時代劇や時代小説で描かれる戦は、鎧兜に身をかためた武士が馬上から刀を振り上げ闘う姿が描かれるが本当にそのような戦いかたが主流だったのだろうか。また武士は剣術に秀でており、日本刀を交えながら、敵を切り勝敗を決する。ほんとうに武士の戦いに剣術が役にたったのだろうか。
日本は武士道があり、それ故に武士は死を恐れず勇敢に戦いに挑む。それは奈良、平安時代から続く日本の伝統なのだろうか。
本書はそのような印象をもっている私たちに対して、様々な文献から武士の実像を明らかにしてくれる。そして つくられた武士道は、軍隊を駆り立て軍人は消耗品のように物資弾薬のない突撃命令にも名誉の死をもって従い、神風や震洋特攻攻撃をも行うことになってしまった。
著者は史実を明らかにするとともに、最後に武士の歴史を学ぶことは日本が武の国だとか日本人が勇敢な民族だとかという不確かなプロパガンダに乗せられるのではなく、「軍事面での勇敢さ」を不要とする平和な国際関係を構築するべきだと結んでいる。
奈良時代からの各時代の武士の戦い方や、武士の武士たる存在意義を知るだけでも意味深い本書だが、今後の日本のありかたをも警告してくれる良書だと確信する。
