あさのあつこさんが描く野球を題材にした短編集です。野球の素晴らしさ、野球を好きになることの(好きになったことの)素晴らしさ・・・。高校野球部を舞台・題材にしたものが殆どで、公立あり、私立あり。中には甲子園常連の強豪校ではないけれど、そこそこ強い学校も混じっています。しかし、都会の学校とは違って町を出る出ないが大きな問題となったり、それ故に才能がありながらも強豪校からの誘いを断って地元の県立校に進んだりといった悩みやジレンマなどもあります。
夏の匂い、草の匂い、ややさびれた(ひなびた?)町の匂い、夏の終わりのそして青春の1ページが終わる寂しさと最後の輝きがよく描かれていました。大人が主人公の話よりも、やはり高校生達が主役の話の方が面白かったです。ほのかな恋心も良し。地元の中学校から進学した子が殆どっていうのもいいですね。
全10編の中では、肩を壊した元エース(鴻山真郷)と友人で気弱な軟投派の現エース(麓水律)が主人公の「練習球」「練習球Ⅱ」が良かったです。山あいの公立高校野球部が快進撃を続け、ベスト4へ一番に名乗りをあげた。町民の声援を受け高まる期待。しかし、準決勝の相手は県内随一の強豪で劣勢に立たされ、もはや後がないところまで追い込まれたが・・・。2つの物語を最初と最後に配置した構成が絶妙。
親友・真郷の最後まであきらめない姿を見た律。温厚で普段は大きな声など出さない律だが、
律の大声に上市は一瞬、目を見開いた。すぐに「おう」と一声吼える。
「練習球Ⅱ」の終盤は素晴らしいです。
~単行本の帯より~
九回裏、二死ランナー無し、4点差。
追いつくのは奇跡だ。だけど、それがどうした。
おれはまだ打席に立てる。
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名作『バッテリー』の著者が贈る、野球を愛する者をめぐる10話の短編小説。
互いの抱えるトラウマや家庭環境を乗り越え高校野球に熱中するエースと友人。
「女の子はグラウンドに立てない」と一度は野球を棄てた少女の”再生“。
亡きわが子の姿を偶然甲子園に見た、老夫婦の感慨……。
グラウンドにこぼれている物語を丁寧にすくい上げた、限りなくいとしく、そして懐かしい味わい。野球小説の新たな傑作。
