葉っぱが出たら投稿すると言っておきながら、すっかり日が開いてしまいました。
実は甲奴は寒すぎて、まだ葉っぱが開いてなかったんです(嘘です)。

全然更新していないのに、ブログを覗いてくださっている方がチラホラいらっしゃっていてありがたいです。
自分の現場のことを書きたいのですが、先月のロルフさん関連行事からずっとその残務整理やら他の用事で、あまり現場に行けていませんので、何回かはロルフさんの事を書こうかと思います。

当初の構想ではざっくり言って、吉和では基本的なことを、甲奴では少し応用的なこと、つまり現場条件によって変わることを学べるようにと考えていました。
それについては、まあまあ狙い通りにいったのではないかと思います。
吉和では割にスタンダードな話が出たのに対し、甲奴では次のような条件について触れたからです。

1 病害虫で特定樹種が大量枯死した現場ではどう考えるのか
2 道路などのインフラを守るための森林ではどう考えるのか

1については、地元の人のアカマツ林に対する執着に少しメスを入れたかったので、わざとそういう話になるように仕向けたところがあるのですが、2については私自身悩んでいたことで、ロルフさんから助言が欲しかったことです。スイスではどうしているかという説明を受けて、またまたスイスと日本との差に愕然としてしまいました。

だから、個人的には今回のWSで得られた知識で最も心に残っているのは2の事なんですが、まあ、順を追って書きますね。

吉和での内容は大雑把に言って、森林の見方と選木の基本、でした。
基本的な事とは言え、ロルフさんの説明はやはり秀逸ですね。

イメージ 1

吉和のWS会場となったもみのき森林公園内の林分については、私の現場ではないので詳しいことは分かりませんが、子供の林業体験に使ってきた現場だそうで、いわゆる県内森林ボランティア団体がよくやる里山林整備がされているような林分と言って良いかと思います。

今回、各種団体で実行委員会を構成して事業実施したのですが、S実行委員長の想いは、この森林ボランティアがやりがちな里山林整備にメスを入れる、というか、もうちょいレベルアップさせたい、ってところでした。何しろ、大体、庭掃除みたいな感覚でやってますからね。何のために作業をしているのか少しは考えてもらいたい、ってところ。

さて、話は森の観察から始まりました。

「あなたは誰?あなたはどこから来たの?あなたはどこへ行くの?」
つまり、
1 森林は今どういった状況なのか(現在)
2 過去はどうだったのか(過去)
3 このまま放置したらどうなるのか(未来)

現在、過去、未来、と書くと、「あの人に逢~ったな~ら~♪」 と渡辺真知子の「迷い道」を口ずさんでしまう年代の私ですが、ロルフさんのこの言い回しはちょっと照れくさくて真似するのには中々勇気が要ります。(ドイツ語ならそうでもないのかな?)
ここら辺の自分の心の持ちようを変えないと、一般の方に対する普及活動は難しい、というのは理解してはいるのですが。

まず「現在」について。
ロルフさんは、ここの標高と降水量および年間の変動具合はどうなのかと訊いてこられました。
おっと・・。いや、まあ、森林の事を判断するのに基本の基本情報なのはもちろんなのですが、標高はともかく降水量については、自分の現場の範囲内で差は殆どないと考えているため、具体的数値については意識したことがありません。

幸いもみのき森林公園を管理している方(実行委員の一人)は元県職員の方ですし、大体の数値を把握されていたので、無事回答。確か標高800m降水量1800mmとかでしたかね。
内心、帰ったら甲奴の降水量を調べておこうと思いつつそんな時間的余裕はございませんでした。と言うか、吉和よりは少ないだろうというくらいのことは分かりますが、後日ネットで検索して、県南部は1500mmくらいという数値は拾ったものの、この中途半端な位置にある甲奴町の降水量は?と訊かれても、「恐らく・・くらい」としか答えられないですね。

で、もっと答えられないのが、「ここの森林の成長量」。
それが把握できていないのが日本の現実ですよ、というのを知って頂きたく、ネットで検索したら出てきた覚えのある数値をわざと言ってみました
「広葉樹林は1.4㎥/ha・年くらいじゃなかったかな。」

(後で確かめたら針葉樹林1.2
㎥/ha・年、広葉樹林1.7㎥/ha・年ですね。
私は今森林簿情報を勝手には見ることが出来ない立場ですが、森林簿ではこの数値を使っていたりして・・)

いやあ、さすがにロルフさん、目を丸くされましたね。
それはそうでしょう。
とある学会資料にはスイスでは成長量≒年計画伐採量(2~14㎥/ha)とあるし、常識的には8せめて5くらいの感じかなと私は思っていました。
幸い、地元のY林業さんも参加されていて、吉和の杉人工林なら10くらいはある」と言われたので、ロルフさんも納得されていました。人工林の数値なので、現在における平均成長量の事ですね。

私も、さっき言った数値はネットで検索すると出てくる数値であって、広葉樹林の場合、誰も県内各地域の森林成長量をモニタリングしていないのだということは説明しました。

しかし、自分の現場を振り返って考えてみると、成長の遅い樹種も早い樹種も雑多に混ざっている中、ここら辺の森林成長量はこれくらい、とざっくり言ってしまうことができるのかな?と懐疑的に思っている面もあります。樹種構成によっては全く違うだろうし、樹種構成なんて無限にあります。
地形も複雑で谷からちょっと登ればすぐ尾根そして隣の谷。
しかも、年配の方が高く売れた材として認識している樹種は、成長の遅いネズミサシ(地方名もろぎ)だったりしますし。

伐採量を年間成長量以内に抑える、というのは基本的な事とは思いつつも、それは現実的な方法なのだろうか?とも思うわけです。

―つづく―