「私は違うから」の続編です。
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一年後、結婚式の案内が届いた。
あの人が結婚するらしい。
そうか、そうなんだ。
私はモヤモヤした気持ちを胸に抱きながら、ベッドに寝っ転がる。
私たちはどこで道を間違えてしまったのだろう?
もし、あの時別れなかったら。
私が引き止めていたら。
ここに書かれている名前は私だったのだろうか。
そんなことを思ってももう無駄で、私は何もすることが出来なかった。
私はその案内状の裏を見ると、懐かしい連絡先が書かれていた。
私はすぐに携帯を探し、その番号に電話をかける。
すると、懐かしい声が携帯から聞こえてきた。
『…久しぶり』
「っ…久しぶり」
『届いたんだ、案内状』
「うん……結婚、おめでとう、」
『…ありがとう』
『ねぇ、今から会えないかな。』
「え…?」
『いつも散歩していた、あの場所で。』
私はその言葉を聞き、急いで服を着替えて家を飛び出した。
ドキドキした気持ちと、私が会っていいのだろうか?という気持ちを抱えながら、必死にその場所まで走る。
私が着いた頃にはもう彼女は着いていて、息を切らしている私を見てクスクスと笑った。
『もう、焦りすぎ』
「ごめんっ…はぁっ……」
『ふふ、まぁ、座ってよ』
「…うん」
『……久しぶりだね、』
「だね…」
「元気だった、?」
『…うん、元気だったよ』
「…なら良かった」
そこで会話は途切れて、川のせせらぎ音だけが耳に飛び込んでくる。
私は違和感を感じてふと下を見ると、以前は重なっていた手が重なっていないことに気づいた。
私はもう、この手を握ることは出来ない。
『…ねぇ、最後に抱きしめてよ』
そう、彼女が唐突に言ってきた。
「…いいの、?」
『…うん、抱きしめてほしい』
両手を控えめに広げてくる彼女の胸元に勢いよく飛び込むと、彼女は笑顔を零した。
数年前と、何も変わっていないこの笑顔。
『ほんと、久しぶりだなぁ、この感じ。』
「うん…」
このまま彼女を連れ去りたい。
でも、そんなことは出来ないんだ。
責任を感じるとかそういうのじゃなくて、ただ私の勇気がないだけ。
ずっとこうしていたかったけど、私は彼女から手を離して、少し微笑んだ。
「…結婚、おめでとう」
「由依。」