10月22日土曜日、長野市エムウェーブで開催されたスピードスケート全日本距離別選手権500m女子で、小平奈緒選手の引退試合があり妻と応援に行った。会場は6000人越えの大観衆。どうやら長野五輪以来の観衆が詰めかけているらしい。

 

小平選手の出る500m女子は12時5分からスタート。その前に出場選手のウォーミングアップが始まった。小平選手がまずリンクを静かに滑り出す。そのスケーティングフォームはまるで氷上を翼を広げて低空飛行する鳥のようだった。これがトップアスリートの実力なのだろうと素人でもわかる美しいフォームだ。他の出場選手は遠慮がちに小平選手とは50mほど離れて練習を始めていた。

 

女子500mがスタートし最終レースの一つ前が小平選手のレースだ。レース直前にスタートのタイミングを図る小平選手。緊張した面持ちでレースを待っている。

 

いよいよレースが始まった。アウトコーススタートの小平選手がバックストレートを滑る。観客は事前に配られたハリセン、拍手で応援。声援を送れないのが残念だ。

 

最終コーナーを回れば転倒の恐れもなく後は自由だとばかりに爆発的な速さで駆け抜けてゆく。インタビュー時の小平選手は静かに言葉を選び話すのだが、レース中は研ぎ澄まされた闘争心を感じる。平昌五輪優勝インタビューの時にMCがケモノのような滑りだったと言っていたのも肯ける。

 

レース結果は37秒49でこの時点で1位。観客の大きな拍手で会場は騒然となるが、小平選手は両手で静かに静かにと観客に次のレースを気遣うアクションをとる。次は高木美穂選手が滑るのだった。

 

最終レースでの高木選手のタイムは38秒18で2位となった。スクリーンに1位で終わったことを見届けたときに小さく握り拳を振り下ろしたように見えた。これで最後のレースが終わった。滑り終わった高木選手を迎えて並んでいる姿がとても微笑ましい。

 

その後、男子1500m、女子3000mの競技が行われ、16時から引退セレモニーが行われた。セレモニーで小平選手はリンクを一周し、スケートシューズを厳かに脱ぎ競技人生を終えた。そしてここから新たなスタートを切るのだろう。

 

小平選手のことを求道者と語ることがよくあるが、本当にスポーツを通して高みに登ろうとする姿勢が人々の感動を呼び起こす。妻も僕も大いに感動し今日ここに来れたことに感謝するのだった。