「一万人の第九」本番の第一部が無事終了し
30分の休憩が、入りました。
本来、休憩は室内(ロビー等)で過ごすのですが
喫煙者の為に、一部ホール入口付近の野外が
休憩中に限り、開放されていました・・。


束の間の休息・・

皆さん、おもいおもいに過ごしています・・

この日は、意外と寒い日でしたが、
一部の興奮を冷ますのに
丁度いい位の外気温でした・・

さて、次はイヨイヨ我々、第九合唱団の出番です!


二部の開演となり、再び会場が暗展しました。
スポットに当てられ佐渡さん、再登場し指揮台へ・・
PACの演奏準備も整っています。
例年なら、ここから第九の第一楽章演奏となりますが
今年は趣向を変え、ゲストによる第九の歌詞の原詩となった
「シラー」の<歓喜>の詩の朗読が入りました。
そのゲストとは、これまた佐渡さんイチオシの
女優「仲間由紀江」さんでした。

シラーの「詩」は歓喜を現わすコトバが
徐々に増えて行き、朗読も抑揚を押さえた
意外と難しいものですが、それを見事に
表現していました・・。
この「詩」の朗読によって、第九の
<歓喜の歌>の意味が聴く方、歌う方
双方に深く理解できて、より、この歌の
世界観に入って行けた感じがしました・・。

仲間さんの朗読が終わり、いよいよ
佐渡さんが第九第一楽章のタクトを
振り下ろしました・・。

第九は全部で第四楽章マデあり、
全楽章通すと1時間を超える大作です。
その中で、合唱部は第四楽章のラスト10分強。
我々、第九合唱団はそれまで「待ち」状態です。
例年、この「待ち」の間、居眠りをする方が
居るとの事ですが、確かに30分以上、
優雅なクラシックを聴いていると
睡魔が襲ってきます・・。
私も、昨日の寝不足気味が祟り睡魔が・・
特に手前の第三楽章は眠気を誘う
スローテンポな楽曲・・
まるで小守歌の様です。
それでも、第三楽章後半になれば
目に見えない緊張感が自然と
合唱団内に伝わり、各々が準備に
入りました・・。

そして遂に第四楽章へ・・
聴きなれたフレーズを
オケが奏でます。
第四は凡そ25分程の楽章で
合唱部は後半10分・・
オケが第九の主題演奏をすると
いよいよ出番・・
ティンパニーの力強い打音と共に
1万人の第九合唱団が
一斉に立ち上がります!

一万人のスタンディング・・
その迫力に観た方は大抵、感動します。
実は私もその一人でした・・。
いつか、あの中に入って歌いたいと
思っていましたが、イザ自分が、
そちら側に立って見ると、
観る側よりも凄く、それは
武者震い似た感動でした・・。
「よし!これから歌うぞ!!」と
気合十分の<一万人のスタンディング>
程なくして、ソリストのソロが入り
第九で初めて合唱団の「声」が
発せられる部分「Freude! 」
レッスンでも、この部分は第九の
合唱開始の「要」であり、
何回も練習した分部でした。
かくして・・
ソリストの「フロ~!」に引き続き
合唱団男性陣、魂心の「フロイデ!」が
ホールに響き渡りました。
小節が進み、第九合唱部の要所「M」部分・・。
誰もが聴き慣れた有名な部分ですが
ここが第九全楽章の中でも
「主題」である<歓喜>を
爆発させる重様な箇所です・・。
結果は・・大爆発でした。
リハ、ゲネも良かった「M」ですが
本番は<異次元>の迫力・・
それは、もはや3Dや最新音響技術でも
体感出来ない「感動の直撃」でした!!
第九は第一楽章から第四楽章まで
人生の<苦難><喜び>現したものですが
「M」は、その悩みに悩んだ挙げくに
最大の喜びを現す「歓喜」を示すもの・・


「M」歌詞
Freude, schoner Gotterfunken,
Tochter aus Elysium
Wir betreten feuertrunken.
Himmlische, dein Heiligtum!

Deine Zauber binden wieder,
Was die Mode streng geteilt;
Alle Menschen werden Bruder,
<対訳>
「歓喜よ、神々の麗しき霊感よ
天上の楽園の乙女よ
我々は火のように酔いしれて
崇高な汝(歓喜)の聖所に入る

汝が魔力は再び結び合わせる
時流が強く切り離したものを
すべての人々は兄弟となる」


普段、何気なく聴いているフレーズ・・
誰もが知っているフレーズ・・
もはや日本の師走には欠かせないフレーズ・・
でも、そこには色々な意味での人が感じる
「歓喜」の想いが込められていたのです・・。

アルト、バス、テノール、ソプラノ
それぞれが与えられたパートを
確実に且、優雅に歌い進めていく第九第四楽章・・
その中で「M」に続く聴き処である後半
<ドッペルフーガ>に突入・・。
もう何も考えず思いっきり歌いました。


<フーガー部歌詞>
Kusse gab sie uns und Reben,
Einen Freund, gepruft im Tod;
Wollust ward dem Wurm gegeben,
und der Cherub steht vor Gott.
「口づけと葡萄酒と死の試練を受けた友を
創造主は我々に与えた
快楽は虫けらのような弱い人間にも与えられ
智天使ケルビムは神の御前に立つ」


四声が折り重なる優雅で美しい旋律分部・・
終演後の観客談によると、多彩な美しい歌声が
空から降って来たそうです・・。

そして、オオラス・・
Seid umschlungen Millionen!
Diesen Kuß der ganzen Welt!
終盤フーガー部へ・・
ここは、最後まで全速力で駆け抜けて
行く場面・・歌っている方も感情MAX状態
それと同時に、第九の終演を感じる場面なので
一末の寂しさも感じる処です・・。
約3ヶ月前から残暑厳しい中
レッスンへ通った日々・・
慣れないドイツ語の暗譜に
四苦八苦した日々・・
聴き慣れたフレーズの歌詞に
意外な意味があり驚いた日々・・
そして今、こうして一万人の
Freude(兄弟)によって
歓喜に遭遇した日々・・
これらが、たったものの数秒の
最終小節間に走馬灯の様に
頭の中を駆け巡りました。
我に帰ると泣いていました・・
勿論、歓喜の涙です。
でも、最後まで歌い貫こうと
震える声を抑え、無我夢中で歌いました。

そして、最後の小節・・
Freude,schöner Götterfunken !
Götterfunken !

歌い切りました。
オケがEDを奏ます。
そして・・
佐渡さんがタクトが振り切った瞬間!
観客、出演者、問わず
「ブラボー!!」の声が上がり
大阪城ホールに賞賛の拍手が響き渡りました。

10分を越す、アンコール・・
そこに居る誰もが、今さっき感じ得た
「歌の奇跡」に酔いました・・。


「一万人の第九」の魅力・・
それは、より多くの方と
人生の1ページに於いて
歓喜を分かち合えた事だと思います・・。
明日からまた一人一人、別々の人生を
歩んで行きますが、第九で繋がった
「歌の奇跡」は永遠に心に残って行き
時にはそれが、生きる糧にもなるでしょう。



今回「一万人の第九」に参加して
本当に良かったと思います。
今では、すっかり第九に魅力に
ハマッてしまいました。
もし、第九を歌ってみたいと
思っている方がいたら是非、
参加してみる事をオススメします。
これだけは「体感」しないと
分からない事ですので・・。

最後に・・
ここで出会えた一期一会の
Freude(兄弟)に
心から感謝!