若かりしころ

私は

文芸サークルに所属していて

その部室に

 

失礼ながら

今から思えば

うだつの上がらなそうな

出版社の営業の人が本を売り込みに

度々訪れていて

 

売り込んでいた本は

名著復刻 漱石文学館で

当時で7、8万くらいしたと記憶してますが

 

あまりに売れそうにない営業だったので

情が移ったのと

漱石だったら

将来

歳とって縁側かなにかで

のんびり読んでも損はないだろうと

思い購入した次第です

 

それから40年

ずっと屋根裏部屋に寝かしていて

 

今日

そんな時代が来たのかなと思いながら

「硝子戸の中」を読んでみました

 

 

 

「硝子戸の中」には

最近よく行くことのある

高田馬場 早稲田 神楽坂あたりのことが

書かれていて

 

明治時代後期のこの辺りの田舎ぶりが

よくわかります

 

 

漱石は

自宅療養中の硝子戸の中で

幼き日々や

家族や友のことに

思いを馳せています

 

この辺りは高層ビルも建ち

景色も人の暮らしも一変し

 

それは

明治の人にとって

思いも寄らないことでしょう

 

私は街を歩きながら

この街の歴史が記されている標識や

石仏などを見ると

思わず立ち止まり読んでしまいます

 

 

 

 

そして

これからも

街や人が

移ろいでゆくのだろうと思い

不思議な気分になるのです