釧路のラブホテル「ローヤル」の創業 エピソードや203号室の心中事件、利用客の激減による廃業までの人間模様を短編で紡ぐ名作。それぞれの短編は時系列ではないのが意図されているようで新鮮。また作者の紡ぎ出す詩的な文章が、年に数日しか夏日にならない霧の街「釧路」とそこに暮らす人々を見事に表現している。セックスに関する表現と登場人物の深く悲しい心象風景とが、これほどまでに美しく絡み合っている文章を私は他に知らない。表紙の世界観もまたこの小説の雰囲気を見事に表現している。

映画も現在上映中で、波留、松山ケンイチ、余貴美子をはじめとしたキャストの演技演出も圧巻です。