自閉症革命のレビュー|子どもたちと向き合うと自然と生まれる感情

こんにちは、ひろあ、です。
発達障害のお子さんの成績アップのサポートをしています。
 
 
今回は、マーサ・ハーバートさんの『自閉症革命』を紹介したいと思います。
まずは、書籍データから。
タイトル:自閉症革命
著者:マーサ・ハーバート、カレン・ワイントローブ
監訳:白木孝二
出版:星和書店
発行年:2019年6月15日
(2012年に出版されたものの日本語訳)

発達障害のお子さんだけではなく、
私は自分が見ているお子さんが私のいる塾や私という存在に出会うことで社会で活躍する何かヒントを得てくれたら嬉しいなと最近思うようになりました。

その1つが私の場合は、「進学」のサポートとなります。

私や発達障害の方々と真摯に向き合う方たちがどうして社会で活躍してほしいと思うのか?

『自閉症革命』のマーサさんも同じ思いでしたので、紹介させていただきます。

この本が書かれた当時にはなりますが、
自閉症の子どもを育てる経済的負担はアメリカ国内で毎年350億ドル(日本円で約3兆5千億円)から、
900億ドル(約9兆円)に達すると推定されるそうです。

これは自閉症の診断数が増えない前提の話ですので、増え続ければもっとこれは増えていきます。
そして、こう続きます。

「アメリカ経済が景気後退でぐらつき続け、予算削減が国家の最優先課題とされる時代において、すべての人に必要な援助を行き渡らせられないとしたら、私たちはいったいどうすればいいのでしょう。」(P33)と。
 
もしも、自閉症は生涯続き、外的な援助が意味をなさないと思い込んでしまうと、
当事者の方々の数限りないチャンスも夢も、見逃され失われてしまうかもしれない。
 
それだけではなく、自閉症という言葉の檻に入れてしまうことで、
当事者もそのまわりも傷つき、それは社会にも影響を及ぼすだろう。

こうマーサさんは指摘します。
でも、そうじゃなかったら?
自閉症という言葉から解放されていく人がいるとしたら?

それがもたらす社会への恩恵は大きいのではないか?
とマーサさんは言います。

これは、
藤川徳美先生
溝口徹先生
井原裕先生
 
などの医師の方々や、
 
また、
一貫して発達障害の本を出し続けている花風社さんの主張されていることとも一致すると思います。
(もちろん、個々の主張は細部で違いはありますが)

日本経済も縮小していく中で、いつまでも支援が手厚くなるとは限りません。

それに社会で活躍するというのはつらいこともありますが、楽しさも喜びもあります。
社会に貢献するという面だけではなく、社会に出て生きる面白さや喜びを感じる権利だって彼らにはあるんです。

国家とその経済のできる範囲でしかサポートはあり得ません。

その現実と向き合いながら、だったら、個人個人が自分の力を発揮できるものを目指していく。
それは相手に理解してもらうのではなく、その人その人が本来の自分の力を取り戻し、その力によって社会への扉を開いていくことだと私は読んでいて思いました。

そして、それは可能だということなんです。
いくつか論文や海外のレポートを載せます。
 
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19009353
https://iancommunity.org/ssc/recovery-numbers-how-often-do-children-lose-autism-diagnosis
https://www.sciencedaily.com/releases/2019/03/190312075923.htm
https://www.niph.go.jp/journal/data/59-4/201059040004.pdf
 
自閉症は本当に誰しもが一生続き、背負うしかないものなのか?
上記論文などを見ていただき、個人個人が考えてほしいと思います。

この「自閉症革命」のレビューが遅くなってしまったのは、海外の論文を読んでいたからです。

2008年のマーサさんたち医師による自閉症の診断ははずれる場合があるという研究。

この研究をもとにして、さらに海外では研究が深まっているように思います。

それなのに、いまだに日本では、
 
先天的
一生続く
治らない

の一点張り。

また、知的障害においてもDSM(日本など多くの国が発達障害を含む精神的な疾患の診断・判断基準としてベースとしなければならないもの)では「治らない」なんて書いてない。

DSM‐5の原著を取り寄せるのは費用がかかるので、
浅見淳子氏が書かれた『NEURO~神経発達障害という突破口』(花風社・2019年3月22日)のP62~63を読んでほしいです。
 

英語が苦手な日本人のために、分厚いDSMの中からわかりやすく知的障害についての項目を抜き出してくれています。

ざっくりといえば、【知的障害においても治る可能性は十分にある】ということが書かれています。

2019年の3月に出た『NEURO』を読んだときも、この『自閉症革命』を読んだときも、
日本の専門家の方々は本当に勉強していないんだなぁと思いました。

有資格者もそうですし、当事者として発信されている方々も、です。

もちろん、きちんと勉強され、発信されている方もいます。
ですが、まだまだ「治らない!」ととりあえず叫んでいる方々のほうが声が大きいですね。

それも仕方がない面はあります。

発達障害というもが診断基準を満たすグループである以上、
100%効果のあるたったひとつの方法というのはおそらく生まれないからです。

極端な話をすればその日、その一瞬だけ診断基準を満たしてしまう人もいるでしょうし、
親の「診断して」っていうプレッシャーから診断基準を満たしたとしてしまう医師もいるでしょう。
(このケースも海外のレポートで報告されています。)

とにかく、この『自閉症革命』に出てくる論文やそこから派生してほかの海外の論文を調べていくと、
日本で言われている発達障害の通説とはまったく違うことが出てきます。

でも、この本のすごいところはそんな論文を難しく説明しないところです。
 
個々のエピソードを紹介しながら、大事なところをすっと挿入してくれます。

170個の論文が引用されていますが、いちいちそれらを調べなくても、大事なところだけわかるようになっていますので、
本文に出てくるお子さんたちの個別のエピソードを読み進めていけば自然とマーサさんが読まれてきた論文についてもわかります。
 
読み進めていくほどに、これが2012年より前にわかっていたんだなぁって思うことが多々あると思います。
 
もっと早く教えてくれれば。
もっと早く知っている人がいれば。
 
そう思うところも多々あるかもしれません。
 
それでも、今、この本が日本語訳で出版され、私たちが読めることの意味って大きいと思うんです。
 
本当に発達障害の日本の医療分野っていうのは好き勝手されていたんだなと。
改めてわかると思うからです。
 
私たち医療を受ける側はもっともっと賢くなっていいし、
勉強しない人たちより賢くならないといけない。
 
この「自閉症革命」に出てくるお子さんのケースの多くは、発達することで自閉症の診断からはずれたわけではありません。

マーサさんの言葉を借りれば、本来の力が発揮できるようになってはずれたのです。

彼、彼女の体を通しては見えなかったけれど、その「力」は確実に内に存在していた。

そう主張されます。

私はこのエピソードを読んだとき震えました。

まさに、そう感じていたからです。

発達はもちろんするんですが、それだけじゃない。
本来あったものが出てくるというほうがより実際に感じるもの・ことに近い。
 
そして、だからこそ、知識のない専門家たちに怒りたくなるんです。
本来そこに「あった」はずの力を解放してあげていないケースが過去、そして、現在も多々あるんじゃないかと。
 
この著者であるマーサさんも、昔は、発達障害のあの常識を信じていたそうです。

でも、今は、それをとらえなおすことができるとしています。
 
私たちも今一度、発達障害とは何かを問い直すべきだと思います。
 
そのための1冊。
 
発達障害のことならなんでも知ってるよ!っていう人ほど、もう一度、初心にかえって読んでみてほしい本。
 
そう思います。
 
そして、ひとりでも多くの方が、本当はそこにある力に気づき、発揮され、社会で認めてほしい人に認められる。
 
そんな当たり前のことが、当たり前に求めて良い時代になってほしいと願います。
 
 
ではでは。
 
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