代表質問 保育の質の向上と格差是正について | 新宿区議 鈴木ひろみオフィシャルブログ Powered by Ameba

代表質問 保育の質の向上と格差是正について

平成28年  6月 定例会(第2回)-0610

代表質問「保育の質の向上と格差是正について」

◎質問の背景

 私立認可園、新宿いるま保育園において、今年度初めに開催された保護者会の場において、前年度末に保護者宛てに配付した次年度年中行事のうち、運動会の日程が変更になった旨の連絡と謝罪があり、その場で園長が保護者に頭を下げることがあったという話を伺った。

 保育園は、昨年中に既に新宿中学校とことしの体育館の使用日程の調整を済ませていた。しかし、年度末になってから、学校側から「現場の先生から校長に申し出があり、大会シーズンなどと重なることから部活動に支障を来すため、ことしの体育館の使用ができなくなってしまった」と連絡があり、急遽保育園側が代替会場の確保に奔走することになり、何とか余丁町小学校と改めて会場調整をし、無事ことしの運動会は実施できることになったが、会場・日時ともに変更になったという。この話を受け、鈴木ひろみは区に「私立保育園及び公設民営保育園の平成25年度から平成28年度の運動会実施場所及び実施日程」の調査を依頼。その結果、平成28年に開設した「保育所まぁむ高田馬場駅前園」においては、豊島区内の小学校で運動会の開催予定と場所の確定はあっても日程の調整がまだであった。他にも開催予定日が未定という状況の園があった。また、調査の過程で、区として区立園については「毎年どこで運動会を行っているか」全園に対し把握が行われているが、私立園に対しての把握は行われていなかったことも発覚した。

 区内の認可保育園、全37園及び子ども園全15園のうち、園庭、もしくは駐車場などで運動会を実施できる園は、たったの6園にすぎず、ほかの46園は、現場の先生方が毎年、いずれかの区立小学校等、公立施設との日程調整に奔走している。他方、区立幼稚園については西戸山幼稚園を除く12園が小学校に併設をされているという事情もあり、双方の調整がスムーズに行われ、併設された小学校の校庭や体育館で実施されている。

 私立保育園の運動会などにおける会場確保の方法は、今まで、私立保育園・子ども園の園長会から区保育指導課に対する会場確保の協力要請の申し出を行い、区としてはこれを受け、教育委員会を通じて各校に保育園からのグラウンドや体育館の貸し出し依頼に応えるよう通知・対応をしてきたという。個別日程調整に関しては、各保育園側と学校側の直接の交渉・調整となっており、実際のところは、一保育士が勤務時間中に複数校をはしごし、まさしく奔走しながら毎年の会場探し、確保を行っている。

 他方、区立保育園に関しても、会場確保のあり方については同様だが、区立園のほうが公立各校との関係が構築されていることから、実態として、そもそも日程上の考慮がなされているなど、私立園よりも配慮がなされていることが予想される。これらを踏まえると、現状、本区で起きていることは、幼保格差と認可保育園間の公私格差とも言える。

 本区では、幼保一体化が進められてきましたが、幼稚園からの子ども園とそれ以外で施設面からの差が生じていること、また区民・保護者の視点に立てば、保育の内容が異なるとはいえど、区立幼稚園と区立保育園の利用料の単純比較であれば、保育園が圧倒的に利用料は高く、にもかかわらずサービスに格差が生じているという批判にもなりかねない。

 加えて、私立園とはいえ、本区における保育所需要や待機児童解消対策として、認可保育園の整備を区が主導的に進めている中、区民・保護者の視点に立てば、入園の際の手続においては、認可保育園であれば、希望園が区立園であっても私立園であっても一括し区に申請を行っているという現状があり、区がその入園先を決定している。その上で、入園先の公私の違いによって、同じ保育料にもかかわらず、サービスに格差が生じているという批判にもなりかねない。

 本件は、保育行政と教育行政のはざまにあったことから、今回の調査まで見落とされていた点であるが、今後の保育需要の拡大への対応として認可保育園の整備がさらに進むであることが予見される。その結果、行事等での場所の確保や日程調整は、さらに困難になることが予測される。今や認可私立園は、実態的には既に準公共施設になっているという事実を鑑みれば、区が主体となってこの問題の解決に取り組まねばならないと考える。

 既にことしの各園の運動会日程と会場は確定しているので、取り急ぎの懸念は払拭されているが、少なくとも来年度以降の園外施設を使って行われる認可保育所の行事に関して区が直接取りまとめを行い、学校と保育園間の調整を行うべきと考える。

 現在、国会の場でも保育の質と保育士の労働環境並びに確保について議論が交わされているが、今回の調査結果を通じても明らかなのは、本来業務である保育以外の附帯的業務に保育士が従事し、奔走され、保育事業者、保育士の方々の負担となっている事実である。保育園行事における施設利用に関する保育行政と教育行政の相互調整を図ることは、現場の保育士の負担軽減にも資するものと考え、区には早急な対応を求めたい。

 

◎質問要旨

ひろみ:保育園行事における施設利用について、保育行政と教育行政の相互調整を図ることについて区長並びに教育委員会の所見を伺います。

 

区長:保育園や子ども園の運動会等の行事における交流や施設利用は、各園の事情や行事の内容を踏まえた調整が必要です。また、保育園等は子育て支援の拠点として、地域に根差した運営をするためにも、学校を含めた地域との関係づくりも重要です。そのため、毎年保育担当部署から教育委員会に対して、校庭の利用等について協力を申し入れた上で、園が個々に調整を行っています。例年円滑に利用できており、このたびの新宿いるま保育園による新宿中学校の利用については、今年度の特別な事情によるものと考えています。

 こうしたことから、保育園行事について区が取りまとめを行い、学校と保育園間の調整を行うことは考えておりません。

 なお、新規に開設された園などから相談があった場合には、これまでも区が調整してきましたが、今後は今回の事例のように、急なキャンセルによって調整が必要になったときなどにも、区が必要に応じて支援することを私立園に対して周知していきます。区内の保育園児は、公立園、私立園を問わず区立の小学校に通うことが多いことから、日ごろから園と学校の連携を強化していくことが望ましいと考えています。

 

教育長:認可保育園などの学校施設の利用は、学校教育法第137条の「学校教育上支障のない限り、学校の施設を社会教育その他公共のために、利用させることができる」という規定から、現在、各学校長がその可否を判断し、対応しています。

 教育委員会では、毎年各学校に対して認可保育園などの行事の実施が学校施設の利用対象となることを通知するとともに、年度初めの校園長会で保育担当部署から直接学校長に学校施設利用の協力依頼をする機会を設けています。認可保育園などの学校施設の利用については、これまでも区立学校と保育施設との連携の一環として行っておりますが、今後も保育担当部署との調整を図りながら、円滑な利用に努めてまいります。

 

◎再質問

ひろみ:保育士不足の原因が、賃金だけではなく仕事量、職業適性の問題など、いろいろな問題があるというふうな御答弁をいただきました。その仕事量を少なくするためにも、例えば行事であったりとか、保育事業に従事をされている方たちの、事務負担を軽減していくことも新宿区の独自の保育士確保の支援策につながると思うんですが、その点の認識というのはいかがお考えでしょうか。再質問をいたします。

 

子ども家庭部長:保育士の現場での負担軽減ということで、事務負担の軽減ということも重要な視点であるとおもいます。また、私どもは保育士の育成ですとか、そういうことについても重要と考えており、今年度は保育指導課を設置しまして、さまざまな面で支援を行っております。今後もそれぞれ現場の課題に目を向けながら、必要な支援は行っていきたいと考えております。

 

◎ひろみ所感

今後保育園がふえていくに当たり、こういった事例が出てくる懸念がある。今回の新宿いるま保育園に関しては特別な事例だととらえず、一元管理するように区と教育委員会にも要望を続けていきたいと思います。