ビーパルという雑誌が創刊されたのが1981年で当時アウトドアが流行の兆しを見せていた。それから40年、幾度となくキャンプブームが到来し、今ではアウトドアは誰にとっても当たり前のレジャーになりつつある。ゴールデンウィークにはたくさんの人がキャンプ場に訪れ、あたかも難民キャンプ状態になるのことも珍しくない。人々は老若男女を問わずハイキングや登山を楽しみ、休日はたくさんのバイク(自転車)が観光地をツーリングしている。ビーパルはアウトドアライフの情報誌として読者のハートをガッチリつかんで、今では歴史あるアウトドア雑誌に成長した。

 

そんな歴史を持つビーパルの連載の一つを書いていたのが筆者の斉藤政喜さん、シェルパ斉藤だ。シェルパ斉藤さんのプロフィールを見たら1961年生まれとあり私とほぼ同世代。ただ、その生い立ちについて本書で書かれているが、波乱に満ちた青春時代を過ごしている。事業に失敗した父は家族を残し一人夜逃げをし一家は離散。離婚した母と斉藤さんは二人で暮らすが、後に事業を興した父と再会する。だが父は家族に謝ることも、家族を思いやることもなく、自分の苦しかった境遇ばかりを語ったという。著者はそんな父を見て、自分はどんなことがあっても絶対に子供を守ると決意する。父はその後事業に失敗し自殺する。さらりと書かれているが多感な青春時代にそのような経験をしていたとは。彼の天真爛漫な笑顔の奥にそのような時代があったと知る。

 

シェルパ斉藤さんは、ビーパルの連載で生活基盤ができたこともあり結婚後八ヶ岳の麓にログハウスを建てた。そして一歩という男の子も生まれた。本書は長男一歩君との様々な旅の記録。旅が子供をどのように育てるのかをその時々の成長過程で描かれている。四国関西をめぐる列車の旅、ヒッチハイクの旅、一歩君が高校生になった頃はスーパーカブでの2人旅、八ヶ岳登山の旅、ネパールでのMTB旅と旅好きには読み応えのある本となっている。シェルパ斉藤さんが家庭を持って子供を育てた同じ時代に僕も2人の娘を妻と一緒に育てていたんだと思うとお互い頑張ってきたなって勝手に共感してしまうのだ。