夜は短し歩けよ乙女(角川書店)
★★★☆:70~75点

Yoruwamijikashi1 久々に読了本の感想です。

不思議な不思議な物語でした。
最初は風変わりな小説だなあと思っていたのですが、あまりの不思議さ、奇想天外さに最後の方はちょっとハマッてしまいました。この作品はそれを受け入れる人と絶対拒否の人に分かれると思います。「こんなのありえない」と思ってしまったら恐らくもうダメで、私の場合は、小説なんだから何でもOK派で、キャラ設定なども含めて楽しく読みました。

作者は京大大学院修士課程卒ですか。なるほど。京大と京都の町を舞台にした物語はとても親近感がありました。また、表紙画も素晴らしいです。

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出版社/著者からの内容紹介
鬼才モリミが放つ、キュートでポップな片想いストーリー!
「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。二人を待ち受けるのは奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回だった!

内容(「BOOK」データベースより)
私はなるべく彼女の目にとまるよう心がけてきた。吉田神社で、出町柳駅で、百万遍交差点で、銀閣寺で、哲学の道で、「偶然の」出逢いは頻発した。我ながらあからさまに怪しいのである。そんなにあらゆる街角に、俺が立っているはずがない。「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど繰り返す私に、彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。「あ!先輩、奇遇ですねえ!」…「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」。二人を待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回だった。天然キャラ女子に萌える男子の純情!キュートで奇抜な恋愛小説in京都。

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最後まで名前が出てこなかった主人公の二人(「先輩」と黒髪の乙女の「後輩」)によって、ほぼ同じシーンが別々の視点で描写される、それ自体は特に珍しい手法ではないと思いますが、気持ちも行動も(すんでのところで)すれ違う面白さがありました。まるで、昔のコメディ映画を見ているような面白さでしょうか。「ああ、またすれ違い、すれ違い。二人の運命は果たしてどうなることでありましょうか・・・」

怪人・李白氏、自称「天狗」でふわふわと空を飛ぶ樋口氏、猛女・羽貫さん、学園祭の事務局長、パンツ総番長、「象の尻」の女性・紀子さん、錦鯉の東堂さんなど奇人・変人・怪人がぞろぞろ出てくるのですが、誰もが憎めない人物なのは微笑ましいですね。

黒髪の乙女が使う古風な言葉、3階建ての電車、錦鯉や林檎や達磨の雨・・・。読者が唖然とするような仕掛けの連続ですが、ほんわかしたユーモア感でくるまれていて心地よし。

最も印象的だったのは”古本市の神様”の少年と、その母である傘を差しながら織田作之助全種を読んでいる和服の女性でした。

  「父上はいつも僕をここに連れてきてくれた。そして本たちがつながって
   いることを教えた。僕はここにいると、本たちがみな平等で、自在に
   つながりあっているのを感じることができる。その本たちがつながり
   あって作り出す海こそが、一冊の大きな本だ。だから父上は死んだ後、
   自分の本をこの海へ返すつもりでいた」

  「あれは息子が主人と初めて古本市へ出かけた時に、一目惚れした絵本
   でしてね。息子にせがまれて幾度も読んできかせました。自分で読める
   年頃になっても、息子は私にせがんだものです」

そして、「ラ・タ・タ・タム-ちいさな機関車のふしぎな物語」。黒髪の乙女はかつて自分が持っていた本そのものと奇跡的な再会を果たす。それ自体が、ふしぎな物語でした。

  「気は済んだの?」と女性が優しく言い、少年は
  「うん」と頷いていました。
  私は「ラ・タ・タ・タム」が見つかったことを少年に教えてあげようと思って
  後を追ったのですが、彼らはまるで魔法のようにスルスルと人の間を
  すり抜けていき、ついにフッと夕闇に消えてしまいました。

本への愛が美しく描かれ、色々謎めいていることも含めて素晴らしいです。

奇想天外な物語ですが、ラスト、喫茶「進々堂」でのデートのシーンがステキでした。
うーむ、久々に乙女チックな味わいのある小説を読んだな。。。

◎参考ブログ:

   エビノートさんの”まったり読書日記”
     ----「黒髪の乙女」のつもりになって書かれたそうで、こちらも味わいあり。

   苗坊さんの”苗坊の読書日記”
     ----二人を見つめる眼差しがやさしいです。