昼を過ごし、ありきたりな夜が来る。


確かに、私たちに子どもはない。
しかし、それが原因だとは思わない。
なぜなら、私も妻も子どもが苦手なのだ。


私は毎晩、考え込んでしまう。
ホントに夫婦生活とはこんなものでいいのだろうか、と。


今日は日曜日。


午前中に私と妻は買い物に出かけた。
とは言っても、ほとんど話すことはなく
ただ、黙々とカゴに自分の好きなものを入れているだけだった。


午後になり、する事もなく
私は今…TVで野球中継を観ている。
妻はというと、紅茶をすすりながら雑誌に目を通していた。


そこに大きなハエがブーンと嫌な羽音をたてて、登場した。


私はソファーの上からハエの行き先をずっと目で追った。
はじめ、部屋の隅を飛んでいたハエはしばらくすると
私の目の前をクルクルと回り、妻の雑誌の上に止まった。


それを見た時、私の体に熱いものが流れた。

「おい、小百合!殺虫スプレー持ってこい!」
私は久しぶりに大きな声をだした。

「はい、あなた!」
私にはとても意外だった。
なんと、妻はそんなさわやかな声をだし、さっと立ち上がったのだ。

しばらくして、妻が殺虫スプレーを持ってくると
私は左手でキャップをはずし、右手でかまえた。

ハエはまだ、雑誌の上で手を擦り、足を擦りしている。

「いまだ!」
殺虫プレーから勢いよく白い薬品が飛び出す。

「あなた、飛んだわ!」
ハエは必死で飛び立った。

私は殺虫スプレーを持ったままハエを追いかけた。

ハエはフラフラしながら飛んでいた。

私はそれでも追いかけた。


ハエは右へ行き…左へ行き…していたが

しばらくすると、さすがにまいったのか

部屋の壁にペタッとはりついた。


「あなた、これ使って!」

振り返ると…

妻がさっきの雑誌を筒状に丸めて突き出しているではないか。


「サンキュー!」
私はそれをつかむと思い切り壁に打ち付けた。

一瞬、部屋に静寂の時間が訪れた。


スローモーションでハエは床へと落ちていった。

「やったぞ。わははっは…やったぞ!」

私は腹を抱えて大声で笑った。


振り返ると…

妻も口を押さえて、とても嬉しそうに笑っていた。

「フッフフフ」


私と妻は長い間、笑った。

25年の思い出を塗りつぶすように…。


ひとしきり笑うと

私はソファーにもどり

妻はまた雑誌に目を通し始めた。


その後、私は妻と言葉を交わす事はなかったが

私は25年目にして初めて…

私の心と妻の心に交流があった事に

充実感を覚えていた。


こうして、私と妻の「憂鬱な午後」は終わったのだった。FIN


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